ハノイ市オーチョズア街区(旧バーディン区タインコン街区)のマイアイントゥアン(Mai Anh Tuan)通り254番地に、「幸せの店(Cua tiem hanh phuc=The Happiness Shop)」がある。これは、自閉症の人々のための経済モデルの愛称であり、彼らが労働者として認められ、給与と賞与を得ることができる場所でもある。
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12時30分、トランシーバーから来客の知らせが入ると、店はたちまち活気を帯びる。昼休憩中だった従業員が皆、接客に向けて動き出し、ドゥックさん(19歳)は1分もかからずにシフトを調整する。ドゥックさんは、従業員全員の得意なことや言語能力を把握しており、制約のある従業員とペアにしてシフトを組む。
「料理長」のフンさんはオーダーを取る係のチャムさんとペアになり、ミンさんはラムさんとペアになってドリンクのオーダーを手伝ってもらう。残りの人たちは紙ナプキンとチリソースをテーブルに並べていく。
ドゥックさん、フンさん、ラムさん、チャムさんはいずれも自閉症の当事者で、起業家のグエン・ドゥック・チュンさん(男性・40歳)が創設した「幸せの店」で働いている。
チュンさんには自閉症の親族はおらず、特別支援教育に携わった経験もなかった。しかし、12年前の運命的な出来事が彼の人生を変えた。
その日、あるリゾートで突然、1人の子供がチュンさんのもとに駆け寄り、彼の頭を強く叩いた。激痛とめまいで反応できずにいると、その子供の母親が「うちの子は自閉症なんです」と必死に謝る声が聞こえた。
その時、チュンさんは初めて「自閉症」という言葉を耳にした。「どうしてあんな行動をしたんだろう?彼らの世界観はどうなっているんだろう?どうして彼らについて語られることが少ないんだろう?」と、多くの疑問に突き動かされた。
それからチュンさんは、自閉症の人々の特別支援教育や医療、ライフスキルについて研究し、最終的に「持続可能な唯一の道は、お金を稼ぐモデルを構築することしかない」という結論に至った。
「自閉症は一生付き合っていくもので、完治することはありません。でも、適切な環境を整えれば、自閉症の人々も自立した生活を送り、働いて社会に貢献することができます」とチュンさんは語る。
チュンさんは雑貨店やカフェ、本屋、ホームステイ施設を展開し、自閉症の人々のための環境づくりを始めた。数日でテーブルの拭き方を覚える人もいれば、ほうきの持ち方やコンロの火の付け方に慣れるまでに数か月かかる人もいる。腕に輪ゴムをはめたり、クラシック音楽を聴いたりしなければ集中できない人もいる。