「彼は私に悪態をつきましたが、私は黙っていました。彼が失禁したり、物を投げつけたりしても、私はただ優しく『私は君に何もしていないのに、君は私を傷付けるの?』と問いかけました」とチュンさんは話す。
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傷付けられても報復しないというチュンさんの一貫した対応は、反復的かつ論理的に働く自閉症の人の脳に、徐々に浸透していった。そして、2年間の沈黙と忍耐を経て、クアン・アインさんは変わった。22歳になったクアン・アインさんは、落ち着きがあり、司会も務め、同僚を代表して発言することもできるようになった。
この10年近くの間に、「幸せの店」のモデルは、自閉症の人々が生き方や働き方、社会への適応を学ぶためのオープンスペースとなり、1万人以上の客が訪れた。これまでに23人の自閉症の人々がここで働き、現在は18歳から31歳までの10人が在籍している。
「幸せの店」では、賃金は日割りで支払われる。ある日の収支表には、7人の客が来店したことが記録されており、売上から経費を差し引いた後、従業員1人につき2万VND(約112円)とチップ2万VND(約112円)が支払われた。給与のほかにも、保護者による支援金を含めて様々な収入源がある。
「自閉症の従業員の強みは、生産性やスキルではなく、その純粋さや、見せかけではなく真に楽しく働いているということにあります」とチュンさんは語る。
「幸せの店」の従業員は皆、それぞれが運命を乗り越えてきた自分の物語と、独自の能力を持っている。ズンさんは数秘術が得意だ。ラムさんは流暢な英語を話し、現在はオープン大学で法律を学んでいる。不器用だったフンさんは、ここに来て2年が経った今では「料理長」となり、言葉を話すこともできるようになった。
また、入社して7年が経つドゥックさんは、ここでは自分のことを理解してもらえていると感じられ、いつも笑顔が絶えない最高の自分を見つけることができた。ドゥックさんは現在、短期大学でITを学んでおり、間もなく卒業する。
ドゥックさんの母親(54歳)によれば、ドゥックさんは以前と比べて別人のように変わったという。母親は「私のような自閉症の子供を持つ親にとって、こういう子供の姿を見ること以上に幸せなことはありません」と語る。
チュンさんは、この経済モデルが広く普及することを願っている。チュンさんは「私たちの進んでいる道は小さいかもしれませんが、より多くの協力と仲間が集まれば、自閉症の人たちのために、もっと広くて大きな道を切り開くことができるでしょう」と語った。