自閉症の人々が働く「幸せの店」

2025/07/27 10:26 JST配信

 「彼は私に悪態をつきましたが、私は黙っていました。彼が失禁したり、物を投げつけたりしても、私はただ優しく『私は君に何もしていないのに、君は私を傷付けるの?』と問いかけました」とチュンさんは話す。

(C) VnExpress
(C) VnExpress
(C) VnExpress
(C) VnExpress

 傷付けられても報復しないというチュンさんの一貫した対応は、反復的かつ論理的に働く自閉症の人の脳に、徐々に浸透していった。そして、2年間の沈黙と忍耐を経て、クアン・アインさんは変わった。22歳になったクアン・アインさんは、落ち着きがあり、司会も務め、同僚を代表して発言することもできるようになった。

 この10年近くの間に、「幸せの店」のモデルは、自閉症の人々が生き方や働き方、社会への適応を学ぶためのオープンスペースとなり、1万人以上の客が訪れた。これまでに23人の自閉症の人々がここで働き、現在は18歳から31歳までの10人が在籍している。

 「幸せの店」では、賃金は日割りで支払われる。ある日の収支表には、7人の客が来店したことが記録されており、売上から経費を差し引いた後、従業員1人につき2万VND(約112円)とチップ2万VND(約112円)が支払われた。給与のほかにも、保護者による支援金を含めて様々な収入源がある。

 「自閉症の従業員の強みは、生産性やスキルではなく、その純粋さや、見せかけではなく真に楽しく働いているということにあります」とチュンさんは語る。

 「幸せの店」の従業員は皆、それぞれが運命を乗り越えてきた自分の物語と、独自の能力を持っている。ズンさんは数秘術が得意だ。ラムさんは流暢な英語を話し、現在はオープン大学で法律を学んでいる。不器用だったフンさんは、ここに来て2年が経った今では「料理長」となり、言葉を話すこともできるようになった。

 また、入社して7年が経つドゥックさんは、ここでは自分のことを理解してもらえていると感じられ、いつも笑顔が絶えない最高の自分を見つけることができた。ドゥックさんは現在、短期大学でITを学んでおり、間もなく卒業する。

 ドゥックさんの母親(54歳)によれば、ドゥックさんは以前と比べて別人のように変わったという。母親は「私のような自閉症の子供を持つ親にとって、こういう子供の姿を見ること以上に幸せなことはありません」と語る。

 チュンさんは、この経済モデルが広く普及することを願っている。チュンさんは「私たちの進んでいる道は小さいかもしれませんが、より多くの協力と仲間が集まれば、自閉症の人たちのために、もっと広くて大きな道を切り開くことができるでしょう」と語った。

前へ   1   2   3   次へ
[VnExpress 06:00 03/06/2025, A]
※VIETJOは上記の各ソースを参考に記事を編集・制作しています。
© Viet-jo.com 2002-2025 All Rights Reserved 免責事項

この記事の関連ニュース

 自閉症の息子に14年間にわたり寄り添い続けてきたブイ・ティ・ロアンさん(女性・41歳)にとって、息子の...
 毎週土曜日の午後4時、ホーチミン市体育スポーツトレーニングセンターでは、決してリズムの揃うことの...
 生まれた時から両脚がなかったファム・ティ・トゥー・トゥイさん(女性・1997年生まれ)は、生後間もなく...
 2021年12月、「障がい者が学校に通う権利」というテーマで開催された絵画コンテストで最優秀賞を受賞し...

新着ニュース一覧

 ホーチミン市都市鉄道(メトロ)1号線(ベンタイン~スオイティエン間)を運行する同市メトロ1号線有限会社...
 ベトナム全国の映画館の興行収入データを分析するボックスオフィス・ベトナム(Box Office Vietnam)によ...
 ホーチミン市タンフン街区(旧7区)のショッピングセンター「SCビボシティ(SC VivoCity)」で12日、国内初...
慣れない海外生活、急病や事故
何かあってからでは遅い!
今すぐ保険加入【保険比較サイト】
 キム・ティエンさんの「黄金の声」は、ベトナム国営テレビ局(VTV)の19時のニュース番組と共に長年親し...
 ホーチミン市のサイゴン動植物園は毎週末に催行していたナイトツアーについて、今後は毎晩開催すること...
 ホーチミン市ビンチュン街区(旧トゥードゥック市)で13日、国内初となる電動バイクパトロール隊の発足式...
 ベトナムドイツ企業協会(GBA)が主催する「GBAオクトーバーフェスト・ベトナム(GBA Oktoberfest Vietnam...
 保健省は、2025年から2030年にかけて、十分な支払い能力を持つ外国人とベトナム人向けの医療サービスを...
 ベトナムでは2025年に入って以降、ココナッツ輸出の急拡大を受けて、国内産ココナッツが供給不足となっ...
 株式会社Cyberzeal(東京都新宿区)とmiracleave株式会社(東京都中央区)は、ベトナム軍隊工業通信グルー...
 ホーチミン市建設局はこのほど、各村・街区・特区の人民委員会と関連機関に対し、2025年10月30日までに...
 起訴・拘留中の人物を保釈させるため、権限を持つ者への働きかけを目的として賄賂を渡そうとした事件で...
 ベトナム郵便通信グループ(Vietnam Posts and Telecommunications Group=VNPT)は、5Gネットワークの高...
 大手コーヒーチェーン「ハイランズ・コーヒー(Highlands Coffee)」を展開するベトタイ・インターナショ...
 行政手続き改革顧問評議会傘下の民間経済開発研究委員会(IV委員会)は11日、「ベトナム民間経済パノラマ...
トップページに戻る