数万VND(1万VND=約56円)を送金してくれる人もいれば、11~12歳の子どもが励ましのメッセージを送ってくれることもあり、年配の人からも寄付があった。
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「個人的な金儲けのためにやっているのではないか」という噂も立ったが、彼女は黙って何も言わず、旅を続けた。2人が台風も峠も乗り越え、質素で誠実に暮らしている様子を見て、人々は次第に疑いの声を収めていった。
2人が集めた寄付金は9月3日までに1億0455万VND(約58万4000円)に達した。「私たちはお金を『もらう』つもりはありません。親切にしてくれた方にも、普通の金額を請求してもらって、自分たちで払います。でも、誰かが『感謝の気持ちを表したい』と言ってくれるなら、受け取ります。でもそれは、私たちのためではなく、この国のために命を捧げた人たちのためです」とトゥイさん。
2人が得た最も大きなものは、集まった寄付金でも、SNSでのシェア数でもない。それは、「感謝の気持ちに満ちた心」だ。その心は、自転車のペダルを漕ぐごとに、峠を吹く風を感じるごとに、烈士墓地で線香を手向けるごとに、育まれていった。
トゥイさんはこう締めくくる。「今の平和な世の中に暮らす多くの人たちは、『感謝の気持ちに満ちた心』の価値を忘れてしまっています。私たちは、それを皆さんに思い出してほしくて旅をしたんです。理屈ではなく、行動で、心で伝えるために」。
9月2日に建国80周年の軍事パレードを無事に見ることができた2人は、翌9月3日に銀行に立ち寄り、集めた寄付金の全額を「恩返し基金」に振り込んだ。そして、振り込み手続きを終えた2人は列車でホーチミン市に戻り、そこからカントー市の自宅へと帰って行った。