「小さな青年」の大きな夢

2008/03/02 08:26 JST配信

 北中部ゲアン省出身のグエン・ビエット・タンは22歳だが、今も身長は102センチ、体重20キロしかない。現在コンピューター技師であるこの「小さな青年」には大きな夢がある。

 タンは母親がまだ妊娠7カ月の時に生まれてきた。5歳までは順調に育ち、翌年には他の友達と同じように小学校に入った。しかし、そのころからほかの子はどんどん成長していくのに、彼は身長も体重も成長が止まってしまった。両親はあちこちの病院へ彼を連れて行ったが、診断結果はいつも「異常なし」だった。実際タンは、病気らしい病気をしたことがなかった。

 思春期になっても彼の身体は子どものまま。学校ではいつもからかわれたり、笑われたりしていた。いじめられて学校に行かなくなったこともあったが、両親がなんとか説得したという。高校に進学したときも身長102センチ、体重18キロしかなかった。だが見かけは子どものようでも勉強はとてもよくできたので、みんなに一目置かれるようになっていった。

 10学年になったある日、タンは同じ村に住むグエン・コン・フンという青年を訪ねた。彼は身体に重い障害を持ちながらもコンピューターについて詳しく、身体障害児童のためのコンピューター訓練センターを開いていた。タンはそれから3年間、放課後にフンのセンターに通ってかなりの知識を身につけた。

 高校を卒業したタンは、家庭が貧しかったため大学へ行く夢はあきらめなければならなかったが、引き続きフンの所で学び続けた。2年後には、ウエブサイトの作成からコンピューターの保守作業までできるようになった。そしてそれまでの生徒という立場から、今度は教える側になった。

 フンはさまざま賞を受賞し、授賞式出席のためハノイに出向くたびにタンを助手として連れて行った。賞金や製品の売れたお金が入ると、フンはタンが外国語や情報科学を学べるよう援助した。2007年5月、フンがハノイのソフトウエア会社に仕事で出かけたとき、同社の副社長は助手のタンに目を留め入社するよう誘った。こうしてタンはその会社のコンピューター技師として働くことになった。

 タンはハノイに住んで1年になる。通勤でバスを利用するが、最初は車掌が切符を売ってくれず、「一人でどこにいくの?」「お母さんはどこ?」などと聞かれたという。ある時は親切な学生が迷子と勘違いして「坊やの家はどこ?」と話しかけてきたこともあった。彼が「僕は8歳だけど一人でバスに乗れます。心配しないで」と答えると、相手は「小さいのにえらいねえ」と驚きの声をあげた。そんな時、タンは愉快な気持ちになるという。

 タンは仕事以外の時間にも、身体に障害があって学校に行けない子どもの家に通ってボランティアでコンピューターを教えている。この子は14歳、フンのセンターで勉強したかったがゲアン省にあるためあきらめていた。それを知ったタンが、この役を引き受けたというわけだ。

 「僕の夢は、フンさんと一緒にハノイにセンターを開くことなんだ。障害を持つ子どもや恵まれない子どもたちのためにね。コンピューターを学ぶのは簡単ではないし、すべての子どもに合うものでもないけれど、それでも僕はこれを実現させたい。できるだけたくさんの恵まれない子どもを助けるために自分も健康でいられたら、それが一番幸せだよね」

[Thanh Nien online, 14:12:25, 21/01/2008]
※VIETJOは上記の各ソースを参考に記事を編集・制作しています。
© Viet-jo.com 2002-2025 All Rights Reserved 免責事項

この記事の関連ニュース

 ホーチミン市ホックモン郡に住むディン・ティ・リーさん(女性・26歳)は、身長93cm、体重は30kgにも満た...

新着ニュース一覧

 ファム・ミン・チン首相は、南中部地方カインホア省バンフォン経済区における「トゥーボン都市区」と「...
 ホーチミン市は7月1日から8月15日まで、同市都市鉄道(メトロ)1号線(ベンタイン~スオイティエン間)の運...
 内務省傘下の海外労働管理局(DOLAB)の発表によると、2025年1~6月期にベトナムから海外に派遣された労...
慣れない海外生活、急病や事故
何かあってからでは遅い!
今すぐ保険加入【保険比較サイト】
 ベトナムを代表する考古学者・人類学者で、音楽家としても知られるグエン・ラン・クオン(Nguyen Lan Cu...
 タイ系畜産大手CPベトナム(CP Viet Nam)が病気の豚や鶏の肉を販売していたとソーシャル・ネットワーキ...
 コーヒーチェーンを展開する韓国のザ・ベンティ(theVenti)はこのほど、ホーチミン市ビンタイン区のグエ...
 サイゴン公共交通機関社(Saigon Public Transport)は、新たな規定の施行や交通インフラの未整備を理由...
 格安航空会社(LCC)最大手ベトジェットエア[VJC](Vietjet Air)は、7月7日(
 ベトナムのメディアコンテンツ制作会社で「新婚さんいらっしゃい!」や「あいのり」など日本の人気番組...
 寿司レストラン「魚べい」や「元気寿司」などをチェーン展開する株式会社Genki Global Dining Concepts...
 科学技術省は6月30日、ハノイ市でベトナム科学技術取引所のお披露目式典を開いた。同取引所は2段階で構...
 在ベトナムヨーロッパ商工会議所(ユーロチャム)がベトナムに進出している欧州企業を対象に実施した2025...
 7月1日から、国内の全ての現金自動預け払い機(ATM)などで、磁気カードが使用できなくなった。銀行カー...
 デイサービスや在宅介護サービス、居住系介護サービスを手掛ける株式会社ツクイ(神奈川県横浜市)の子会...
 国家構造改革の一環として、7月1日から新たな行政区分「特区(dac khu)」が設けられ、全国で13の特区が...
トップページに戻る