「ベトちゃんドクちゃん」分離手術の知られざる裏側【後編】

2016/02/21 05:32 JST配信

 ドン・アー医師は、2人をつないでいる肛門と生殖器をベトさん側に約2.5cm多く残して全て分離した。その後、レ・キン医師、ボー・バン・タイン医師、ブー・タム・ティン医師らが骨を削った。

 骨はとても硬く、ほんの少しでも削り方を間違えれば、ドクさんが今後「大人になる可能性」がなくなってしまう恐れがあった。そのためドン・アー医師は、分離後の各器官の構造を守るため、削るべき正しい位置を自らの指先で指し示した。削る位置を誤れば、ドン・アー医師の指も削られてしまうような状態だった。

 2人が共有している肛門について、大腸は完全にベトさんの血管系統によって動いていた。ドクさんは、大腸の入り口の部分と肛門に接した直腸の出口の部分をベトさんと共有しているだけだった。ドクさんに肛門を分けるとすれば、ドクさんとベトさんの2人の血管によって動いている大腸の入り口と直腸の出口を残すしかない。

 この2つの部分は離れた位置にあり、両方をつなぐには、今後ドクさんが自分で用を足せるようになることを保証する必要があった。手術チーム長は、ドクさんの腸を十二指腸から回転させ、胎児の時のような原始的な形にする案を打ち出した。大腸の入り口の部分は、右骨盤腔の代わりに左骨盤腔へ配置した。

 これは、肛門を閉じる目的の他に、腹膜がないドクさんに腹部の下境界を作るという役割も果たしていた。そうしなければ、ドクさんの腸は腹部とくっつき、腸閉塞を起こす恐れがあった。その後、この計画は完全に正しかったことが証明され、フランスの新聞では「優秀な正確さ」と報じられた。

 緊張状態の中、手術は15時間に及び、ドクさんの腹部を縫合し終えた時にはすでに真夜中になっていた。多くの医師たちは長時間に及ぶ手術で疲れ切っていたにもかかわらず、経過を見守るため手術室に留まっていた。

次ページ → 手術の成功と2人の人生

前へ   1   2   3   次へ
[Le Phuong, VNExpress, 21/1/2016 | 12:03 GMT+7, A]
※VIETJOは上記の各ソースを参考に記事を編集・制作しています。
© Viet-jo.com 2002-2025 All Rights Reserved 免責事項

この記事の関連ニュース

 結合双生児として生まれた「ベトちゃんドクちゃん」の分離手術チームの一員として手術に携わったチャン...
 ベトナム戦争時に米軍が散布した枯葉剤の影響で結合双生児として生まれた「ベトちゃんドクちゃん」の「...
 ベトナム戦争時に米軍が散布した枯葉剤の影響で結合双生児として生まれた「ベトちゃんドクちゃん」の「...
 ベトナム戦争時に米軍が散布した枯葉剤の影響で結合双生児として生まれた「ベトちゃんドクちゃん」の「...
 ベトナム戦争時に米軍が散布した枯葉剤の影響で結合双生児として生まれた「ベトちゃんドクちゃん」の「...
 ベトナム戦争時に米軍が散布した枯葉剤の影響で結合双生児として生まれた「ベトちゃんドクちゃん」の「...
 ホーチミン市のビンザン病院は4日、結合双生児として生まれた「ベトちゃんドクちゃん」の分離手術チー...
(※本記事はVIETJOベトナムニュースの取材によるものです。)  ベトナム戦争時に米軍が散布した枯葉剤...

新着ニュース一覧

 ホーチミン市トイアン街区(旧12区)にオープンしたブドウ園カフェがソーシャル・ネットワーキング・サー...
 ハノイ市の市民劇場(オペラハウス)はこのほど、劇場落成115周年を記念した特別プログラム「光とテクノ...
 国会は13日、2026年の経済社会発展計画に関する決議を採択した。決議では、15の主要目標と、11の重要任...
慣れない海外生活、急病や事故
何かあってからでは遅い!
今すぐ保険加入【保険比較サイト】
 ホーチミン市の伝統的な市場は、少しずつ過去のものになりつつある。市場では、年を取った商人たちが屋...
 ホーチミン市では現在、長引く雨の影響により野菜の供給量が大幅に減少し、価格が急上昇している。この...
 地場系コングロマリット(複合企業)ビングループ[VIC](Vingroup)傘下のビ
 米モトローラ(Motorola)が、ベトナムのスマートフォン市場に復帰した。同社は5機種の新型スマートフォ...
 オナスチェーン・ブロックチェーン・テクノロジー(OnusChain)は11日、南中部地方ダナン市で国産ブロッ...
 韓国電力公社(KEPCO)の子会社で、発電所の設計や建設などを手掛ける韓国電力技術(KEPCO Engineering & ...
 地場大手コーヒーメーカーのチュングエングループ(Trung Nguyen Group)傘下のチュングエン・レジェンド...
 ハノイ市人民裁判所は12日、2024年6月にハノイ市のホテル「プルマン・ハノイ(Pullman Hanoi)」内のクラ...
 ルオン・クオン国家主席は12日、ベトナムを公式訪問したヨルダンのアブドッラー2世国王陛下と会談した...
 保健省医薬品管理局はこのほど、ロシア製抗がん剤「ペンブロリア(Pembroria)」に対して、ベトナムでの...
 西北部地方ラオカイ省人民委員会主席を務めていたチャン・フイ・トゥアン氏は12日午前、書記局の決定に...
 ベトナムIT最大手FPT情報通信[FPT](FPT Corporation)グループの日本法人FP
トップページに戻る