8月のある日の午後、ファン・ティ・トゥエットさん(女性・59歳)は、北中部地方ゲアン省タインビン街区(phường Thành Vinh、旧ビン市)からゲアン傷病兵療養センターにバイクで向かい、夫で退役軍人のグエン・ホアイ・ミンさん(男性・67歳)を訪ねた。
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妻の姿を見るやいなや、ミンさんは妻に駆け寄り、「元気かい?息子はどこにいる?」と尋ねた。夫婦は再会しても多くの言葉を交わさない。ミンさんはただ妻の手を握り、優しく微笑みながら妻を見つめている。
1980年にカンボジア戦線で地下壕を直撃した砲弾により、ミンさんは脳損傷を負い、統合失調症を発症した。結婚して以来、ミンさんの生活は妻と息子を中心に回っている。26年間にわたる結婚生活の中で、ミンさんはいつも親しみを込め、妻を「エム(em=君)」、自分を「アイン(anh=僕)」と呼んできた。ベトナム語では、夫婦や恋人同士で使われる親しい呼び方だ。
夫が自分はいつ家に帰れるのかと尋ねると、トゥエットさんは夫の手を優しく握りしめ、「家が完成したら、息子と一緒に迎えに来ますからね」と答えた。
1999年、現在のゲアン省フングエン村(xã Hưng Nguyên、旧フングエン郡フンタイ村)で幼稚園教諭をしていたトゥエットさんは、省内の病院で父親を看病していた。
その時、たまたま同じ病室に入院していたシンさん(女性)と知り合った。トゥエットさんは、付き添いのいないシンさんによく手を貸した。会話を交わすうちに、シンさんにはホアイ・ミンという名前の息子がおり、彼はゲアン精神神経傷病兵療養所(2025年8月にゲアン傷病兵療養センターに統合)で治療を受けている傷病兵だということを知った。
「あなたみたいなお嫁さんがいたらいいのにね」というシンさんの何気ない一言が、トゥエットさんの心に深く刻まれた。シンさんの家の近所に住むトゥエットさんの親友はミンさんについて、入隊する前はとても優しい人だったと教えてくれた。戦争による精神的なトラウマから、ミンさんは記憶を失い、精神が不安定になったのだった。
ミンさんのことが気になり、トゥエットさんは自転車を15km以上走らせて療養所を訪ねた。トゥエットさんは鉄格子の窓越しに、中庭の隅に寂しそうに座っている40歳過ぎの男性を目にした。担当者が彼を呼びに行くのを待たずに、トゥエットさんは突然その場を去って帰宅した。
翌週末、トゥエットさんは再び療養所を訪れた。今度こそミンさんと向かい合って座ると、「狂人」のようには見えず、何を聞いても素直に答えてくれる穏やかな人柄に強い印象を受けた。何度か会ううちに、トゥエットさんの中に好意が芽生えていった。







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