ベトナムでも人気の漫画「ONE PIECE」の主人公ルフィに扮してホットドッグを販売するウクライナ人男性がSNSで話題だ。
(C) thanhnien |
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サーシャさん(36歳)がホーチミン市3区ホアンサ(Hoang Sa)通りで営む小さな屋台には、多くの人が並ぶ。1年あまり前に妻子とベトナム移住し、はじめはニャチャン市(南中部沿岸地方カインホア省)で生活していたが、新型コロナ禍と、英語の不得意もあり、夫婦は安定した仕事を見つけられなかった。そこで彼は妻子をニャチャン市に置いて、ひとりホーチミン市に出てきた。
はじめはビンタイン区バーチエウ(Ba Chieu)市場で菓子パンを売っていた。あるパン屋が、売れた分だけコミッションを渡すかたちで、売り子をさせてくれたのだ。彼は毎日、首から箱を提げて市場を売り歩いた。そんな時に、現在の「親分」となるコアさん(39歳)に出会った。
「1日に10時間も日差しのなかを売り歩いているんだから気の毒で。私もむかし外国に留学していたので、海外で暮らす人の気持ちはよくわかるんです。だから話しかけてみたんですが、彼はあまり英語が上手くないので、グーグルで話しました。故郷では料理人をしていたみたいですが、ベトナムではうまく仕事が見つからず、ふらふらと生活していたようです」とコアさんは言う。
サーシャさんの苦しい状況を知り、さらに彼の子が病気を抱えていると聞きコアさんは、ホットドッグ屋台を開く約4000万VND(約22万7000円)の費用をすべて出すことにした。コアさんは、食材やパンを作ってくれる店探しなども買って出た。
しかし驚いたのは、2人が出会ってまだわずか2か月あまりということだ。「プライベートなことなので、奥さんや子供について尋ねたことは特にありません。お子さんがひどい蓄膿症ということくらいしか知りません」。大変そうだったから助けたまで、とコアさんは言う。
バーチエウ市場で販売している時にも馴染み客は多くでき、たくさんの人が同情してくれた。おそらくは彼がまじめで人当たりが良いためだろう、オープンからまだ十数日のホットドッグ屋には大勢の人が立ち寄り、午前と午後、それぞれ100個あまりを売り上げる。値段もひとつ1万8000VND(約100円)と庶民的だ。
5月5日に立ち寄ったカインさん(22歳)は、「好きなキャラに扮した人が売っていると聞きやってきました。ちょうど今日はルフィの誕生日。ソースが手作りと聞いたので、余計に食べてみたくなったんです」と言い、こんなに混雑しているとは思ってもみなかったと話してくれた。
人々の熱心な応援にサーシャさんは、「ベトナム人の温かさに心を打たれました。皆さんに心からありがとうと言いたい」と話した。