阮朝皇帝の子孫は今―サイゴンで貧困に暮らすタインタイ帝の孫

2016/03/27 06:00 JST配信

 どれだけ働いても生活は貧しかったが、ビン・ジエウ皇子は皇族らしく品の良い生活スタイルを維持していた。全ては過去の話に過ぎないのだが、それでも皇子としての風格を保っていた。「流刑地では西洋の作法で食事をしていたので、父はカントー市に戻ってもナイフとフォークを使っていました。父はミルクに浸したフランスパンとフライドポテトが好物で、短パンと運動靴を身に着けていました」。

(C) vnexpress, Duy Tran, タイさん
(C) vnexpress, Duy Tran, タイさん
(C) vnexpress, タイさんと妻、娘
(C) vnexpress, タイさんと妻、娘
(C) vnexpress, ビン・ジウ皇子(左)と故キエット元首相(右)
(C) vnexpress, ビン・ジウ皇子(左)と故キエット元首相(右)
(C) vnexpress, Dac Duc
(C) vnexpress, Dac Duc

 2005年、故ボー・バン・キエット(Vo Van Kiet)元首相はタインタイ帝の孫がカントー市に住んでいると知り、同市を訪問した。「故キエット元首相は、もとは皇族だった私たち家族の現在の苦しい生活を見て、何か助けることができないかと聞いてくれました。私の父は、『見ての通り、泥棒も恐れ入って入ろうしないくらい家の中には何もありません』と答えていました」。

 故キエット元首相はその後も何度もタイさん一家を訪問し、市に対してビン・ジウ皇子に家を寄贈することを提案した。故キエット元首相はまた、他の皇子たちの仕事も支援した。タイさんには、バイクタクシーの仕事をするためのバイクが贈られた。

 「カントー市に50年間住んでいましたが、近所の人たちは誰も私たちがかつての皇帝の子孫だということを知らなかったので、故キエット元首相が訪れた時、皆大変驚いていました。多くの人は、皇帝の子孫にもかかわらずなぜこんなに苦しい生活をしているのだと舌打ちしながら言っていました」。タイさんは、遠くを見つめながら回想した。

 故キエット元首相の訪問から2年後の2007年、ビン・ジウ皇子は逝去し、遺骨は北中部地方トゥアティエン・フエ省フエ市のズックドゥック(Duc Duc)廟(アンラン=An Lang=安陵)に埋葬された。グエン・フオック家のタインタイ王朝の系譜には、ビン・ジウ皇子はタインタイ帝とチー・ラック(Chi Lac)妃の子であることが明記されている。

 タイさんは、バイクタクシーの仕事は収入が少なかったため、2004年に40歳を迎えてからようやく結婚することができたと教えてくれた。2年後に女の子が生まれ、グエン・フオック・タイン・トゥエン(Nguyen Phuoc Thanh Tuyen)と名付けた。

 「これは皇族の名前ですが、彼女の運命は祖父や父のように苦しいものになるでしょう。トゥエンは脳性まひを患っていて、寝たきりで話すこともできず、1人で飲んだり食べたりすることもできません。私たち夫婦は治療のためにあちこちへ彼女を連れて行きましたが、無力でした。それにお金もありませんでした」。

次ページ → ホーチミンでの暮らしと10年ぶりのフエへの墓参り

前へ   1   2   3   次へ
[Duy Tran, VNExpress, 6/3/2016 | 00:00 GMT+7, A]
※VIETJOは上記の各ソースを参考に記事を編集・制作しています。
© Viet-jo.com 2002-2025 All Rights Reserved 免責事項

この記事の関連ニュース

 北中部地方トゥアティエン・フエ省フエ市アンクウ街区ズイタン通りに、アンラン(An Lang=安陵)と呼ば...
 1802年から1945年にかけて存在したベトナムの最後の王朝である阮(グエン)朝の子孫を代表するグエンフッ...
 米国の競売会社GWSオークションズの発表によると、阮(グエン)朝(1802~1945年)第10代皇帝タインタイ(Th...
 阮(グエン)朝(1802~1945年)の王宮に仕えた最後の女性、レ・ティ・ジンさんが、21日午後1時45分に北中...
 阮(グエン)朝(1802~1945年)第10代皇帝タインタイ(Thanh Thai=成泰)帝(在位1889~1907年)の孫にあたる...
 北中部トゥアティエン・フエ省フエ遺跡保存センターは22日、世界遺産フエの建造物群の1つである「延壽(...
 阮朝(グエン朝)の第10代皇帝タインタイ(成泰)帝(在位:1889~1907年)の母親であるトゥーミン(慈明)皇太...
 北中部トゥアティエン・フエ省文化スポーツ観光局とフエ遺跡保存センターは29日、阮朝(グエン朝)最後の...

新着ニュース一覧

 インターネット接続の性能を評価するウェブサイト「スピードテスト(Speedtest)」を運営する米国のオー...
 格安航空会社(LCC)最大手ベトジェットエア[VJC](Vietjet Air)は、米ボー
慣れない海外生活、急病や事故
何かあってからでは遅い!
今すぐ保険加入【保険比較サイト】
 ベトナムの決済アプリ大手「モモ(MoMo)」は、世界的保険グループであるチャブグループ(Chubb Group)傘...
 南部メコンデルタ地方ドンタップ省に住むファン・ゴ・ジエム・フオンさん(女性・18歳)には「我が家」が...
 ホーチミン市当局は10月、ビンチュン街区(旧トゥードゥック市)のマイチート(Mai Chi Tho)通りに全長約5...
 KDDI株式会社(東京都港区)は11日、ベトナム郵便通信グループ(Vietnam Posts and Telecommunications Gr...
 株式会社多摩川ホールディングス(東京都港区)の孫会社である多摩川電子ベトナム(TAMAGAWA ELECTRONICS ...
 家具・建築用金物製造販売を手掛ける株式会社中尾製作所(三重県津市)は4日、東南アジア地域における販...
 ホーチミン市タンミー街区(旧7区)のサイゴンエキシビション&コンベンションセンター(SECC:799 Nguyen...
 ベトナム共産党政治局は、政治システムにおける職位・職務区分を改定する決定第368号-QD/TWを公布した...
 地場系コングロマリット(複合企業)ビングループ[VIC](Vingroup)傘下の電
 マレーシアを公式訪問したチャン・タイン・マン国会議長は同国の首都クアラルンプールで19日にジョハリ...
 電動バイクの生産・販売を手掛ける地場スタートアップのダットバイク(Dat Bike)は18日、シリーズBラウ...
 消防関連設備を製造する韓国系のSテックビナ(S-TEC VINA)が、成長を遂げている。同社によると、ベトナ...
トップページに戻る