ホアンさんが暮らすザービエン街区の小さな路地では、日常の風景が「リタイア世代の街」のような様相を呈している。住民の約80%が55歳を超えており、500万VND以上の年金を受け取っていて、子や孫の世話に追われることもない。
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健康に暮らしたいという願いは強いものの、地域で交流したり専門家に相談したりできる場が不足しているため、住民は周囲に流されるまま、老後資金を使ってしまいがちだ。
「どこかの家が新しいマッサージ機を買うと、近所の人たちがやってきて値段をたずね、誘い合って購入するんです。誰かが海外製の薬を自慢すれば、近所の人たちもすぐに取り寄せを頼み、自分の身体で試すことも厭いません」とホアンさんは明かす。
ベトナム健康増進コンサルティング協会の会長を務めるファム・タイン・ビン准教授・博士は、ゴックさんやホアンさんのような行動の背景には、高齢者が主体的に健康を管理したいというニーズがあるとみている。
数百万人もの高齢者が、老後の健康を自ら管理するために資金を投じる意思があることは、巨大な「シルバーエコノミー」市場を生み出している一方で、透明性の高いサービスの供給は依然として不足している。
「高齢者ケアには、専門的なサービスと適正な料金が伴わなければならず、孤独感につけ込んで商品を販売するような手段にしてはなりません」とビン氏は指摘する。
国連の報告書によると、ベトナムは2036年までに65歳以上が人口の14%を超える「高齢社会」へ移行する見通しだ。日常生活で支援を必要とする人の数は、2025年の470万人から2035年には650万人へと+38%増加すると予測されている。
急速な高齢化は、社会保障の重荷として語られることが多いが、経済的側面から見れば消費需要の大きな変化でもある。
ロイヤルメルボルン工科大学ベトナム校(RMITベトナム)が2026年8月に発表した報告書の試算によると、ベトナムにおける在宅ケアソリューションに特化した「シルバーエコノミー」市場は、2023年の26億USD(約4100億円)から2034年には48億USD(約7600億円)に拡大するという。
電子商取引(eコマース=EC)に関するデータを扱うメトリック(Metric)の統計では、主要ECサイト4社における高齢者向け日用品・食品分野の売上高(2025年10月~2026年9月)は1946億VND(約11億8700万円)に達し、2025年比で+35%増加した。







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