オーストラリアで活躍、ベトナム人女性ピアニスト

2006/10/01 07:15 JST配信

 1歳からピアノを習い始め、4歳でシドニー音楽院に入学、11歳の時にはオーストラリアの芸術の殿堂、オペラハウスで観客を前に演奏し賞賛を浴びる。彼女の名はグエン・ヴァン・アイン。

 音楽院の学長チャン・ブオン・タックは、彼女のことを天賦の才能を持つピアニストだと褒め称える。もっとも、彼女が生まれ育ったオーストラリアでは既に「神童」とよばれていた。父はクラシックギターの演奏家、母はピアノと声楽の教師という音楽一家に生まれた彼女は、生後15ヶ月にして母と一緒にピアノの前に座る。4歳でシドニー音楽院に入った彼女は、若く才能ある演奏家のための特別クラスに迎えられた。9歳の時、最年少での準学士取得を達成し、12歳で既にピアノ科の修士号を取る。

 今や彼女は各地で演奏を行い、TVやラジオにも数多く出演している。しかし最もインパクトの大きな彼女の功績は、シドニーのオペラハウスで、ベトナム人として始めて独奏を行ったことだろう。オペラハウスはオーストラリアで最も名誉ある劇場であり、音楽家であれば誰もがそこで演奏したいと願う場所だ。

 さらに彼女は、次々とコンテストで優勝し、人々を驚かせ続ける。ヤマハとカワイが行う青少年ピアノコンテストでは、1999年、2001年、2003年2005年に優勝を収めた。特に2003年は最も多くの賞をもらった年だったが、この年彼女はタウンズヴィルで行われたオーストラリア室内楽フェスティバルのソロ奏者として選ばれた。さらにオーストリアで行われたウィーン国際ピアニストサマーフェスティバルでも賞をとっている。2003年の終わり、当時15歳の彼女は、ヒルズ・グラマー校の試験で全国で2位という優秀な成績を収めた。(ピアノ独創部門では満点だった。)

 プロのピアニストを目指してマーガレット女史の指導を受ける傍ら、数多くのマスタークラスに参加し、様々な教師の指導を受けている。2006年の初めには、シドニーで行われた国際音楽レジデンスプログラムに、唯一のベトナム人として参加した。これにはアメリカ、オーストラリア、韓国、中国など世界各国から、14歳から28歳までの若いピアニストが35名参加した。その中で演奏者に選ばれただけでなく、彼女は14歳のグループに指導する役にも抜擢された。

 あちこちに行ってピアノを弾いたり新しいことを学んだりすることに意欲的で、彼女はこれまでにドイツ、オーストリア、台湾など多くの国で演奏をしてきた。しかし2005年の秋に初めて故郷ベトナムで演奏したことは、彼女にとって最も忘れられない出来事となっている。両親が、ホーチミンの音楽院で演奏できるようにと、航空券を手配してくれたのだ。リスト、モーツァルト、ショパンなど難易度の高い曲を、正確かつ流麗に弾きこなすその演奏は、クラシックファンの話題を呼んだ。さらにこの時、彼女の家族からホーチミン音楽院で学ぶ生徒に対し総額1,000ドルに及ぶ奨学金が寄付された。これはかつて自分たちを育ててくれた音楽院への、両親の感謝の気持ちだ。それと同時に、オーストラリアで2つの音楽教室を運営する母の、娘にベトナムとのつながりを感じて欲しいと願う気持ちの現れでもあった。

 今年の8月、彼女は再び故郷へ帰り演奏会に参加している。ホーチミン歌劇場の練習室で練習を終えた後、彼女は静かに原稿を書き進める。彼女は報道学科の学生であり、オーストラリアのFM局とテレビ局のために音楽に関する記事を書いている。「多くの人と意見を交換できるし感動を分かち合えるから、記事を書くことは好きなの。」と彼女は語る。3年間の専攻を修了したら、渡米してコルバーン・パフォーミング・アーツ・スクールで学ぶことになっている。有名なピアノ教師ジョン・ペリーの招きにより、80,000ドルに相当する奨学金を受けてのことだ。

 夢を実現するために、彼女は全ての時間を音楽に捧げてきた。一日に2~5時間はピアノを練習し、さらに両親の営む音楽教室で、子どもたちのクラスに音楽理論やピアノを教える。「ピアノの前に座っていると全く疲れを感じないの。演奏のときはいつも作曲家や曲のことに思いをはせているの。」と彼女は語る。叙情的でロマンチックなショパンやリストを好むと同時に、プロコフィエフ、ラフマニノフ、ドビュッシーなど高度な演奏技術を要する20世紀の作曲家の作品も難なく弾きこなす。

 8月18日に行われたコンテストでは、彼女の演奏に、観客はみな魔法をかけられたようになった。ショスタコーヴィッチのピアノ協奏曲第2番第1楽章を弾き終えたとき、観客はまだまだ聞いていたくて誰も席を立とうとしなかった。

 また、髪留めを手に持ったままステージに出てしまったりといったお茶目な一面も。今回のベトナムでは好きなヒップホップのCDや海老入りパン、ドライフルーツなどをお土産に買って帰ったという。11月21日、ピアノの神童は19歳を迎える。

[2006年8月27日 Tuoi Tre電子版]
※VIETJOは上記の各ソースを参考に記事を編集・制作しています。
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