フランス在住のベトナム挿絵画家

2006/12/03 07:05 JST配信

 ベトナム系フランス人画家、マルセロ・チュオン・ルック。マニラに生まれ、40年以上海外で生活しながらも、ベトナムの記憶は彼の中で常に色褪せることはなかった。

 彼の挿絵を挿入したベトナムの小説がパリで翻訳出版された時、だれも故郷を遠く離れた人間が描いたものとは思わなかった。どの絵にもベトナムの情景が色濃く映し出されている。フランスの各出版社がベトナムの小説を出版するときは、必ず挿絵を頼みにやってくることからも、彼の評価の高さがうかがえる。

 フィリピンのマニラに生まれ、その後アメリカやフランスで暮らして40年以上になるが、彼の心はいつもベトナムやアジアに向いていた。ベトナムで暮らした期間は短いけれども、それは彼の人生において最も濃密な時間だったという。そこで体験した数々の古い遊びなどが、彼の原風景となっている。特に、家の運転手と一緒に散策したサイゴンの街路は彼の一番のお気に入りだ。

 16歳の時から、彼はベトナムについて書かれた本を読み漁った。もともと家の本棚にあったものにさらに買い足していくことで、彼の所有するベトナム関連の本はどんどん増えていった。外交官の父は自然科学を学ぶように勧めたが、25歳になった時彼はそれまでソルボンヌ大学で学んだこととはまったく関係のない方向に進むことになる。それは考えたこともなかった挿絵画家という道だった。

 1980年代のベトナムについて描いた画文集「チュック・ロン」が彼の初仕事ということになる。彼は文学作品の挿絵の他に、リベラシオンのようなフランスの有力紙にもイラストを描いている。2002年にホイアンを訪れた際には「水の花」というイラスト集を発表した。

 1993年、彼が4半世紀以上も離れたベトナムに初めて帰国した時、彼はどうしてもっと早く帰らなかったのかと後悔したという。ベトナムの人々の日々の営みは彼の心をたちどころに捉えた。たった3日間の滞在は彼に強い印象を残した。ベトナムのイメージが色濃く現れ始めた「ハノイにて」という画集には、ドイモイ期のハノイの情景が描かれた12の作品が収められている。彼はベトナムに関する画集の作成に精力的に取り組んでいるが、非常に労力を要するためまだまだ満足のいくところまで実現できてはいないという。

 ベトナムからの誘いがあれば、他の予定をキャンセルしてでも応じたいと彼は言う。昨年彼はハノイのフランス語学校から招かれ、彼が挿絵を描いた本についての講義をした。その学校ではこの本をベトナム国土についての学習の教材として使っているという。また、今年の11月にはハノイにあるフランス文化センターで個展を開き、フランスでの芸術活動についてのレクチャーをすることになっている。この展覧会ではデッサンを含む40の作品を紹介する。その中には画集「ハノイにて」の作品も含まれている。

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