紅河デルタ地方ナムディン省ナムディン市でカフェ「ニューランド」を経営するマイ・ズイ・トゥアン(29歳)は、クラシックバイクの収集家として知られている。彼のカフェにはそのうちの何台かが陳列されている。彼が苦労して探し集めたものだ。
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トゥアンがバイクに興味を持つきっかけになったバイク「Simson S51」も、カフェの一隅に展示されている。彼の父親がかつて愛用していたバイクだが、直接父親から譲り受けた訳ではないという。1990年代前半、バイクは各家族にとって貴重な財産と言えるものだった。彼の両親は教員で給与が低く、長年かけて貯めたお金でようやく買ったバイクだった。トゥアンは父親の運転するバイクに乗って出かけるのが好きで、洗車の時にキャブレーターの洗浄を手伝ううちにバイクを好きになっていった。
家族の経済状態が良くなると、そのバイクは人に売られ新しいバイクが家にやってきた。しかしトゥアンにとって最初のバイクの印象は強く、クラシックバイクの収集を始めようと思ってからまず思いついたのがこのバイクだった。バイクは人から人へと転売されており、ようやく5人目で所有者が見つかったが、故障して放置されたままになっていた。トゥアンは15年ぶりに再会した思い出のつまったバイクを入手、数か月かけて修理し走れるようにした。
トゥアンがクラシックバイクの収集を始めたのは2005年。大学を出て電気設備販売会社に就職したばかりの頃だった。それから5年、彼のコレクションは約30台にまで増えた。1950年代から配給制(バオカップ)の時代までの「Izi」「Delta RMR 24」「Honda 67」「Simson Star」「Hapbich」「Motobecane AV 46」「Solex」「Suzuki A92」「ETZ 150」「ETZ 251」などの古いバイクたち。
このうち15台までは部品を見つけて修理し、走れるようにした。部品は純正にこだわっているため、簡単には入手できない。また、「バイクはただ飾って眺めるものではなく、外を走ってこそ美しい」との考えから、時々クラシックバイクでナムディンの町を走ることもあるという。
トゥアンは現在、ルオンテービン大学の教員でもある。いくつもの仕事をするのには理由がある。クラシックバイク博物館の設立という夢に向かって、資金をためる必要があるからだ。「博物館に入って古いバイクを眺めた時に、過去や家族の思い出がよみがえる」、そんな空間を作りたいという。