親が亡くなったとき立派な墓をつくるのは子の務め――。常識的にはそう考えられている。しかしメコンデルタ地方ドンタップ省カオライン市に住むズオン・バン・タイさんの家族や親戚は、タイさんの父親の例にならって40人以上が献体登録をしている。
(C) Sai Gon Tiep Thi, Thanh Nha |
タイさんの父ズオン・トゥ・ティンさんは2007年12月に亡くなった。生前のティンさんは80歳を超えても毎朝新聞を読み、インターネットでもニュースをチェックし、ときどき自転車で出かける日々を過ごしていたという。
ティンさんはある時、自分は医学のために献体する考えがあるが、どう手続きすればよいかわからないから書類を取り寄せるようにと家族に話した。献体などという話は聞いたこともなく冗談だろうと思ったがとりあえず書類を取り寄せると、ティンさんはさっそく書類に署名し、地元の人民委員会に提出した。
人民委は地元で初めての手続きに躊躇し、すぐに受け付けようとしなかった。ティンさんはそれでもあきらめず、何度も役所に出向いて書類を受理するよう求めた。「父は自分の頭がおかしくないことを証明するためなら精神鑑定を受けてもいいと話していました。最終的に役所が書類を受理してくれたことをとても喜んでいました」とタイさん。