「剣を置くのは芸を尽くした時」シングルファーザーの大道芸人

2019/08/25 05:46 JST配信

 「私は7歳の時から大道芸の一団について、各地を回りながら芸を学びました。当初は年長者たちの芸を見て魔法か何かと思っていましたが、次第にそれはトリックと厳しい練習の上に成り立つ曲芸なのだと理解するようになりました。剣で人の身体を半分に切る芸もそうです。剣の刃は鋭くないし、剣で切る場所とタイミングを合わせることで人の身体は無傷です」とタンさん。

(C) thanhnien
(C) thanhnien
(C) thanhnien
(C) thanhnien
(C) thanhnien
(C) thanhnien
(C) thanhnien
(C) thanhnien

 好奇心で一団に入ったタンさんだったが、まさかこれが生涯の仕事になるとは思いもしなかったという。大道芸が最盛期の頃、タンさんは一団と共にホーチミン市や近隣省を巡った。当時の舞台は今のようなステージではなく、音楽も照明もない路上だ。鉄の棒を曲げたり炎を飲み込んだり、電球を噛み砕いたりすると、見物客たちは歓声を上げた。後に大道芸が職業として格上げされ、東南部地方バリア・ブンタウ省のブンタウサーカスに入団した。サーカスの師匠から新たな芸も伝授してもらい、ステージに立つようになった。

 当時はサーカスや曲芸の業界は現在のように広く発展しておらず、芸人たちの集う場所と言えばホーチミン市5区のアンビン病院裏にある小さなカフェだった。カフェに正式名称はなかったが、業界では「フオンムアトゥー(Huong Mua Thu)」と呼ばれていて、芸人ならば誰もが知っている有名店だ。それが現在では旧暦12月23日に各地のサーカスや大道芸の一団が一堂に会し、芸人をスカウトする場となっている。

 サーカスで経験を積んだタンさんは独立し、試行錯誤しながら身体を張った新たな芸を身に着けていった。「大道芸は芸術なんです。生き残りたければ人と違うことをしなければなりません。他の芸人が1匹のヘビを鼻に入れるなら私は4匹、真っ直ぐな剣を飲み込む芸人がいるなら私は曲がった剣を、それが3本なら私は7本。生き残りたければね」。

 そうしてタンさんは鼻に入れるヘビを増やしていき、舌で扇風機を止め、まぶたでひとが2人乗ったトラックを引っ張れるようにまでなった。ドリルを一方の鼻の穴からもう一方の穴へ通すこともできるが、ある時には演技中にドリルの刃が折れ破片が唇に飛び散った。さらに恐ろしいことに砕けた一部が鼻の中にすっぽりはまってしまい流血した。観客がパニックに陥る中、タンさんは自ら鼻の穴から破片を抜き取り、観客にお辞儀をして舞台袖にはけると倒れ込んだこともある。

 どんなことが起きても演技を終えてからステージを下りるのがタンさんの信念だ。演技中に手足を火傷したり顔に傷を負ったり、胃潰瘍も日常茶飯事だ。身体を酷使した曲芸の連続で、さすがに季節の変わり目は身体に堪えるという。

前へ   1   2   3   次へ
[Thanh Nien 13:35 26/07/2019, T]
※VIETJOは上記の各ソースを参考に記事を編集・制作しています。
© Viet-jo.com 2002-2025 All Rights Reserved 免責事項

この記事の関連ニュース

 「眠らない街」、ホーチミン市1区ブイビエン通りのバックパッカー街に音楽が鳴り響き、カラフルなライ...
 ベトナム人サーカス団員のザン兄弟ことザン・クオック・コー(32歳)さんとザン・クオック・ギエップ(27...
 ホーチミン市観光局によると、1区の歩行者天国グエンフエ通りで5月13日から、イベント時を除く毎週土日...
 ヘビ使いの大道芸で客を引き寄せ、家伝の歯痛薬を言葉巧みに売りつける。そんな5~6人の大道商人グルー...

新着ニュース一覧

 米マイクロソフト(Microsoft)が発表した調査報告書「ワークトレンド指数(Work Trend Index)」2025年版...
 在ベトナム米国大使館は18日、巡視船「CSB8022」をベトナム海上警察に引き渡したと発表した。越米間の...
 宅配を手掛ける地場ゴゾ・エクスプレス(Gozo Express)は18日、地場系コングロマリット(複合企業)
慣れない海外生活、急病や事故
何かあってからでは遅い!
今すぐ保険加入【保険比較サイト】
(※本記事はVIETJOベトナムニュースのオリジナル記事です。) 【ロンドン編】はこちら 【パリ編】は
 最先端の機械学習テクノロジーを活用してモバイル資産を識別・評価・最適化する米国のラウンズ(Rounds)...
 サイゴンハノイ保険[BHI](Sai Gon-Ha Noi Insurance Corporation)は、韓
 ホーチミン市7区のサイゴンエキシビション&コンベンションセンター(SECC:799 Nguyen Van Linh, quan ...
 ベトナムは、ライチの生産量で中国に次ぐ世界2位となっている。  2025年の収穫量は約30万3000tで、...
 地場系コングロマリット(複合企業)ビングループ[VIC](Vingroup)傘下の電
 ハノイ市ノイバイ国際空港で、ベトナム人乗客による日本円の違法持ち出しが発覚した。税関当局が18日に...
 国内IT最大手のFPT情報通信[FPT](FPT Corporation)はこのほど、東南部地
 国会は18日、エネルギー使用効率化法の一部を改正・補足する法律を可決した。同法は2026年1月1日に施行...
 持田製薬株式会社(東京都新宿区)とMeiji Seikaファルマ株式会社(東京都中央区)は、持田製薬が日本で販...
 ベトナム発のITソリューション企業であるカオピーズ(Kaopiz、ハノイ市)と、東南アジア市場における医療...
 米グーグル(Google)と財政省傘下のベトナム国家イノベーションセンター(NIC)は18日、ベトナム国内での...
トップページに戻る