ホーチミンの市場とともに生きる:ホアフン市場

2026/03/15 10:45 JST配信

 「この市場は寂しいと言えば寂しいですが、1日でも休むと恋しくなります。家は静かすぎて耐えられませんが、市場に出てきて話し相手がいれば元気になれるんです」と、もうすぐ60歳になる、化粧品売りのアンさん(女性)は優しく笑う。

(C) thanhnien
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 「私たちはよく、ここは『療養市場』だなんて冗談を言い合っているんです。誰も何も売り買いしないから、ここに休みに来ているんだ、って」と彼女は続ける。

 「市場は自分たちの生活を支えてくれるだけでなく、心も豊かにしてくれるんです。商品棚のそばで一生を過ごしてきた我々にとって、市場の呼び込みの声や笑い声はもはや血肉の一部となっています。家にいるのは退屈でたまりません。ここに来れば友人に会え、おしゃべりができ、恋しさを紛らわせることができますから」とフオンさんは言う。

現代化という名の旋風

 リエンさんは、ここ数年、ホアフン市場は心が痛むほど閑散としていると打ち明ける。かつての人々の賑わう足音はすっかりまばらになり、代わりに静寂な空間が広がり、カタカタと鳴る扇風機の音と、商人や常連客同士のぽつりぽつりとした会話だけが残っている。

 「今は誰もが家でじっとしていても、携帯電話を操作すれば家の前まで商品が配達される時代です。送料はかからないし、値段もずっと安いし。必要なものは何でもネットで手に入るんですから、若者たちは昔のように市場には来ません」とフオンさんは悲しげに語る。

 購買力は低下しているが、様々な維持費は着実に増加している。「ごみ代が毎月約100万VND(約6000円)かかります。それに、場所代、税金…色々あります。売れ行きが悪くても支払わなければならず、支払わなければ店を失ってしまいますから」とリエンさんは言い、拠り所を探すかのように細い両手を組む。

 「ここには、かつて全財産をはたいて買われた店もあります。仕事を得るため、生計を立てるため、家族皆を養うために、20テール(1テール=37.5gの純金)以上の金(ゴールド)を支払って店を買った人もいました。でも、今はただ座って少しの思い出をしのぶ場所になってしまいました。昔は将来のために店を買うのだと思っていましたが、今はもう何の価値もありません」とリエンさんはため息をつく。

市場にすがる高齢者たち

 ホアフン市場では、商人の大半が60歳以上で、中には80歳を超える人もいる。彼らは時の経過とともに色あせたコンクリートの柱のようにしぶとい、「市場の番人」だ。

 子孫に家業を継がせようと考えていた人も多かったが、若い世代はもはや興味を持っていない。「若者はここに1日も座っていられないでしょう。ここは年寄りばかり。金儲けのためではなく、自分がまだ役に立っていると感じるために売っているんです」と、アンさんは笑いながらも目を赤くする。

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