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はじめに
国際基準であるISO9001(品質マネジメント)とISO14001(環境マネジメント)が、2026年に改訂される見込みです。
すでにこれらの認証を取得している企業、またはこれから取得を検討している企業にとって、この改訂は業務運営や現地対応に大きな影響を与えるものです。
本記事では、規格改訂の動機・改訂内容の予測・ベトナムにおける具体的な準備プロセスについて整理していきます。
1. ISOの規格改訂とは何か?
規格改訂とは、技術革新・社会的要請・企業活動の変化に対応するために、国際標準化機構(ISO)が既存の規格内容を見直し、更新するプロセスです。
ISO9001・ISO14001の現行バージョンは2015年版であり、通常5〜10年のスパンで再検討されます。今回の改訂もその一環として、より時代に合ったマネジメントシステムを求めるものとなります。
2. 改訂が検討される背景
以下のような要因が、2026年の改定に向けた動きを後押ししています。
ビジネス環境の変化・デジタル化の進行
グローバルなサプライチェーンの複雑化、ITシステムやデータ運用の多様化など、品質・環境管理におけるツールやプロセスの革新が急速です。
持続可能性と社会的責任の重視
気候変動対応、生物多様性の保全、炭素排出削減などの要請が強まっており、環境マネジメントだけでなく、品質マネジメントにもESGやSDGsの観点が取り込まれていくことが求められています。
ユーザーや認証機関からのフィードバック
2015年版の運用経験を通じて明らかになった課題点(複雑性、重複、文書管理など)が改訂の材料となっており、より明確で実務に即した規格を目指す動きがあります。
3. 改訂の時期と移行期間
ISO9001・ISO14001の改訂版は2026年中の発表が予想されています。
規格が正式に改定された後、通常は 移行期間が設けられ、既存の認証組織はその期間内に新規格へ対応を完了する必要があります。
一般的には3年程度の猶予が想定されます。ベトナムで活動する企業であっても、この移行期間中の対応準備を怠ると、審査での指摘や運用上の混乱を招く可能性があります。

4. ベトナムで要求される準備作業
改訂に備えて、ベトナム企業ならではの観点を踏まえながら、以下の準備を早期に進めることが望ましいです。
項目 | 内容 |
マニュアルの簡素化 | 現行のマニュアルに無駄な重複、古い規定や運用実態にそぐわない規則が残っていないか見直し。実務に合った簡潔な構成にする。 |
ISO9001とISO14001 の統合運用 | 二つのマネジメント規格を別個に運用しているなら、一つの統合マニュアルや手順書で重複を減らす。ベトナムの拠点ではリソースが限られていることも多いため、一元管理が効率的。 |
規格の構成順への整合 | 改訂される規格の項番や章立てに基づいて、現在の文書(手順書・記録など)を整理し、改訂リリース後の更新作業をスムーズにする。 |
サプライチェーンを含む環境・品質影響の把握 | 自社だけでなく、取引先や仕入れ先の環境・品質マネジメント状況を確認し、必要な対応を組み込んでおくこと。特に環境規制がグローバルに厳しくなる傾向。 |
ISO9001(品質マネジメント)で見込まれる変更
● リスクと機会の管理要求事項の拡充
● 文書化情報(文書・記録)の定義および管理の見直し
● デジタル化・データ管理(AI, IoT,クラウド等)の反映
● ESG・持続可能性・気候変動対応の統合
● サプライチェーンの監視性(auditability)や透明性の強化
ISO14001(環境マネジメント)で予想される追加/強化点
● 温室効果ガス排出量のモニタリング・削減策措置
● 自然保護・生物多様性保全の取り組み強化
● 取引先も含めた環境負荷の把握と制御
● 環境データの収集・分析のためのデジタルツール導入
● 規制・国際的な合意(パリ協定など)との整合性の確保
5. 実践的チェックリスト:何から手を付けるべきか
以下は、実際に改訂に向けて動いていくステップとなります。
1. 改訂版のドラフト等が公開されていないか定期的に情報収集
2. 現行マニュアル・手順書・記録類の現状レビュー
3. 社内での影響度分析(どの部署・プロセスが大きな変更を求められるか)
4. サプライヤーや取引先の環境・品質体制の現状把握
5. 文書構造の再編/統合マニュアル作成の検討
6. 社員研修・規格内容周知の計画立案
7. 必要に応じて外部コンサルティングの利用検討
6.まとめ
ISO9001・ISO14001の2026年の改訂は、単なる形式的な更新ではなく、現代のビジネス・環境問題の課題と直結する変化が含まれる見込みです。
ベトナム拠点を持つ企業は、情報取得・準備対応・内部運用の見直しを早めに始めることで、認証取得や運用移行のストレスを軽くし、かつ品質・環境マネジメント体制を一層強化できるチャンスでもあります。
改訂への対応は大変な作業ですが、それをきっかけに「より会社に合った実効性のあるマネジメントシステム」を整備できれば、企業にとって長期的な競争力・信頼性・社会的評価の向上につながります。

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