残留日本兵のベトナム人妻で、2017年2月にベトナムを初訪問した天皇、皇后両陛下と面会したグエン・ティ・スアンさんが18日14時40分、心臓疾患のためハノイ市ドンアイン郡ビンゴック村ビンタイン村落の自宅で死去した。95歳だった。スアンさんの家族が明らかにした。
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スアンさんは2017年5月に突然の病気で入院し、数か月間にわたり闘病生活を送っていたという。
スアンさんと日本人夫は1945年、日本軍の降伏後に結婚。当時インドシナには約10万人の日本兵が駐屯しており、スアンさんの夫をはじめ約600人の日本兵がベトナムに残留し、ベトナム独立同盟会(ベトミン)として第一次インドシナ戦争に参戦した。
約半数の残留日本兵が戦死・病死し、第一次インドシナ戦争が終結した1954年には生存していた残留日本兵の一部が帰国を余儀なくされた。1954年、1回目の残留日本兵引き揚げでスアンさんの夫を含む71人が日本へ帰国したが、家族の同伴は許されなかった。
スアンさんは夫が帰国しても再婚することなく女手一つで子供を育てた。その後、2005年に夫は日本の家族を連れてベトナムを訪れ、スアンさんとの再会を果たした。スアンさんは毎晩ベトナムの国旗の下に日本の軍服を巻き付けた枕と一緒に眠っていた。
夫も既に他界しており、スアンさんの希望で家族により遺骨が4000kmの距離を越えてベトナムに持ち帰られた。生前、地元紙のインタビューにスアンさんは、「一度だけでも彼と再会できたので思い残すことはありません。過去は過去です。前に進む時が来たのです」と語っている。