ベトナムニュース総合情報サイトVIETJO [ベトジョー]
 ようこそ ゲスト様 

歴史に翻弄された残留日本兵のベトナム人妻、夫の軍服を巻いた枕を抱き眠る

2017/02/28 17:02 JST配信
(C) Reuters, VnExpress
(C) Reuters, VnExpress

 「これは主人なんです」。グエン・ティ・スアンさん(94歳)はベトナムの国旗を巻き付けた枕を指差して言う。国旗の下には日本の軍服が折り畳まれて巻き付けられており、スアンさんは毎晩この枕と一緒に眠るのだ。

 2月28日からベトナムをご訪問される天皇、皇后両陛下はハノイ市で残留日本兵の妻らとご懇談される予定で、スアンさんも残留日本兵の妻の1人だ。

 スアンさんの夫は第二次世界大戦後に日本へ帰国したままベトナムへは戻ってこなかった。残留日本兵とベトナム人女性の家族は日本とベトナム両国間の歴史の荒波に翻弄されてきた。

 1940年代に日本軍がベトナムの一部地域を占領したことについて、依然として多くのベトナム人が嫌悪感を抱いている一方で、日本軍による占領はフランスのインドシナ植民地支配を終わりに向かわせる足がかりとなったと据える人もいる。

 当時のベトナムでは日本軍とフランス軍の占領により数百万人のベトナム人が餓死し、一方ではスアンさんのように日本兵と家庭を築く者もいた。「彼はベトナム語がとても上手で、ベトナム語の歌も唄えたんですよ」とスアンさんは夫に思いをはせる。

 スアンさんと夫は1945年に日本軍の降伏後に結婚した。当時インドシナには約10万人の日本兵が駐屯しており、スアンさんの夫を始め約600人の日本兵がベトナムに残留し、ベトナム独立同盟会(ベトミン)として第一次インドシナ戦争に参戦した。

 約半数の残留日本兵が戦死や病死し、第一次インドシナ戦争が終結した1954年には生存していた残留日本兵の一部が帰国を余儀なくされた。

 1954年に1回目の残留日本兵引き揚げがあり、スアンさんの夫を含む71人が日本へ帰国したが、家族の同伴は許されなかった。1961年の2回目の引き揚げでは妻子の同伴が許されたものの、複数のベトナム人女性との間に子供を儲けていた者も多く、取り残された女性や子供もいたという。

 残留日本兵を父親に持つグエン・ティ・バンさん(63歳)は「父は必ず迎えに来ると約束をしましたが、約束を果たすことができませんでした」と語る。父親は復員して7年後に亡くなった。

 ベトナム戦争勃発後は、日本が米国と同盟国であったことから残留日本兵とベトナム人妻の家族は苦境にさらされた。状況が好転したのは1975年以降のことで、冷戦終結後は日本とベトナムの両国関係も急速に改善されていった。

 スアンさんは夫が帰国しても再婚することはなく女手一つで子供を育てた。2005年にスアンさんの夫は日本の家族を連れてベトナムを訪れ、スアンさんとの再会を果たした。

 スアンさんは当時のことをこう振り返る。「一度だけでも彼と再会できたので思い残すことはありません。過去は過去です。前に進む時が来たのです」。

 1月の安倍晋三首相のベトナム訪問に続き、この度の両陛下のベトナムご訪問は両国にとって非常に意義深いものとなるだろう。

[Anh Ngoc, VnExpress, 27/2/2017 09:22 GMT+7, T].  © Viet-jo.com 2002-2025 All Rights Reserved. 
※VIETJOベトナムニュースは上記の各ソースを参考に記事を編集・制作しています。 免責事項
新着ニュース一覧
デジタル技術産業法を可決、デジタル資産とAIの法的根拠を制度化 (18:59)

 国会は14日、デジタル技術産業法を賛成多数で可決した。同法は2026年1月1日に施行される。これにより、デジタル資産と人工知能(AI)に関する法的根拠が初めて制度化された。  同法の対象となるデジタル資産...

国会、改正特別消費税法を可決 加糖飲料も対象に (17:54)

 国会は、改正特別消費税法を賛成多数で可決した。同法は2026年1月1日に施行される。  同法によると、加糖飲料については、ベトナム国家基準における清涼飲料水の定義に該当し、糖分が100mLあたり5gを超える...

国会、憲法改正の決議採択 7月1日から地方自治体を2層構造に移行 (17:31)

 国会は16日、憲法の一部条項を改正・補足する決議を採択した。同決議は即日施行された。  決議によると、地方自治体は6月30日をもって郡レベルの行政区(省・中央直轄市傘下の市、区=quan、郡=huyen、町=...

世界のベトナム人街を訪ねて【プラハ編・後編】 (15日)

(※本記事はVIETJOベトナムニュースのオリジナル記事です。) 【ロンドン編】はこちら 【パリ編】は

ホーチミン、米AMDとAI・ハイテク協力促進で覚書 (15:59)

 ホーチミン市人民委員会は12日、半導体設計大手の米アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(Advanced Micro Devices=AMD)との間で、技術協力に関する覚書を締結した。式典にはチャン・ホン・ハー副首相も出席した...

ベトナム政府、国家戦略技術32分野を公表 AI・バイオ医療など (15:45)

 ファム・ミン・チン首相は12日、国家の戦略的技術および戦略的技術製品に関するリストを定める決定第1131号/QD-TTgに署名した。  今回の決定では、国家の持続的な発展と技術革新を推進するための、10の戦略...

ベトナムAI産業のGDP貢献、40年までに最大1300億USD規模に (14:41)

 財政省傘下のベトナム国家イノベーションセンター(NIC)が国際協力機構(JICA)およびボストン・コンサルティング・グループ(BCG)と協力して発表した報告書「ベトナム人工知能(AI)経済2025」によると、AI産業は今...

信頼性の高い保険会社トップ10、バオベトが生保部門で首位キープ (13:57)

 ベトナム評価レポート社(ベトナムレポート=Vietnam Report)は、2025年における信頼性の高い保険会社トップ10を発表した。この中で、バオベトグループ[BVH](Bao Viet Group)は生命

クオン国家主席、越訪のリトアニア大統領と会談 (6:09)

 ルオン・クオン国家主席は12日、リトアニアのギターナス・ナウセーダ大統領と会談した。1992年の外交関係樹立以来、同国大統領がベトナムを公式訪問したのは今回が初めて。  両首脳は会談で、今回の公式訪...

7月1日施行の社会保険法、加入対象者を拡大 外国人関連規定も (6:01)

 2024年社会保険法(法律第41号/2024/QH15)が、2025年7月1日に施行される。これは2014年社会保険法(法律第58号/2014/QH13)に置き換わるもので、社会保険の加入対象者が拡大される。  2024年社会保険法では、...

個人事業主への電子請求書義務化、飲食店が便乗で一斉値上げ (5:41)

 6月以降、ホーチミン市やハノイ市にある多くの飲食店で、ブン、フォー、バインミーなどの価格が一斉に引き上げられている。店主らは値上げの主な理由として、「納税義務の発生」を挙げている。  店主らは、...

ベトコムバンク、東南アジアの有力ブランドトップ30に初選出 (5:17)

 英市場調査会社カンター(Kantar)が発表した「東南アジアのブランド価値トップ30ランキング」2024年版で、ベトコムバンク[VCB](Vietcombank)がベトナム企業として唯一ランクインを果

畜産大手CPベトナムの「病畜の肉」流通疑惑、違反の3店舗に罰金 (5:00)

 タイ系畜産大手CPベトナム(CP Viet Nam)が病気の豚や鶏の肉を販売していたとソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)上で告発されたことを受け、南部メコンデルタ地方ソクチャン省農業環境局は11日、検査...

ベトナム航空、スカンジナビア航空と提携 北欧路線の接続強化 (4:47)

 全日空ANAが出資するベトナムのフラッグキャリアであるベトナム航空[HVN](Vietnam Airlines)は13日、スカンジナビア航空との間で、ベトナムと北欧(デンマーク、ノルウェー、スウェ

ダナン:半導体研究開発ラボ建設を承認、投資総額98億円 (3:07)

 南中部沿岸地方ダナン市人民委員会は、半導体向け先端パッケージング技術の研究開発(R&D)を目的とした実験施設プロジェクトへの投資方針を承認した。  プロジェクトの投資主は、半導体や人工知能(AI)分野の...

©VIETJO ベトナムニュース 2002-2025 All Rights Reserved