落合賢(おちあい・けん)監督の新作ベトナム映画「パパとムスメの7日間(Hon papa da con gai)」が、2018年12月28日にベトナムで公開された。2016年12月公開の「サイゴン・ボディガード(Ve si Sai Gon)」に続いて2本目のベトナム映画を手掛けた落合監督にベトジョー編集部が話を聞いた。
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前編 → ベトナム映画「パパとムスメの7日間」落合賢監督インタビュー【前編】
―――家族の関係性やシチュエーションなどを含めて、原作の舞台である日本とベトナムでの相違点についてはどのように映画に落とし込んでいかれたのでしょうか。
原作が書かれたのがもう10年以上前のことなので、その時の日本と今のベトナムで大きく違う部分はあると思います。現代では世界的に親が幼児化していて、親のほうがスマホでゲームをして遊んでいて、子供のほうが一生懸命勉強している、みたいな姿が結構見られると思うんですけれど、親と子供の立場が逆転している、それを今回の作品でも描きたいなと思いました。特にベトナムの高校ってものすごく厳しいんですよ。早朝から学校が始まって、休み時間も含めて規則正しくて、先生の指導の仕方もすごく厳しいんですね。僕が感じたのは、逆に大人になってクリエイティブな会社であるほど自由度が求められるというか。それをパパの会社で表現していきたかった。もともとボディスワップ映画でよくやられてきたのが、親が厳しくて子供が遊び惚けていて、入れ替わって逆になると困るというものだったんですけれど、僕は現代は逆だと思うんです。そういう意味では、今まで作られてきた入れ替わり映画の設定の逆をいこうとはしていました。
―――映画の中でのパパとムスメ、それぞれの想いについて監督の考えを教えてください。
ムスメのチャウ(Chau)が、母親が死んでしまったことで母親の代わりになろうとしていて、それによって自分らしさを無くしてしまった。そのことを、パパのハイ(Hai)はすごく心配している。ハイはそんなチャウに対して、人生を楽しむことで自分らしさを見つけていって欲しいと思っていた。でも、映画を通して彼が気づくのは、彼女が、ムスメがそうなってしまったのは、自分に親としての自覚がなかったからなんだということ。逆にムスメのほうは、父親は遊び惚けているだけなんじゃなくて、自分に人生を楽しむことの大切さを教えようとしていたのだということに気づく。そして自分も誰かになろうとするのではなくて、自分だけにしかないもの、自分らしさを見つけなければいけない、ということに気づくんです。
パパが化粧品の会社で働いているというのは原作も同じなんですけれど、このメイクの部分というのは僕が原作で特に面白いなと思った部分なんです。現代のメイクの在り方というのは、きれいな人がいて、その人になるためにはどうしたら良いのかというメイクの教え方が多いと思うんですね。ただ、自分らしさを活かすメイクというのが僕は本来のメイクの仕方だと思いますし、今後どんどん浸透していく考え方だと思うんです。