間もなくテト(旧正月)を迎えるが、クアン・ティンさん夫婦は、故郷で離れて暮らす5歳の息子に今年のテトは帰れないことをまだ伝えられずにいる。
(C) vnexpress |
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「1年のうち10か月は離れて暮らしているので、息子に会いたいです。47歳にして初めて、故郷から離れたところでテトを迎えます」とティンさん。
ティンさん夫婦は北部紅河デルタ地方ハイズオン省出身で、今は北中部地方タインホア省の海沿いの村でお粥屋を営んでいる。夫婦は毎日、故郷で暮らす息子に電話をかけているが、テトに会えないことを伝える勇気はまだない。
ハイズオン省チーリン市で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の集団感染が発生したというニュースを知り、ティンさんは故郷の家族や親戚が感染者と接触してしまうのではないかとうろたえた。その日、北中部地方は暖かかったが、携帯電話を握る手は震えていた。
ティンさんの故郷は感染流行地域のチーリン市から約50km離れたタインミエン郡だ。ティンさん夫婦は、まだ市中感染が発生していなかった1か月前に帰省し、2人がタインホア省に戻った後にチーリン市で感染が確認された。
2人とも健康状態に異常はなく、新型コロナに感染していることはないと思いつつも、ハイズオン省での滞在歴があったことから、念のためタインホア省の診療所で健康申告を行った。
「その行動は、地域社会への責任意識を示すためであり、また他の省からタインホア省に来て地元の人を相手に商売をする人間としての信頼を築くためでもありました」とティンさんは語る。
健康申告の手続きと検温を終えて、夫婦は自宅に帰り、規定に沿って自宅隔離を行った。感染のリスクがないことがわかり、当局の許可を受けてテト期間中もお店を開けることになった。
ティンさんは毎日、近所の人に頼んでお店のお粥を買ってもらったり、電話注文を受けたりしながら営業を続けている。ただし、客に引き渡す際にはお店の前の椅子に商品を置いておき、ティンさんがその場を去ってから客が持っていくという形で、互いに接触しないように工夫している。
今から4年前、ティンさん夫婦は息子も一緒にタインホア省へ移り、お粥屋を開くことに決めた。以来、小さい子供から大人まで、村の人々がお店にやって来るようになった。ティンさんは「新型コロナ禍で店を開き、理解してくれる人は応援してくれますが、中には失礼なことを言ってくる人もいます。それは構いませんが、テトに息子と離れ離れということばかり考え、つらくなります」と沈んだ声で話した。