南中部高原地方ダクラク省は、長きにわたり観光客を誘致してきた「象乗りツアー」から、「ゾウに優しい観光モデル」への転換を図っており、組織や団体、観光客などに広く支持されている。
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同省では、1980年には502頭のゾウが飼育されていたが、1998年には166頭に減少し、現在は44頭までに減ってしまった。頭数の減少には、ゾウの老化や密猟、売買、生息できる環境の縮小、ゾウを飼育する世帯で計画的なエサの植栽が行われてこなかったなど様々な要因がある。中でも深刻だったのが、ゾウを酷使した「象乗りツアー」だ。
これらの問題から、同省は2018年より非政府団体のアジア動物基金(Animals Asia Foundation=AAF)と同省ゾウ保護センターと連携し、ブオンドン郡のヨックドン国立公園で「ゾウに優しい観光モデル」を展開している。AAFはこのプロジェクトに対して2019年~2021年に6万USD(約620万円)を支援している。
「ゾウに優しい観光モデル」では、ゾウを森に放し、観光客は遠くからゾウを観察したり、ゾウの習性や本能について学ぶことができる。専門家らはこの観光モデルを評価すると同時に、このモデルをより成功させるには人々の意識改革やゾウの飼い主に対する経済的支援が不可欠だとしている。
観光客には、安全が確保されていない状態でゾウへ接近しようとしないこと、興味本位から象乗りをしたいという考えを持たないことなどが求められる。また、これまで「象乗りツアー」で生計を立ててきたゾウの飼い主については、「ゾウに優しい観光モデル」への転換にあたり生計を維持できるような支援策が必要となる。
同省は2030年までのビジョンに基づいた2021~2025年の観光開発案を策定しており、その中に「ゾウに優しい観光モデル」も盛り込まれている。
同省文化スポーツ観光局と農業農村開発局は、開発案に基づいてゾウの飼い主の支援も重視した具体的な観光モデルを構築していく。このほか、科学技術局はゾウの遺伝子の保存や、病気や寿命で死亡したゾウの標本を同省の博物館に展示することも計画している。