<明日は明日の試合がある>フィリップ・トルシエ(元サッカー日本代表監督) ベトナムで育成世代にサッカー全力指導中【前編】

2019/08/04 05:00 JST配信

 1999年に、U20日本代表選手たちをアフリカへ率いた時(*2)、トルシエ氏はそこであえて現地の日常に近い環境を用意した。質素なホテルの蚊だらけの部屋、水道からは濁った水、フォークの曲がる固い肉、長時間の移動も小さなバスで、練習の合間には現地の孤児院も訪れた。「私の仕事はサッカーの指導ですが、サッカーは人がやるものです。だから私は、人としても大切なことは選手と分かち合いたい。孤児院に行ったのは、日本人の思う“普通”は、他の国ではそうではないぞ、ということをその目で見てもらいたかったからです。アフリカの孤児院と孤児の様子は、日本で生まれ日本で育った彼には想像さえできなかった現実のはずです。そこで選手達は孤児を抱きました。世界は不公平でこれも現実だと知った、大きな体験だったと思います」。

(C) Miwa.A
(C) Miwa.A

(C) P.Troussier

(C) P.Troussier

<サッカーは人がやるもの、選手でも感情のある一人の人間であれ、一人の人間として世界を見よ>という考えは一貫していて、今年7月のU17ベトナム大会はタイニン省という南部で開催されたが、大会中のオフ日には、暑い中、選手たち全員を近くの寺院や村見学に引率した。

 当時の日本代表選手たちは、後にその経験の影響について語っている。

「普通に現地のものを食べてたよね。ハエのたかってる肉で、びちゃびちゃの黒い米を取って、これ本当に大丈夫なのかよとか言いながら。シャワーは水自体が出ないから、ペットボトルの水で身体を拭いてたな。~中略~

あの経験があるから、その後は世界のどの国のどんな場所に行ってもぜんぜん大丈夫だった。いきなりナイジェリアだったらきっとキツかっただろうけど、俺らはブルキナを経験してたから、居心地がいいくらいに感じてたもんね」

小笠原満男選手

https://www.soccerdigestweb.com/news/detail3/id=27078

「サッカー以外の部分でも(現地の)孤児院に連れていってくれたりして、僕たちがどれほど裕福な環境でサッカーをやれているのか、というのを学ばせてもらった」

──トルシエ監督の存在は大きかったわけですね。

「かなり大きいです。僕にとっては、歴代代表監督の中でトップですね。日本人って怒られることがイヤだけど、フィリップはその怒り方がうまい。愛情を持って自分たちに言ってくれていた~後略~」

小野伸二選手

https://news.livedoor.com/article/detail/15911598/

*2:1999年4月のナイジェリアでのワールドユース<現U-20ワールドカップ>とその2か月 前に行なわれたブルキナファソ合宿。ワールドユースでは史上初の準優勝。

――――――

フィリップ・トルシエ氏略歴

フィリップ・トルシエ(Philippe Troussier)

1955年3月21日、パリ生まれ。

プロのサッカー選手としてフランス国内リーグ所属後、28歳で監督業に転向。1989年にアフリカのコートジボワールに渡り、一部リーグのアビジャンASEC監督就任。1993年コートジボワール代表監督。その後モロッコのリーグチーム、ナイジェリア、ブルキナファソ、南アフリカ代表監督を経て1998年に日本代表監督に就任し訪日。U20代表、U23オリンピック代表監督を兼任。1999年U20W杯準優勝、2000年シドニー五輪ベスト8、アジアカップ優勝、2001年コンフェデ杯準優勝。2002年のW杯で日本代表を史上初のベスト16に導き退任。

その後、カタール代表監督、フランス1部リーグのオリンピック・マルセイユ監督、モロッコ代表監督などを歴任し、訪越前は中国サッカー・スーパーリーグの重慶当代力帆足球倶楽部のスポーツディレクター。2018年8月よりPVF(ベトナムサッカー才能育成基金/Promotion fund of Vietnamese football talents)の技術統括ディレクター。ハノイ市在住。

Twitter:https://twitter.com/sol_beni_3_4_3

次回(中編)は、ペナルティキックや、2018年W杯における日本代表のサムライ魂についてです。

【Text & Photo by Miwa ARAI(ライター)】

前へ   1   2   3   次へ
※VIETJOは上記の各ソースを参考に記事を編集・制作しています。
© Viet-jo.com 2002-2025 All Rights Reserved 免責事項

この記事の関連ニュース

 日本サッカー協会(JFA)は10日、元日本代表監督のフランス人サッカー指導者であるフィリップ・トルシエ...
 ベトナムサッカー連盟(VFF)はハノイ市にあるVFF事務所で9月9日、日本人サッカー指導者の足達勇輔氏(58...
 J1川崎フロンターレとベトナム1部ベカメックス・ビンズオンFCが協力して開催する「
 日本サッカー協会(JFA)は23日、AFC U-19選手権2020予選(兼U-20ワールドカップ2021・アジア1次予選)に臨...
 ベトナムサッカー連盟(VFF)と地場系コングロマリット(複合企業)の)ビングループ[VIC]
 U-16日越国際交流サッカー大会「Future Football Project U16−Future Football tournament in NARA」が...
(※本記事はVIETJOベトナムニュースのオリジナル記事です。) 前編 →
 奈良テレビ放送株式会社(奈良県奈良市)と一般社団法人 奈良県サッカー協会は8月29日と30日に、奈良市内...

新着ニュース一覧

 日越文化交流イベント「2025ベトナムフェスティバルin愛知 名古屋」が、11月8日(土)と9日(日)の両日、...
 ホーチミン市で4日、「サイゴンの文化遺産」をテーマにした2階建て観光バスが運行を開始した。サイゴン...
 ベトナム株式市場は7日の取引で、アジア主要市場の中で最も大きく下落した。VNインデックスは前日比▲43...
慣れない海外生活、急病や事故
何かあってからでは遅い!
今すぐ保険加入【保険比較サイト】
 混み合う大学の中庭で、身長110cmのグエン・ティ・フオンさん(女性・23歳)は、まるで小学生が足早に歩...
 政府は、台風13号(アジア名:カルマエギ、日本では台風25号)で被災地となった南中部地方のクアンガイ省...
 ベトナム国家民間防衛指導委員会は7日朝、6日夜に南中部に上陸した台風13号(アジア名:カルマエギ、日...
 ホーチミン市建設局傘下の11区建設投資プロジェクト管理委員会は4日、同市フート街区(旧11区)のフート...
 韓国の食品製造会社であるサムファF&C(Samhwa F&C)はこのほど、自社で展開するフローズンヨーグルトの...
 ベトナムIT最大手のFPT情報通信[FPT](FPT Corporation)は、ドイツのフラ
 ベトナム航空[HVN](Vietnam Airlines)は6日、独自ブランドの香り「ニャー
 計画投資省海外投資局(FIA)が発表した海外直接投資(FDI)に関するデータによると、2025年1~10月期のFDI...
 ハノイ市人民委員会主席のチャン・シー・タイン氏が5日、党中央執行委員会によって中央監査委員長に選...
 ハノイ市の国家展示センター(VEC)で開催された「秋季フェア」で、トゥアンギア製造組立(Tuan Nghia)が...
 ホーチミン市建設局によると、同市コンダオ特区(コンダオ諸島)で初の電気バス路線が12月初旬に運行を開...
 格安航空会社(LCC)最大手ベトジェットエア[VJC](Vietjet Air)は、11月11
トップページに戻る