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「象の足」と共に生きる女性、母親としての願い

2022/03/27 10:35 JST配信
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 雨季には雨漏り対策でベッドの上部に防水シートを張らなければならなかったが、夏の夜は壊れたタイルの隙間から月と星を眺めることができた。がらんとした部屋の中に貴重品は何もなく、2人にとって困難な生活を満たすことができる唯一のものは、愛だけだった。

 2009年に第1子となる娘のキム・アインちゃんが誕生した。子供の笑い声で家の中はにぎやかになり、生活の苦しさや悲しみは減っていった。2012年、ティンさんは2人目の子供を授かった。しかし、出産の準備を進めていた矢先に、突然夫のティエンさんが亡くなった。

 ティエンさんが亡くなった2週間後、ティンさんは家に残っていた80万VND(約4200円)をカバンに入れて病院に行き、出産した。第2子のトゥー・ハーちゃんは無事に生まれたが、父親の顔を知らない。

 1人で2児を育てるため、広さ720m2程の畑作業に加えてハスの実の皮を剥く仕事にも出かけ、ティンさんは毎日3~4時間しか眠らなかった。以前はティンさんの母親が畑作業を手伝ってくれていたが、夫のティエンさんの1周忌の直後に母親も亡くなり、ティンさんの足も日に日に腫れて痛むようになってきたため、畑は放置せざるを得なくなった。

 稲を植えることができず、親子3人は米を買わなければならなくなった。蓮の実の皮を剥く仕事は1日2万VND(約106円)程度の収入で、それ以外に国から支給される障害者手当70万VND(約3700円)に頼る生活を送っている。

 毎日の食事は村の人が安く売ってくれる数切れの豆腐と野菜だけだ。以前は3羽の鶏を飼っており、法事などの際には食事が豪華になった。その度に2人の子供は大喜びで、母親のため息を聞きながら台所の隅で忙しなく食べていた。

 リュウガンの季節になると、ティンさんはリュウガンの皮を剥く仕事にも出かけ、日中では時間が足りず家に持ち帰って夜も仕事を続ける。「座り続けると足がとても痛くなりますが、米櫃が空になることを考えると心配で、自分を奮い立たせています」とティンさん。

 今年、ティンさんの娘はそれぞれ13歳と9歳になり、学校から帰るとハスとリュウガンの皮を剥いて母親の仕事を手伝っている。この仕事の稼ぎで、食費の他にティンさんの薬代も賄っている。母親が体調を崩して稼ぎがない日々は、姉妹は冷たい白米にヌクマムだけの食事を取ることもある。

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