1人に付き2500万ドン(約17万5000円)の手数料を納め、半年以上英語と中国語の勉強をしてSadaco社からマレーシアに派遣された45人のベトナム人労働者は、木材加工業に従事すると聞かされていたが、実際に彼らに与えられた仕事はトイレ掃除だった。
トイレ掃除は一日12時間から14時間にも及び、薬品を使用するため健康に障害をきたす者もいた。このような状態が3ヶ月も続いたが、その間彼らが手にした月給は日本円にしてわずか2700円だった。そして、マレーシア企業からはトイレ掃除を2年間我慢すれば木材加工業で使ってやると非情な宣告がなされ、驚愕した労働者がSadaco社に連絡しても全く誠意ある対応が見られなかったため、何人かは自費で帰国した。
Sadaco社は彼らに対して手数料の返還を約束しているが、一向に実行に移す気配もない。今回の事件では労働者ばかりでなくその家族も大変な痛手を負うことになった。大半の労働者の家族はマレーシアで支払われる給料を当て込んで、莫大な借金をしSadaco社に手数料を支払ったものの、マレーシアでの労働がフイになった今、彼らに残るのは借金のみである。中には兄弟姉妹の学費を払うこともできなくなったり、借金返済のため一家離散の憂き目にあったりしている家族もある。