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71歳のディン・ロンさんは、自分のほうがまだ元気だからとがんを患いながらも毎日お金を稼ぎに出かけ、同い年の親友であり、記憶を失ったルオン・フイン・タイさんの世話をしている。タイさんにとって、ロンさんの存在は唯一残った記憶だ。
タイさんとロンさんは、ホーチミン市フーニュアン区の南北統一鉄道の線路脇にある小さな部屋に2人で暮らしている。部屋は数m2の広さしかなく、小さなマットレスと古びたテレビ、扇風機、その他雑多なものだけが置かれている。
2人はかつてのサイゴンで出会った。当時は現在の学年でいう6年生(中学1年生)だった。その後はしばらく会わない時期もあったが、社会人になると2人ともサイゴンに残り、当時はまだ他にも何人か友人たちがいたため、たまに会ってはお茶をしていた。
今から約10年前、タイさんが足を骨折してしまった時にロンさんが看病をした。以来、独身の2人はホーチミン市2区の貸し部屋で同居を始め、あちこちに引っ越した後、現在の住まいに落ち着いた。今の家賃は月200万VND(約9700円)だ。
2019年、タイさんは胆嚢摘出手術を受けた後から記憶力が低下していった。それからタイさんはめったに言葉を発さなくなり、1日中部屋で寝転んでテレビを見るだけになった。不思議なことに、他のことは覚えていられないタイさんだが、唯一ロンさんのことだけは覚えている。