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「君たちは、もっとできる」ベトナム女子サッカー井尻明監督インタビュー

2020/03/15 06:00 JST配信
(C) Miwa.A
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―――日本人とベトナム人選手の違いは。

指示に対しての取り組み方がとても真面目です。指導者の指示は絶対で、選手たちは真剣にやる。ただ、それが行き過ぎるといつでも指示を待っていることにもなり、自分で判断して自己責任で行動する“個の力”が出づらい。日本でもまだこういう傾向はありますね。

もう一点は、あきらめの早さです。例えば試合で負けている時、僅差やライバル国なら頑張るのですが、大きな点差があったり、強豪相手となると“もう無理だな”とすっかりあきらめてしまう。何とかひっくり返そうとがむしゃらになれない。選手だけでなく、コーチや監督もです。ここは、私は変わってほしいと強く思っています。

―――確かに、日常生活でもその傾向はあるように思います。

この国の戦争経験の影響もあるかもしれません。しかし、私は、今の世代については、あきらめる要因はないと思っています。やり方を変えれば、もっともっと強くなれる。東南アジアリーグだけでなく、アジアリーグでも結果を残せると考えています。これは精神論や根性論ではなく、論理的に可能だと言っているのです。

例えば、「ベトナム人は華奢で体力がないから試合後半でスタミナが持たない、それは仕方ない」というような説明をよく受けるので、私はデータをとって分析しました。日本人選手と比べても、体力そのものにそれほどの差はない。試合中の動きや走り方を変えれば、相当もたせることができるはずです。やり方次第で、多くのことが変わっていくはずなのです。



自ら見本を示し、選手と一緒にピッチを走りながら教える


―――とはいえ、井尻監督は、ベトナム女子サッカー界において、現在たった一人の外国人指導者で、選手もコーチも監督も全員ベトナム人ですよね。

ベトナム人の優しさのようなものもあって、意見を言うと“そうですね、わかります”となり、反論がなく討論にならない。彼らのモチベーションを上げ、練習方法の改革を実践していくには、“一人対全員”の状況は、確かに簡単ではないです。

―――なかなか厳しい“完全アウェー”ですが、ストレスであきらめたくなることはないですか。

私はストレスフリーですよ。まず、“自分や日本の常識はベトナムの非常識”と受け入れる(笑)。自分の理想と現状のギャップに固執しない。1年経ち、だんだんとわかってきました。なぜ、どうして、は鈍感力でカバーしようと。この状況において出来ることは何かにフォーカスする。実際、疑問や気づきは多々あります。でもそのエネルギーを自分が今日出来ることを確実にやる、ということに向ける。自分がストレスを抱えていて、状況が良くなっていくことはないですから。

―――サッカーの何が、生涯をかけるほどの魅力なのですか。

サッカーは手でなく足でやるスポーツで、思うようにボールを扱うのは難しい。だからうまくできると単純に嬉しい。また、仲間とパスをつなげてチームでやり遂げる喜びもあります。そして、自由さ。サッカーは監督のサインに従ってではなく、選手個々の判断で動く。自分で決めて自分が動き、自分が責任を持つ。その場、その瞬間、選手は絶対的に自由なんです。サッカーはユニバーサルなスポーツで、それを軸に知らない世界に出会えます。私が指導する子たちには、生涯サッカーを好きでいてほしいなと願っています。プロになってもならなくても、サッカーが、一人一人の人生の中の“楽しいこと”の一つになってほしいと思っています。





U15代表選手たち

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