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【第65回】ベトナムの景気はどれだけ悪いのか?- モバイルワールドのIR資料による景気分析

2023/05/29 17:00 JST配信

最近のベトナムは経済の調子が良くなく、メディアでも経済悪化を示唆する数値が並んでいます。 第 1 四半期の GDP 成長率が当初の予想よりも大きく下回っただけでなく、不動産・輸出・製造業などの業界において特に、ネガティブな業界ニュースを多く目にします。

ベトナムの小売大手グループのモバイルワールドインベスターグループ(MWG)の財務データを分析することで、現在のベトナム消費者小売市場の現状について分析してみました。ご存知のとおり、モバイル ワールド グループはベトナムの小売大手で、特に IT・家電製品・生鮮食品などの分野における小売大手です。 彼らは、Th? Gi?i Di Đ?ng、Đi?n máy Xanh、Bách Hóa Xanh といった人気のモダントレードチェーンを展開しています。 現在、全国に5,500店舗以上を展開している同社の売上状況は、ベトナムの消費者小売事情を理解する上で非常に有益なデータです。

MWG は財務情報をタイムリーかつ詳細に共有してくれる稀有なベトナム企業の 1 つでもあります。彼らのIRデータからグループ業績を四半期ごとに見ると、2022年下期以降グループ事業は厳しい状況に直面していることが理解できます。 IR報告書でも「需要が予想を下回ったため、大幅な減収減益となった」とも述べているだけでなく、 2021年には過剰な拡張がなされていたBach Hoa Xanhの店舗縮小なども要因として挙げられます。

彼らのデータを事業毎に分析することで市場の現状がより明確に見えてきます。 下記のグラフは、グループ別の平均月間売上高を米ドルで推定した分析なのですが、 電子製品やIT製品を販売するTh? Gi?i Di Đ?ngとĐi?n máy Xanhの売上高は、それぞれ34%と31%と前年比で大きく下落しています。 一方、生鮮食品や日用品を販売するBách Hóa Xanh社の売上は前年を上回っていることがわかります。この顕著な二つのデータを見ると、 消費者が必需品に重点を置き、家電・ITなどの高額商品の購買を躊躇っている様子が読み取れるかと思います。猛暑によりエアコンだけは売上が非常に好調のようです。

同様の鈍化傾向は自動車販売や高級品にも見られます。 VAMA(ベトナム自動車製造協会)によると、今年1月から4月の自動車販売は34%減少しているようですし、ベトナムで宝石などを取り扱う PNJ の売上も「不調な市場状況」によって、2023 年の1月から4月までの売上高は6.6% 減少し、4 月の売上高は 推定値で17% も減少しています。

こうした状況を見ると、ベトナムの市場環境は、特に非必需品カテゴリーにおいて厳しい状況に面していることが理解できます。一方で、 必需品のカテゴリーであっても、全体的な価格の上昇により、消費者はより賢くお金を使うようになっており財布の紐を引き締める傾向にあります。ベトナムは中期的には東南アジア随一の経済成長を遂げると期待されており多くの企業が期待を寄せていますが、一方で、今後数か月間に限っては市場の状況は厳しい状況が続くのではないでしょうか。

著者紹介
株式会社Asia Plus代表取締役社長 黒川賢吾

株式会社Asia Plus ( www.asia-plus.net )代表取締役社長。
NTT、ソニー、ユニクロにて海外マーケティングを担当。
2014年にAsia Plusを設立しベトナムマーケットリサーチサービス
「Q&Me( www.qandme.net )」を展開中


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