VIETJO - ベトナムニュース
印刷する | ウィンドウを閉じる
[コラム]

【第64回】ベトナムの平均年収:業界別に徹底分析【未来を創るベトナムビジネス】

2021/04/07 05:41 JST更新


 一般に平均年収は経済成長に比例して変わっていくとされる。ベトナムも、近年の目覚ましい経済発展に伴って平均年収も上昇傾向にあるが、他の国と比較するとまだ低い水準に抑えられている。

 これを背景に、多くのグローバル企業は、製造や営業の拠点をベトナムに置く例が増えてきている。例えば、ゲーム機メーカー大手の任天堂は「ニンテンドースイッチ」の生産の一部をベトナムで行っている。また米アップル社(Apple)もワイヤレスイヤホン「エアポッズ(AirPods)」の生産拠点をベトナム北部に設置した。

 このように製造拠点として非常に注目されているベトナムだが、今回は、統計データを基にベトナムの平均年収がどのように変わってきたのか、また平均年収が最も高い業界はどこなのかについて見ていきたい。


1.ベトナムの平均年収は約41万円


 ベトナム統計総局のデータによると、2019年のベトナム国内の平均年収は41万円となっている。2010年から2019年までの推移を見てみると、2010年には18万4000円だったことから、10年間で約2.2倍に上昇したことがわかる。

 この平均年収の推移をベトナムの国内総生産(GDP)と並べてみると、以下のようなグラフになる。


 おおよそベトナムの平均年収の推移とGDPの推移とが重なっていることが分かる。

 GDPは国内で生み出された付加価値の合計を指す。生産・支出・所得は同じ金額になるという「三面等価の原則」にもあるが、付加価値が上昇するということは所得もその分上昇すると考えることができる。


2.最もベトナムで平均年収が高い業界は?

 ここでは、業界別の平均年収を見ていきたい。時期は公開されている2019年のデータで統一している。


 平均年収が最も高い業界は「金融・銀行・保険業」となっている。続いて「発電・配電・ガス等」、そして「情報通信業」となっている。先ほど紹介したように、全業界の平均年収が41万円であることから、「金融・銀行・保険業」の平均年収はそれより約35%高いことになる。

 以下で、上で挙げた3つの業界の平均年収が高くなっている理由について解説していく。

1:金融・銀行・保険業

 ベトナムの金融セクターではもともとモノバンク・システムという制度が敷かれていた。モノバンク・システムとは国家銀行(ベトナムの場合は、ベトナム国家銀行=中央銀行)が、中央銀行業務と商業銀行業務の両方を担うというシステムだ。

 ドイモイ政策によって1988年にこのモノバンク・システムが解体され、二層銀行制(中央銀行と商業銀行の分離)へと移行したが、分離された商業銀行に対してもベトナム政府が大きな影響力を持っている。

 例えばベトナム最大手のメガバンクであるベトコムバンク[VCB](Vietcombank)も2006年に民営化されたが、今でもベトナム中央銀行が半分以上を出資している。

 こうしたベトナムの金融セクターの歴史によって、ベトナムの金融機関、特にメガバンクはほとんどが元国営であることから規模が大きく、年収も非常に高くなっている。

2:発電・配電・ガス等

 ベトナムの電力セクターは国営のベトナム電力グループ(EVN)が非常に大きなシェアを占めている。電力事業は大きく発電・配電・送電の3つの事業に分けることができる。発電事業ではEVN以外の民間企業の参入が可能だが、配電・送電は現在のところEVNの独占業務となっている。

 このような背景に加えて、電力・ガスセクターへの参入には多額の設備投資が必要となることからも、新規参入が難しいセクターであると言える。こうした事情により、同セクターの企業は安定した利益を確保することができており、それが年収にも反映されていると言えるだろう。

3:情報通信業

 現代は「IT/ICTの時代」とも言われており、インターネット、スマートフォンなしでの生活が想像できなくなるほど、人々の生活に情報通信技術が浸透している。ベトナムでも事情は同じであり、ICTセクターは技術・売上ともに急成長を遂げている。

 情報通信業の中でも特にITエンジニアの職種は、常に需要が供給を上回っている状態であり、優秀なベトナム人ITエンジニアの収入は先進国とも並ぶレベルになっている。今後は情報通信業の平均年収が他の業界を抜いてトップになる可能性も十分に高いと考えられる。


3.ベトナムの平均年収は地域によっても異なる

 日本でも都市部と地方では人々の収入に差があるように、ベトナムでも収入の高い仕事はハノイ市やホーチミン市といった都市部に集まる傾向がある。ベトナムの地方では主たる産業が農業・林業・水産業であることが多いが、図表にもあるように農業・林業・水産業セクターの平均年収は全業界で最下位となっている。

 またベトナムでは地域別に最低賃金が定められているが、都市部に比べて地方では最低賃金が低めに設定されていることも、地域によって差が出る原因となっている。そのため、特に若者がより良い仕事、より良い収入を求めて地方を離れて都市部へ移っていく現象がベトナムでも起こっており、ベトナムの都市流入率は今後も上昇していくと考えられている。


4.ベトナムの平均年収は業界・職種で差があるものの上昇傾向

 ベトナムの平均年収はGDPの成長と比例する形で継続して上昇してきた。全体の平均年収は41万円だが、業界や地域によって差があることも、本レポートで確認した。

 冒頭でも述べたように、多くの企業がベトナムに製造拠点を移管する動きを強めている。もちろん賃金の低さというのもこの動きの一因だが、それ以上にベトナム人が仕事に非常に真面目に取り組み、手先も器用であり、労働力の質がとても高いというメリットもある。 

[]
© Viet-jo.com 2002-2021 All Rights Reserved.


このサイトにおける情報やその他のデータは、あくまでも利用者の私的利用のみのために提供されているものであって、取引など商用目的のために提供されているものではありません。弊サイトは、こうした情報やデータの誤謬や遅延、或いは、こうした情報やデータに依拠してなされた如何なる行為についても、何らの責任も負うものではありません。

印刷する | ウィンドウを閉じる