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ホウオウボク / Phượng~ベトナム花図鑑(2)~

2016/06/10 JST配信
|[日] ホウオウボク(鳳凰木)、カエンジュ(火炎樹 / 火焔樹)
[越] Phượng(フオン〔鳳〕)、Phượng vĩ / Phượng vỹ(フオンヴィー〔鳳尾〕)、Xoan tây(ソアンタイ)、Điệp tây(ディエエプタイ)
[英] Flamboyant, Flame tree, Royal Poinciana, Mohur tree
[学] Delonix regia(マメ科)
[原産] マダガスカル島
[分布] 熱帯・亜熱帯地域
[ベトナム国内分布] 全国
[開花時期] 南部:3~7月、北部:5月|

冒頭画像はコンダオ島空港で撮影, (C) NgBK
 

熱帯三大花の一つ


北部から中部にかけて、夏を迎えた5月頃燃えるように美しく咲き誇る花をあちこちで見かけるようになります。 和名でホウオウボク(鳳凰木)、ベトナム語では一般的にPhượng(フオン〔鳳〕)またはPhượng vĩ / Phượng vỹ(フオンヴィー〔鳳尾〕)と呼ばれる木の花、Hoa phượng(ホアフオン、Hoa=花)です。 炎が燃えるように咲くさまから英語で「Flamboyant」(燃えるような)と名づけられ、日本語でもしばしば「カエンジュ(火焔樹 / 火炎樹)」と訳されています。(注:カエンボク〔火焔木〕とは別種)


(C) NgBK

ホウオウボクは、 カエンボク(火焔木) ジャカランダ(Jacaranda) とならんで、 熱帯三大花木の一つ に数えられています。

ベトナムには19世紀末にフランス人の手により、まずハイフォン、ダナン、サイゴンに移植され、その後全国に広まっていきました。特にハイフォンは「thành phố Hoa phượng đỏ(赤いホウオウボクの花の都市)」と呼ばれるほど、あちこちにコウエンボクの木が植えられています。(花見スポットは コチラ を参照)

熱帯・亜熱帯各国で広く植えられています。日本近くの台湾にも19世紀末に伝えられ、台南市や廈門市の市樹となっているそうです。日本では、沖縄県で見ることができます。


(C) NgBK, ベトナム最後の皇帝バオダイ帝のニャチャン別荘に咲くホウオウボクの花
 

日本の「さくら」のような存在


5月になると咲くこの花は、日本の「さくら」のような存在かもしれません。 5月はベトナムの卒業シーズン 。この花を見ると、友との別れ、そして新しい出発の思い出が蘇る人が多いようです。ネットを覗いてみると、女学生を象徴する白いアオザイ姿でホウオウボクの木の下で撮影した記念写真 があふれています。燃えるような白と清純な白の対比が美しいです。花の寿命は桜より長く、2週間ほど見ごろが続きます。

また、5月は気温がぐっと上がり本格的な夏の始まり。夏の訪れを知らせる花でもあります。学生にとっては学年末試験や卒業試験、大学入試のシーズンでもあるため、この花を見ると苦労した思い出が蘇る人も多いかもしれません。


(c) VIETJO Life, ホーチミン市7区の幼稚園に植えられたホウオウボク

各学校の敷地内には、必ずといっていいほどこのホウオウボクの木が植えられています。


(C) VIETJO Life, ホーチミン市3区レクイドン中学校のホウオウボク

なお、気温の変化が殆どない南部では、3月から7月ぐらいにかけて咲いているのを目にしますが、木ごとに開花時期がばらばらで、一つの木の花でも一斉に開花するわけではない感じ。北部や中部のように樹木全体が燃えるように咲く姿を見かけることはあまりません。

Three seasons theatrical poster US.jpg
By Source, Fair use of copyrighted material in the context of Three Seasons

日本でも公開された米国籍の越僑(在外ベトナム人)トニー・ブイ監督の映画 『季節の中で(Three Seasons)』 では、この花が人生の新しい出発の象徴として用いられています。サイゴンに住む主人公の娼婦が、真っ白なアオザイを身にまとい、ホウオウボクの花が咲き乱れる並木道の下に立つシーンは美しいだけでなく、重要な意味を持っています。ベトナム人にとってこの花と白いアオザイが何の象徴であるか知っているか知らないかで、感動が違ってくると思います。但し、映画の舞台であるホーチミン市で、このシーンのように花が一斉に咲き誇る並木道を見たことがありません。


(C) NgBK, ホーチミン市1区トンドゥックタン通りの運河沿いのホウオウボク
 

ホウオウボクの特徴


ホウオウボクの木の高さは10~15m。葉はオジギソウと同じような羽状複葉と呼ばれる細かい葉が枝の両脇に並んでいます。 ネムノキ と同じように、夜になると葉を閉じます。


(C) VIETJO Life

ベトナムには似たようなマメ科の木がたくさんありますが、ホウオウボクの枝は外側に大きく広がり、枝先が下向きに下がる形をしており、剪定しなければ枝全体がきれいな傘状になります。花が咲いていなくてもこの枝振りで他の木と見分けることができると思います。


(C) NgBK

花は直径10cmほどで、5弁の花びらがついています。花が蝶のような形をしていることからĐiệp tây(Điệp=蝶、tây=西、フランス人によってもたらされたので)とも呼ばれます。5つある萼(がく)の色も内側があざやかな赤色なので、花弁が10枚あるかのように見えます。


(C) NgBK

花びらの一つが白いですが、これは虫をおびき寄せるためなのだとか。受粉が完了すると赤っぽく変色し、花びらのふちが内側に丸まって、白い部分が見えなくなります。これは、まだ受粉していない他の花へ虫を導くためだと思われます。


(C) VIETJO Life

花が終わると、緑色の細長い鞘ができます。大きいものは長さ60cm、幅5cmほどになり、熟すと黒っぽい茶色に変色します。


(C) VIETJO Life, ホウオウボクの鞘(50cmぐらい)


(C) VIETJO Life, 鞘は分厚く硬い

鞘の中には細長い黒い豆(種)が入っていますが、非常に硬く、ベトナムでは特に用途がないため、木の枝にいつまでもぶら下がったままになっています。カリブ海の国々では、マラカスの中に入れる玉として使用するそうですよ。


(C) VIETJO Life, 豆(種)が取れた跡

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