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ベトナム人が帰省や旅行などで遠出をするときに利用する主な交通手段は、長距離バスです。飛行機や鉄道と比べて運賃がずっと安く、複雑な手続きも不要なため多くの人が利用しています。バスの車窓から田舎の風景やローカルの人々の暮らしを眺めながらの旅、なかなかおもしろいですよ。
今回は、ホーチミンからメコンデルタ地方へ行く場合を例として、ローカル向けの長距離バスの乗り方についてご紹介したいと思います。利用するバスターミナルはホーチミンのビンタン区にあるミエンタイ(西部)バスターミナル(Bến xe Miền Tây:ベンセーミエンタイ)、バスはオレンジ色の車体が目印のフオンチャン(Phương Trang=Futa Bus)の寝台バスです。
ベトナムの長距離バス
ベトナムの長距離バスには普通の座席タイプのものや、日本とは少し異なる寝台バスがあります。普通の座席タイプはベトナム語で「Ghế ngồi(ゲーゴイ:Ghế=椅子、ngồi=座る)」、寝台タイプは「Giường nằm(ズオンナム:Giường=ベッド、nằm=寝る)」と呼ばれ、運賃は寝台バスの方が若干高くなりますが、大きな差はありません。4~5時間以上も乗りっぱなしになるような長距離移動の場合は、寝台バスが便利です。
寝台バスは車種によって配置が若干異なるものの、3列×上下2段で30~40人乗りが多いです。それぞれの列の間には通路がありますが、最後列のみ5席が一続きになっています。寝台バスは前の座席の下に足が入る形で足を伸ばすことができるので、座席に座るよりもずっと快適です。リクライニング式で座ることも寝ることもできます(リクライニングが壊れていて起きないこともしばしばありますが)。

(C) NgBK 最後尾2段目からみた寝台バスの車内
テト(旧正月)など年に数回しかない連休の時期には、多くの人が帰省や旅行で利用するため運賃も値上がりし、座席も満席になります。こうした時期の寝台バスは定員オーバーになっても通路に乗客を座らせて、乗せられる限り乗せます。ちなみに現在は自動車の普及によりファミリー層などが地方へ帰省するときは乗用車を利用する人が増えています。そのため寝台バスの利用者は以前と比べて単身の学生や一定以上の年齢層の人が多くなっているようです。
長距離バス会社
数あるベトナムの長距離バス会社の中でも、オレンジ色の車体が目印のフオンチャン(Phương Trang=Futa Bus) や、タクシー会社としてよく知られているマイリンエクスプレス(Mai Linh Express) などがサービスも良く、車両も清潔で外国人でも利用しやすいのではないかと思います。ちなみにこうした長距離バスを利用して、郵便や宅配便のように荷物のみを委託して輸送することもできます。
バスターミナル
ホーチミン市を例にすると、同市よりも北方面へ行く場合にはビンタイン区にあるミエンドン(東部)バスターミナル (Bến Xe Miền Đông:ベンセーミエンドン、292 Đinh Bộ Lĩnh, Phường Bình Thạnh, Thành phố HCM)、メコンデルタ地方や西方面へ行く場合にはビンタン区にあるミエンタイ(西部)バスターミナル (Bến xe Miền Tây:ベンセーミエンタイ、395 Kinh Dương Vương Phường An Lạc Thành phố HCM)を利用することになります。このほか、市内各地にバス会社の支店や代理店がありますが、乗り降りの場所も複雑なので(ベトナム人でもよく間違えます)、外国人には上記の大きなバスターミナルをおすすめします。
チケットの買い方
ミエンタイバスターミナルでチケットを買ってみましょう。門を入ると正面にチケットカウンターがあります。カウンターはバス会社ごとに分かれていて、窓に行き先と運賃が書かれています。ここで行き先と出発時刻、シートバスか寝台バスかを伝えればOK。
希望があれば、座席も指定できます。後ろのほうの座席はエンジン音がうるさいので、しっかり寝たい方は後ろを避けたほうがよいでしょう。また、一番前の座席は足を前の座席下に入れられない分座席の長さが短いので、背の高い方は一番前だと更に窮屈です。他にも1段目より2段目のほうが揺れが大きいことも知っておいた方がいいでしょう。
(C) VIETJO Life チケットカウンター
なお、事前に電話で座席をキープしておくこともできます。必要な情報は、行き先と出発時刻、名前、電話番号のみ。この場合、出発当日にカウンターで予約内容を伝えて、チケットを買います。
ただし運賃はしょっちゅう変わる上、カウンターの表示をいちいち変えることもしないので要注意。運賃を知りたい場合、カウンターの係の人に確認をしましょう。また、少なくとも出発時刻の30分前くらいまでにはチケットを買っておきましょう。
チケットには行き先(Tuyến:トゥエン)、運賃(Giá vé:ザーベー)、出発(Xuất bến:スアットベン)の日時などが書かれています。画像にある「3/2」は「2月3日」のこと。月日の書き方が日本とは逆になりますので勘違いしないように気をつけましょう。
(C) VIETJO Life チケット
出発時刻まで待合室(バス会社ごとに分かれている)かカフェで時間をつぶします。バスの乗車時刻は出発時刻の10~15分前くらいです。待合室内では一応「○○行きのバスにご乗車の方は~」というベトナム語のアナウンスがありますが、近くの係の人にチケットを見せて、自分が乗るバスを教えてもらいましょう。
バスに乗る際、大きな荷物がある場合はトランクに預けます。預ける時にはどこで降りるかを伝え、積み忘れ防止のためトランクに入れるのを見届けたほうが確実です。また、壊れやすいものや貴重品は手荷物として車内に持ち込みましょう。
チケットはバスに乗る時に係の人に渡して、半券を受け取ります。
バスの中は土足厳禁。乗降口にあるビニール袋(使い回し)に自分の履物を入れて、自分で管理します。車種によっては、座席頭部側にシューズボックスがついているものもあります。
車内での飲み物を飲むのはOKですが食べ物は基本的に禁止されています。ちょっとしたアメやガム、お菓子などは大丈夫ですが、パンや果物など車内が汚れる恐れのあるもの、匂うものは食べないようにしましょう。
次の回では、乗車時の注意点をご紹介します。
長距離バスで旅しよう(2)~乗車時の注意点~