ベトナム総合情報サイトVIETJO [ベトジョー] ベトナムの最新時事ニュースを毎日無料配信!
 ようこそ ゲスト様 

【第34回】ベトナムの医薬品市場:有望な製造拠点と消費市場の成長性【未来を創るベトナムビジネス】

2020/12/12 06:13 JST配信
Clip to Evernote

 今回の記事ではベトナムの医薬品市場について考察してきたい。ベトナムは医薬品メーカーにとっても有望な製造拠点になり得ると考えられるが、今後は長期的な人口増加・経済発展、中間層の拡大、経済発展に伴うライフスタイルの変容と疾病構造の変化といったメガトレンドから、消費市場としての成長性が高いと筆者は考えている。

 この記事では、ベトナムの医薬品市場を消費市場として捉え、今後の成長性及び、日本企業の進出形態(自社による進出、M&A、パートナー提携等)について考察してきたい。

健康水準・医療水準:糖尿病等の生活習慣病の増加

 まずはベトナムの健康水準や医療水準から見ていきたい。世界保健機関(WHO)によれば、ベトナムの平均寿命は76歳、健康寿命は66.6歳であり、先進国の水準には満たない。なお日本の健康寿命は72~74歳であり、日本とも大きな開きがある。ベトナム政府は「2030年までの人口戦略」にて、全国人口約1億0400万人、平均寿命75歳、健康寿命68歳を目標として掲げている。

 ベトナムは東南アジア諸国の中でも肥満率が低いとされているが、WHOによれば、18歳以上の人口に占める肥満者について、ベトナム人男性の肥満率は16%と2005年の3倍以上になり、女性の肥満率も24%と男性を上回る結果となった。更にホーチミン市などの主要都市の子供の肥満率も40%程度に上り、この10年間でほぼ10倍になっている。

 イメージとして肥満率が高くないように感じられるベトナムであるが、食生活の変化(ファストフードの普及、ビール消費量の多さ)、運動不足(バイク移動中心の生活)により、肥満率が高まっている。ちなみにキリンホールディングスの調査(2018年)によれば、ベトナムは世界で9番目のビール消費国であり、東南アジアでもトップのビール消費国である。

 次に、ベトナムの疾病構造・死亡要因を見ると、1990年時点では感染症の割合が26%と高かったが、2017年には感染症による死亡の割合は10.5%にまで低下した。一方で非感染症の割合は1990年の62.3%から2017年の79%にまで増え、非感染症の割合が大きいという先進国の疾病構造に近づきつつある。

 2017年時点、ベトナム人の死亡要因を疾病別に見てみると、脳血管疾患(18.4%)、虚血性心疾患(10.7%)、気管・気管支・肺癌(5.86%)、糖尿病(3.8%)、慢性腎臓病(2.8%)が上位5疾病となっており、心血管疾患の割合が大きいことが特徴としてあげられる。ベトナムでは毎年約20万人が心血管疾患で死亡しており、18~65歳の成人における高血圧率は25%に達するという調査結果もある。

 1990年から2017年にかけては、「下痢、下気道、およびその他の感染症」等の「感染症」の割合が減少し、「心血管疾患」や「新生物」、「糖尿病、泌尿生殖器、血液、及び内分泌疾患」等の「非感染症」が増加している。

 ベトナムでは経済発展に伴い、糖尿病等の生活習慣病の割合が増えており、問題となっている。ベトナムでは現在約353万人の糖尿病患者が存在する一方で、7割近くの患者が未診断であり、糖尿病が発症した患者のうち、医療機関で治療を受けたのは29%程度にとどまっていると言われている。

 今後もベトナム国内では糖尿病患者が増加するとみられ、2045年まで糖尿病患者は630万人まで増加し、現在比で+78.5%増加するという予測結果もある。経済発展に伴い、国民の所得向上が進むにつれて、食事や運動に関する日々のスタイルが変化し、疾病構造も変容しつつあると考えられる。



市場規模:医療用医薬品が市場をけん引

 イギリスの調査会社ビジネス・モニター・インターナショナル(以下、BMI)によれば、ベトナムの医薬品市場は2021年の77億USD(約8000億円)から、2026年には161億USD(約1670億円)に拡大するとの見通しを示している。

 2016年から2023年にかけてベトナムの医薬品市場は年平均成長率+11.05%が見込まれており、医療用医薬品が市場をけん引する見込みだ。一般用医薬品(OTC医薬品)については、2018年時点で15億USD(約1560億円)程度であるが、2023年には23億USD(約2400億円)まで成長を続けると予測されている。

 ベトナムの国民1人当たりの医薬品支出は2020年に50USD(約5200円)になると見込まれている。医薬品市場を目的別に見ると、心臓系(14.7%)、抗生物質(23.1%)、腫瘍(12.9%)、ミネラル・ビタミン・免疫(9.5%)、消化器系(7.5%)の順位でシェアが大きくなっている。疾病別では今後、循環器疾患、肝臓がん、糖尿病に関する医薬品の需要が高まるものと予想される。

 また、ジェネリック医薬品の市場規模が大きく、2018年の特許薬の市場規模は120億USD(約1兆2500億円)である一方で、ジェネリック医薬品の市場規模は320億USD(約3兆3300億円)に及んでいる。



市場プレーヤー:寡占化が進んでおらず、中小プレーヤーが中心

 ベトナムの医薬品メーカーのうち、売上高ベースでみると、最大手はハウザン製薬[DHG](Hau Giang Pharmaceutical)で3兆8970億VND(約177億円)。ハウザン製薬は2019年に大正製薬株式会社(東京都豊島区)の子会社となった。

 これに続いて、第2位はピメファーコ[PME](Pymepharco)の1兆8470億VND(約85億2000万円)、3位はチャファコ製薬[TRA](Traphaco)の1兆7100億VND(約77億7000万円)が続いている。

 ベトナムの製薬メーカーは外資系企業含め、ベトナム国内に約1000社が存在していると言われているが、市場プレーヤーは細分化されており、大手企業でも僅か数%の市場シェアしか獲得していない。


原材料の調達における輸入依存

 ベトナム国内で生産される医薬品のうち8~9割近くは原材料を輸入に頼っているのが現状であり、以前より輸入率の高さが課題となっている。輸入先としては中国、インドからの輸入が多く、伝統的な医薬品やジェネリック医薬品の製造に使用される原材料が輸入されている。

 欧米諸国もベトナムの主要な輸入相手国で、高度なジェネリック医薬品を製造するために使用される原材料が輸入されている。2018年におけるベトナムの主要な輸入相手国のシェアを見てみると、中国が6割、インドが2割近くを占めており、続いて、オーストラリア、スペイン、ドイツ、フランス、イタリアが数%を占めている状況だ。

進出方法の選択肢:自前での進出・M&A・提携

 こうしてみると、ベトナムの医薬品市場は長期的な成長性はあるものの、原材料調達の輸入依存といった課題があることがわかる。日本の医薬品メーカーにとっては、コスト低減の課題のため、ベトナム等の新興国を製造拠点とする進出が第一に考えられるが、今後は消費市場としてもベトナムは注目されるだろう。

 進出方法についても、自前での進出のほか、M&A、提携等、多様な選択肢が考えられる。M&Aや提携の場合は細分化されたプレーヤーのなかで、日本GMP(Good Manufacturing Practice)やEU GMPへの適合状況等が鍵になってくるだろう。

著者紹介
ONE-VALUE株式会社
代表:PHI HOA(フィ ホア)
日本本社:東京都江東区亀戸2-28-3 アセッツ亀戸 2階
ハノイ事務所:No. 21, Le Van Luong Street, Thanh Xuan, Hanoi, Vietnam
主要事業:経営コンサルティング、人材育成開発及び人材紹介、日越間のビジネスマッチング支援


■ONE-VALUEはベトナムに特化した経営コンサルティングサービスを主に提供しております。具体的にはベトナム市場参入・事業展開アドバイザリー、ベトナム市場調査、M&Aアドバイザリーを日本企業のお客様向けに提供しており、ベトナム政府・民間企業・業界団体とのネットワーク、ベトナムの各産業に関する深い知見と洞察、ベトナム進出支援の実務経験を強みとしています

■また、ONE-VALUEはエネルギー(再生可能エネルギー等)、ハイテク農業、スマートシティ、教育・人材、消費財の5分野をフォーカス分野として注力していますが、その他の分野でも積極的に日本企業のベトナム進出を支援しています

■ベトナムビジネスにご関心のある方は以下からONE-VALUEの専門家へお問合せください

■ONE-VALUEはベトナム市場動向、業界分析等の深い情報を自社ホームページ、TwitterやFacebook等のSNSに掲載しております。また、日本・ベトナム間のビジネス交流ネットワークのFacebookグループも運営していますので、こちらもお気軽にご覧ください


□HP:https://onevalue.jp/
□Email:contact@onevalue.jp
□Twitter : https://twitter.com/onevalue_vn
□Facebook:https://www.facebook.com/onevalue
□Facebookグループページ「日本・ベトナムビジネス交流会」: https://www.facebook.com/groups/779940089431088/
未来を創るベトナムビジネス
その他の記事はこちら>
© Viet-jo.com 2002-2021 All Rights Reserved. 
※VIETJOベトナムニュースは上記の各ソースを参考に記事を編集・制作しています。免責事項
©VIETJO ベトナムニュース 2002-2021 All Rights Reserved
運営:VERAC Company Limited