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【第59回】ベトナム小売市場の変化:新型コロナがベトナム消費者に与えた影響【未来を創るベトナムビジネス】

2021/03/20 05:14 JST配信
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 新型コロナウイルスが2020年3月頃から世界中に拡大して以来、ベトナムでも消費者が食料品や日用品を買いだめする動きはいくつか見られた。新型コロナ封じ込めに成功したベトナムではあるが、新型コロナの発生の結果として、トラディショナルトレードからモダントレードへの展開、電子商取引(eコマース=EC)市場の発展にも勢いが付き、ベトナムの小売市場はますます変容しつつある。

 本レポートでは新型コロナウイルスがベトナム小売市場に与えた影響について、小売チャネルごとに分析をしてきたい。

 新型コロナの発生により、2020年1~3月期において、ベトナム消費者の日用消費財(FMCG)製品への支出は急増した。このセクターでは7年ぶりに2桁の成長を遂げ、消費者が生鮮食品や日用品等、生活必需品の支出により力点を置いた。

 一方で、小売チャネルごとの消費者の嗜好は地域によって異なっている。より規模が大きい小売形態の利用可能性が高い都市部では、消費者が旅行や人との接触を制限しようとしたため、支出額は制限される結果となった。

 しかし、伝統的な小売チャネルが依然として支配的である農村地域では、消費者はそれとは逆の行動であった。全体としては、すべての小売チャネルで急速な成長が見られたが、これは、新型コロナウイルスが消費者の購入行動に大きなインパクトを与えたことを意味している。

伝統的市場・パパママショップ

 ベトナム全国では近代的なスーパーマーケットが急速に拡大している一方で、伝統的市場は依然として小売市場全体で重要な役割を果たしており、着実な成長を続けている。 2019年、伝統的市場の売上高は+4%増加し、総額1027兆VND(約4兆8000億円)に達した。

 毎日の食料の予算を立てて、少量ずつ購入する必要がある多くの地方の消費者や低所得の都市部の消費者にとって、地元の伝統的市場やパパママショップ(個人商店)などの伝統的小売店は生活に根付いており、モダントレードに代表されるスーパーマーケットなどは一般的に認識されている以上に高価と認識されている。

 最近では、より多くの伝統的市場やパパママショップも店舗に関するインフラストラクチャを改善し、より高品質な製品を揃えるようになった。現代の消費者のスタイルに合わせて販売戦略を立てている。

コンビニエンスストア

 近年、コンビニエンスストアはベトナム全国で急速に拡大しており、2019年の売上高は+18%と堅調に伸びており、市場規模は4兆4000億VND(約207億円)に達している。主要なプレーヤーは、ファミリーマート(Family Mart)、サークルK(Circle K)、ビーズマート(B’s Mart)などで、市場シェアはそれぞれ21.4%、20.7%、9.6%となっている。

 コンビニエンスストアのみならず、伝統的市場とパパママショップは消費者からアクセスのよい立地が重要となる。ただし、コンビニエンスストアは従来の小売業とは異なり、近代的な設備、すぐに食べられる食料品の品揃え、若い都市の消費者が魅力と感じる電子決済などのデジタル支払い方法で差別化される。

 新型コロナにより、通常はオンラインやコンビニエンスストアで製品を購入しない消費者が利用するようになっている。その結果、2020年3月には、オンラインとコンビニエンスストアの両方で買い物客の数がピークに達した。コンビニエンスストアのプレーヤーにとって、新しい消費者が市場に参入することを意味し、拡大を推進するよい投資機会のタイミングとなっている。

スーパーマーケット・ハイパーマーケット

 新型コロナの発生前、ベトナムのハイパーマーケットは、店舗数と延床面積から市場の拡大と売上高の点でやや安定しているように感じられるが、実際のところ、2019年には約▲0.2%減少していた。

 この理由の1つは、ハイパーマーケットは通常、住宅エリアの近くに立地しておらず、延床面積が大きく、これらのエリアでは賃貸料が比較的高いため、都市部の消費者は便利な場所にあるスーパーマーケットやコンビニエンスストアを好むという傾向がみられた。

 ハイパーマーケットへの訪問は、通常、ホリデーシーズンなど、大量に購入するニーズがあるときによく行われる。このセグメントの主要なプレーヤーには、ビッグC(Big C)、ロッテマート(Lotte Mart)、コープマート(Co.op Mart)、イーマート(E-Mart)が含まれ、タイのビッグCが57.6%の市場シェアで市場を支配している。

 一方、スーパーマーケットのセグメントは、コープマートやバックホアサイン(Bach hoa XANH)などのローカルプレーヤーによって支配されており、それぞれ43%と14%の市場シェアでリードしている。過去4年間における一貫した成長は、主に地元市場への深い理解と自社ブランド製品の人気の高まりに起因する可能性が高い。

 新型コロナの発生において、ハイパーマーケットやスーパーマーケットを含むモダントレードの成長は、トラディショナルトレードの成長を上回っている。これは、提供する製品、ブランド、サイズが多種多様であるためだ。

 これにより、ベトナムの消費者は、必要なものすべてを1つのショップで購入できるという利便性を享受することできた。この新型コロナ禍において、ベトナムの消費者は以前よりも頻繁にハイパーマーケットやスーパーマーケットを訪れ、平均して10日ごとに購入している。

EC市場

 ベトナムで最も急速に成長しているデジタル経済の1つとして、EC市場が挙げられ、2016年から2019年までの4年間で推定10億USD(約1090億円)の市場規模に達しているという。現在、ベトナムで最大の都市であるハノイ市ホーチミン市は、ECのトランザクション全体の約70%を占めている。

 主要なプレーヤーには、ラザダ(Lazada)、ショッピー(Shopee)、ティキ(Tiki)、テーゾイジードン(Thegioididong)、センドー(Sendo)があり、ショッピーは月間合計ウェブトラフィックの約16.8%のシェアで1位を占めている。

 それにも関わらず、食料品は、新型コロナ以前の時代においては人気のあるオンライン購入の分野ではなかった。電子機器とメディア製品、およびファッション製品は、最も購入されたECカテゴリの上位2つであった。

 新型コロナの発生により、以前はオンライン食料品の買い物や電子決済に興味がなかった多くのベトナムの消費者も電子商取引を行った。オンラインで買い物をすることで、フェイスマスクを着用する必要がなく、または物理的に買い物をしたり、列に並んだりするときにガイドラインを遵守する必要もなくなった。

 これにより、通常はECセクターの主要製品ではない食料品のオンライン需要が急増した。たとえば、ショッピーのプラットフォームでは、ベトナムの消費者が新型コロナの発生後、食料品やその他の日用品の購入を検討するため、買い物に費やす時間が25%以上増加した。プラットフォームで最も人気のある購入品には、メイク落とし、スマートフォン、ミルク、おむつ、鍋やフライパンなどがある。

 オンライン食料品小売の需要の高まりに応えて、いくつかの非伝統的な小売業者も市場に参入する機会を掴んでいる。たとえば、ライドシェア大手のグラブ(Grab)は、2020年3月23日にベトナムで食料品のECプラットフォームであるグラブマート(GrabMart)を立ち上げた。

 実際、新型コロナ禍で多くのベトナムの消費者が身に付けたオンラインショッピングの新しい習慣は、EC市場のプレーヤーが適応する必要のある恒久的な変化になる可能性が高い。

 新型コロナの発生はベトナムの小売市場に大きな影響を与え、消費者の行動や嗜好はアフターコロナで元通りになるということも考えにくい。企業はベトナム消費者への理解をさらに深めていく必要があるだろう。

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