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中秋節~ベトナムの旧暦8月15日~

2016/09/15 JST配信
日本では、旧暦8月15日を「十五夜」と呼び、お月見を楽しむ習慣がありますね。これは中国の「中秋節(ちゅうしゅうせつ)」が由来となっていますが、ベトナムにもこれが伝わり、同じく「中秋節」= 「Tết Trung thu(テットチュントゥ=節中秋)」 と呼ばれています。Tết Thiếu nhi(テットティエウニー=節小児、子供の節句)、Tết trông Trăng(テットチョンチャン、月見節)、Tết Đoàn viên(テットドアンヴィエン=節団員、人が集る節)などとも言われます。

(C) VIETJO Life

元々は中国や日本と同様、月を愛でる日だったのですが、ベトナムでは「Tết Thiếu nhi〔節小児〕」と言われているように、 現在は子供のための日 となっています。子供の日とされるようになったはさほど古くないようで、一説によると、故ホー・チ・ミン主席が毎年中秋節に全国の子供たちに手紙を送っていたことから、徐々に子供のための日という認識が広まっていったようです。そのため、中秋節が近づくと、貧しい子供たちに玩具や学用品などを配布するボランティア活動が盛んに行われます。
 

中秋節の由来


中秋節の発祥についてははっきりしていないようですが、その起源は中国の春秋戦国時代(紀元前770~紀元前221年)にまで遡るようです。元々は収穫を喜び、収穫後の一休みという意味合いがあったと考えられ、日ごろの労をねぎらい、家族でゆっくり過ごす日とされたようです。

ベトナムの中秋節の習慣に関する19世紀ごろの記録によると、祖先にお供えをした後、宴会をしながら月を愛でる習慣があったようです。お菓子や果物もたくさん用意され、女の子たちはパパイヤを削って花を作ったり、米粉を練ってエビや魚を作ったりして、手先の器用さを競い合ったり。また、子供たちは馬や魚、蝶々など様々なものを紙で作って遊んだり、綱引きをしたり、夜になると灯篭と太鼓、銅鑼を手にもって村を練り歩いたりしたのだそうです。

現在の習慣では、祖先に特別なお供えをしたり、宴会をしながら月を愛でる姿はあまり見られなくなりました。この時期のベトナムは全国的にあまりお天気が良くないので、月見には適していないということもあるのかもしれません。
 

灯篭行列と子供のイベント


中秋節といえば、19世紀の記録にもあった灯篭(提灯)がつきものです。昔は紙製が一般的でしたが、現代になると灯りがきれいに見えるセロファンが登場。昨今は、乗り物やキャラクターものの電気仕掛けで音楽が鳴るプラスチック提灯など、様々な種類のものが出回るようになりました。


(C) VIETJO Life, 現代の灯篭。ドラえもんは定番商品

各小学校では中秋が近づくと、灯篭を買って学校に持っていき、皆で中秋の歌を歌ったり、中秋にちなんだ遊びをしたり、お菓子が配られたりします。


(C) VIETJO Life, 街区のイベントで大盛り上がりの子供たち

近年は、各街区の人民委員会や党支部が主催して、子供たちのイベントを開催しています。行われるのは中秋節の前夜、旧暦8月14日。特設ステージを設置して、子供たちの歌謡ショーなどを行い、お菓子や飲み物を振舞います。中秋には日本では獅子舞と呼ばれている「múa lân(ムアラン=麒麟舞)」も欠かせません。


(C) VIETJO Life, 中秋節の麒麟舞

残念なことに、都市部では子供たちが道路を歩くのは危険なので、灯篭行列をする姿はあまり見られなくなってきました。


(C) NgBK, 灯篭を手に中秋節を楽しむ子供たち。麒麟舞の真似をする子も

なぜ灯篭行列をするようになったのかは定かではありませんが、 ベトナムでは「月にクオイという男(またはその妻)がいて、ガジュマルの木の下に座っている」 という昔話があり、 月に飛んで行ってしまったクオイ(またはその妻)が地上に戻ってこられるよう道を示している という説があります。

クオイの昔話についてはこちら→ 月に住んでいるのは誰? ~おじさんとガジュマルの物語~

 
このほか、中国から月の仙女「Hằng Nga(ハンガー=嫦娥)」の物語がベトナムにも伝わっており、中秋節にはよく月の仙女の姿も描かれます。


(C) VIETJO Life, 月の仙女は月の裏に住むウサギと仲良く暮らしているらしい

なお、 南中部沿岸地方ビントゥアン省 ファンティエット市の灯篭行列は全国的に有名で、日本のねぶたのような山車灯篭を引いて街を練り歩く祭りが行われています。



 

灯篭街「Phố lồng đèn(フォーロンデン)」


大きな都市では、中秋節が近づくと「Phố lồng đèn(フォーロンデン)」が登場します。灯篭売る店が軒を連ねる夜市です。

ホーチミン市では、中華系の人が多く住む5区の「Phố lồng đèn(フォーロンデン)」が有名。歴史はさほど古くなく、20年ぐらい前に始まったと言われています。


(C) VIETO Life, Phố lồng đènの入り口

場所は、ルオンニューホック(Lương Nhữ Học)通り-チャンフンダオ(Trần Hưng Đạo)通り-グエンアン(Nguyễn An)通り-グエンチャイ(Nguyễn Trãi)通りに囲まれた一角。灯篭がたくさん吊るされた店が並び、たくさんの人たちで賑わいます。


(C) VIETO Life

灯篭だけでなく、お面やおもちゃ、食べ物の屋台、ゲーム屋さんなど様々な出店があり、まるで日本の縁日のようでワクワクします。


(C) VIETO Life, なぜかたこ焼きの屋台も

灯篭も、紙製、セロファン製、電気仕掛け、キャラクターもの、影絵の出るものなど、様々な種類が揃っていて、見ていて飽きません。


(C) VIETO Life


(C) VIETO Life


(C) VIETO Life

↓場所はこちら



ルオンニューホック(Lương Nhữ Học)通り-チャンフンダオ(Trần Hưng Đạo)通り-グエンアン(Nguyễn An)通り-グエンチャイ(Nguyễn Trãi)通りに囲まれた一角
横道のフーディン(Phú Đinh)通りがもっとも賑わう。
例年、旧暦8月に入ったころに設置される模様。
夜6時ごろから夜間のみ開業。
混雑するため、スリには十分注意を。


 

月餅


中国同様、 ベトナムでも中秋節に月餅(げっぺい)「Bánh Trung Thu、バインチュントゥ」を食べる 習慣があります。各企業や商売をしている人は得意先に月餅セットを配る習慣があり、取引先が多いと会社が月餅の山になることも。一般の人も両親や恩師に贈ったりもします。日本のお中元みたいですね。


(C) NgBK, 伝統的な月餅


(C) NgBK, 動物の形をした月餅

中身は、甘い豚肉(!)やナッツ、ゴマが入ったもの、緑豆の餡、蓮の実の餡など様々。伝統的なものには、月に見立てたアヒルの黄身の塩漬けが入っています。この黄身が少々クセがあり、日本人には不評なのですが・・・。

とにかく大きくて甘いので、ベトナム人でもたくさんもらうと飽きて持て余してしまうようです。最近は、おしゃれなカフェやマクドナルドなどのファストフード店が販売する「ティラミス月餅」「抹茶月餅」などの変り種月餅や、アイスクリームでできたもの、健康志向の強い人向けの「ダイエット月餅」、一口サイズの月餅など、さまざまな種類の月餅が売られています。


(C) NgBK, ティラミス味の月餅

餡にもよりますが、大きな月餅は1個10万~15万VND(約460~690円)と結構なお値段。手作りのお店やカフェなどでは中秋前に月餅を売り切ってしまうのですが、量産品の場合、だいたい企業が贈答用に配り終え、中秋節が近づいてくると、「1個買えば1個プレゼント」「1個買えば3個プレゼント」・・・と、どんどんプレゼントの量が増えていき、最後には投売り状態になります。いったい原価はいくらなんでしょうね・・・。


(C) VIETJO Life, 中秋節2日後の月餅売り場「1個買えば5個プレゼント」
 

中秋節は家族みんなが楽しむ日。街には人が溢れて渋滞になったりしますが、皆さんも家族や友達とベトナムの中秋節を楽しんでくださいね。
 

<関連記事>
「8月の灯篭行列」~ベトナムの童謡(2)~
月に住んでいるのは誰? ~おじさんとガジュマルの物語~

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2024/10/07 18:00 JST更新
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