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ベトナムを代表する麺料理「フォー(Phở)」。元々はハノイ市の南東にあるナムディン省発祥の料理といわれていますが、現在はベトナム全土で食べられています。特に朝は仕事に行く途中でフォー屋に立ち寄り朝食をとる人がとても多いです。ところがこのフォー、北部と南部では食べるスタイルがだいぶ違います。今回は南部の一般的なフォーの食べ方をご紹介したいと思います。
フォーを食べたければ専門店へ
日本だとベトナム料理屋へ行けば、メニューにフォーがある確率が非常に高いですが、ベトナムではベトナム料理屋へ行ってもフォーがあるわけではありません。日本でお蕎麦を食べたければ普通お蕎麦屋さんへ行くのと同じで、フォー専門店に行く必要があります。朝食として食べることが多いため、早朝から昼過ぎまでしかやっていないお店もあります。
なお、カタカナ読みで「フォー」といってもまず通じません。「オ」の母音を少し「ア」に近づけ、「フォ~」と波打つように言うと、ベトナム人もわかってくれるでしょう。
牛肉のフォーと鶏肉のフォー
フォーの麺は米粉からできており、腰がありません。米粉を水で溶き、蒸し器の上にクレープ状に広げて蒸した生地を麺状に切って作ります。そのため、作り手の切り方によって幅広だったり、日本の蕎麦と同じくらいの幅だったりとまちまちです。
(C) NgBK フォーボー(左)とフォーガー(右)
フォーは大きく分けて、牛骨などから取った出汁をベースにしたスープに麺を入れ、牛肉を載せて食べるフォーボー(Phở bò、bò=牛)と、鶏がらベースのスープに麺を入れ、鶏肉を載せて食べるフォーガー(Phở gà、gà=鶏)の2種類があります。
ひとつのお店でフォーボーとフォーガーの両方を食べられる場合もありますが、スープを2種類作るのは大変ですので、殆どのお店がどちらか一方だけを出しています。たいていの場合看板にbòなのかgàなのか書いてありますので、すぐわかります。大型チェーン店の場合は、両方提供しています。
フォーボーの場合、載せる肉によってさまざまな種類があります。最も代表的なものは、薄い生肉を載せた「フォータイ(Phở tái)」(tái=生煮えの)です。熱いスープで湯がくようにして食べます。代表的なメニューは以下のとおりです。注文の際の参考にしてください。
Phở bò(フォーボー):牛肉のフォー
Phở tái(フォータイ):生煮えの牛肉フォー
Phở chín(フォーチン):火の通った牛肉のフォー
Phở tái chín(フォータイチン):生肉と火の通った肉の両方が載ったフォー
Phở nạm(フォーナム):肩バラ肉のフォー
Phở gân(フォーガン):牛筋肉のフォー
Phở bò viên(フォーボービエン):牛肉団子のフォー
Phở gà(フォーガー):鶏肉のフォー
Phở đúi gà(フォードゥイガー):鶏もも肉のフォー
Phở đặc biệt(フォーダックビエット):特製フォー(ミックス)
自分好みの味に仕上げるのが南部流
北部では、お店でフォーが出されたら後に自分で加えるものといえば、唐辛子とライムぐらいなのですが、南部のフォー屋さんでは、フォーと一緒にさまざまなものが出されます。
(C) VIETJO Life
テーブルの上には、上の写真のようなものが置かれています。左の写真の茶色いどろどろした液体は、「Tương đen(トゥオンデン、黒い醤)」または「Tương ngọt(トゥオンゴット、甘い醤)」と呼ばれるもので、中国の「海鮮醤」がベトナム南部に伝わったもの。これは、大豆や米に砂糖などを加えて発酵させたソースで、味は味噌に似ています。赤色のものはチリソース「Tương ớt(トゥオンオット)」です。この二つは、右の写真のような容器に入っていることもありますが、マスタードとケチャップではなく、黄色がトゥオンデン、赤がトゥオンオットですので、間違えないようにご注意ください。
そのほか、マレーシアなどにもある唐辛子のペースト「Sa tế(サーテー)」や、唐辛子やニンニクをヌゥオックマムや酢に漬けたものをお好みで加えます。
(C) VIETJO Life
チリソースは日本のものより辛いので、味を見ながら入れてください。トゥオンデンは甘いです。
(C) VIETJO Life
丼の中にあらかじめ入っている刻んだネギのほかに、麺とは別に香草がたくさん出されるのが南部流です。
(C) VIETJO Life
日本でノコギリコリアンダーと呼ばれている細長いギザギザした葉の「Ngò gái(ゴーガイ)」や、やわらかい茎に小さな葉っぱがたくさんついているリモノフィラ「Ngò ôm(ゴーオム)」(またはNgò om)は適当な長さに千切ります。そのほか、大きい葉のミント(Húng bạc hà、フンバックハー)やバジル(Húng quế、フンクエ)などは茎から葉を千切り取って入れます。
(C) VIETJO Life
湯がいたもやしやネギも出てきます。
(C) VIETJO Life
お好みの量を入れて混ぜ合わせます。
(C) VIETJO Life
仕上げに、お好みの量のライムを搾って、いただきます!ライムを入れることでスープの臭みが消え、さっぱりした後味が楽しめます。
フォーを食べるときの注意点
屋台などでフォーを食べるとき、お箸やスプーンが清潔であるとは言えません。ベトナム人の殆どの人は、卓上にある紙でお箸とスプーンを拭いてから使用していますので、気になる方は拭いてから使いましょう。
日本で麺を食べるとき、スプーンは必須ではありませんが、ベトナムでは必ずスプーンはあるべきものです。というのも、スープを飲む際に日本のように丼から直接飲むことは極めて下品な行為と考えられているからです。スープを飲むときにはスプーンを使うようにしましょう。また、麺を食べる際、ベトナムの女性は汁が飛び散らないよう、いったん麺をスプーンの中に入れて汁から持ち上げ、お箸で麺をスプーンから取って食べています。
また、お店によっては細長いスカスカの揚げパンがテーブルに出されます。これを千切ってフォーのスープの中に入れて食べると、スープをよく吸って大変おいしいですが、タダではありませんのでご注意ください。
腰のある麺になれた日本人にとっては、フォーは物足りないかもしれませんが、新鮮な香草やもやしを入れることで、日本の麺とはまた違った歯ごたえが楽しめます。自分の好きなお店で、自分好みの配合で、自分だけの味を作れる南部式フォー。味付けを客に委ねるというスタイルを思い切り楽しみましょう!
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