ベトナムニュース総合情報サイトVIETJO [ベトジョー]
 ようこそ ゲスト様 

【第10回】運動会~毎日の生活の中で~から見えること

2019/12/26 08:35 JST配信

今年もホーチミン日本人学校の新体育館をお借りして、幼稚園の運動会を行いました。一般的に想像される運動会は、大きな学校行事の一つとして捉えられています。何日も練習を重ねた後に、「本番」として運動会を迎えているケースが多いです。しかし、私たちの幼稚園では、運動会を特別な行事として位置付けていません。

子ども達は、日常生活の経験を積み重ねて成長していきます。運動会もその流れの中にある1日なのです。運動会のプログラムについても、その時の子ども達と保育者が一緒に作り上げるものなので、内容も当然毎年違ってきます。保育者は、毎日の遊びの中から、子どもたちの関心度が高く、競技につながる遊びを日々探っていきます。運動会のために練習を行うのではなく、毎日の遊びの中から、保育者が運動会の競技にしていくのです。遊びが面白ければ、運動会のための“特別な“練習は必要ないのです。これは保育者の意識改革が必要かもしれません。運動会までの日々から運動会当日、終わったその後の子どもたちの活動や遊びは、一連の遊びの過程と考えています。

過去に私は色々な幼稚園を見学させていただきましたが、運動会特有の現象があります。もちろん運動会が本番と設定されるので、当日が近づくにつれ、どのクラスも毎日毎日練習を繰り返します。私が東京のK幼稚園に勤めていた時のこと。年長組は、運動会で披露するダンスのセットとして、段ボールでヤシの木を作り、その周りで毎日ダンスの練習をしていました。ようやく運動会が終わったその翌日のことでした。お部屋に置いてあったそのヤシの木を、何人かが倒して踏み、ダンスをもう一度踊りたいという声は一切上がってきませんでした。練習があまりにも面白くなく、子ども達にとっては「やらされた」感が強かったのです。「子ども達のものになっていない。」そんな経験もあって、私は 「運動会はいつもの生活の中にやってくる」「運動会が終わった後も子どもたちは興味のある競技であれば何度もやろうとする」 がモットーとなりました。

今年の運動会では、年長組のリレーがありました。毎日公園で行なっていたのを見ていた年中組の子ども達は、運動会が終わった途端に、自分たちが年長組に混ざったり、あるいは自分たちでリレーがしたいと保育者に申し出たりしています。

また、母親競技の綱引きで、ママたちが勝負を賭けて、突然裸足になって本気の綱引きを見せてくれました。

お父様たちは、今年のラグビーW杯にあやかり、ラグビーボールを使ってのリレー&トライ。その日に即席で作ったにわかチームでもパパたちのチームワークはすごかった…。会場が湧き、大人の本気と楽しい雰囲気が子ども達に伝わり、その後の競技も大いに盛り上がりました。

早速運動会の翌日から、子ども達はラグビーボールを持って走ることを繰り返していました。また、運動会での綱引きは、綱の一番端を持つ人になぜか子どもの注目が集まっていました。幼稚園で自分たちが綱引きをやってみる時には、運動会の時と全く同じ姿を真似をしてみます。腰にぐるぐる綱を巻いたり、お尻を突き出し、両足を広げて踏ん張り、両手で引っ張ったり。「楽しいと思ったことは繰り返す」これが子どもの生活の基本です。そして繰り返し遊ぶことで、彼らはたくさんの学びをしていきます。

年長組のリレーに憧れていた年中組も、リレーのコース作りを真似てみますが、楕円のカーブをうまく出すことがなかなかできません。それでもなんとか必死で頑張ります。走ってみて具合が悪ければまた直します。「年長組さんの使っていたバトンが持ちたい。」代用品では本当のリレーではないのです。やるならとことん自分たちが見た本物に近づけたいのです。私たち大人は 幼児期の「模倣」と「再現」力 に目を見張り驚かされることがたくさんあります。毎日の生活の中から生まれる運動会を通して再確認したことでした。

著者紹介
多々内三恵子
おおぞら日本人幼稚園理事長・園長。

タオディエン日本人幼稚園園長。

静岡大学教育学部附属幼稚園・青山学院幼稚園教諭を経てホーチミンで日系幼稚園を開園。

日本の保育を真摯に、かつユニークに展開中。

子どもの世界の面白さを語ったら止まらない。

>> おおぞら日本人幼稚園ウェブサイト

>> タオディエン日本人幼稚園フェイスブックページ
子育て奮闘中のパパママにエール!
その他の記事はこちら>
© Viet-jo.com 2002-2025 All Rights Reserved. 
※VIETJOベトナムニュースは上記の各ソースを参考に記事を編集・制作しています。 免責事項
新着ニュース一覧
ホーチミンに自由貿易区を設立、国会決議 (15:07)

 国会は11日、ホーチミン市に自由貿易区を設立して投資を誘致し、地域経済の中心地とするための特別制度の試行に関する決議を賛成多数で採択した。同市の開発にかかる特別制度の試行に関する2023年の国会決議第9...

国会、司法関連の法律2本を可決 受刑者の権利と義務を規定 (15:01)

 国会は10日、改正刑事判決執行法および拘留・勾留・居住地制限措置に関する法律を含む、司法に関連する法律2本を可決した。  このうち、改正刑事判決執行法は15章180条で構成され、2026年7月1日に施行され...

国会、国家管理関連の法律4本を可決 汚職防止規制強化 (14:28)

 国会は10日、◇汚職防止法の一部を改正・補足する法律、◇改正国会・人民評議会監視活動法、◇国民対話法・苦情申し立て法・告発法の一部を改正・補足する法律、◇国際条約法の一部を改正・補足する法律を含む、国...

車いすでピックルボールに打ち込む人々 (7日)

 グエン・バン・フアンさん(男性・40歳)は毎週、東北部地方クアンニン省からハノイ市まで100km以上の道のりを三輪バイクで走り、ピックルボールに打ち込んでいる。フアンさんにとって、ピックルボールは障がいへ...

25年1~11月期の新規設立企業17.8万社、前年同期比+20.9%増 (14:14)

 財政省傘下統計局(NSO)が発表したデータによると、2025年1~11月期に全国で新規設立された企業は前年同期比+20.9%増の17万7993社、登録資本金の合計は同+20.9%増の1753兆2190億VND(約10兆3000億円)だった。同...

フェニカーと韓国緑十字、健康診断施設をハノイに開業 (13:11)

 韓国の製薬会社である緑十字ホールディングス(GC Holdings=GC)はこのほど、ハノイ市で健康診断施設「GC&フェニカー・ヘルスケアセンター(GC&Phenikaa Healthcare Center)」を開業した。  同施設は、地場...

25年11月新車販売台数統計、月間販売台数は年内最多 (13:04)

 ベトナム自動車工業会(VAMA)の発表によると、2025年11月におけるVAMA加盟企業とVAMA非加盟企業を合わせた新車販売台数(TCモーターおよびビンファスト=VinFast含まず)は前月比+4%増、前年同月比では▲11%減の3...

国会、交通・インフラ関連の法律3本を可決 遅延・欠航の補償など (6:52)

 国会は10日、◇改正民間航空法、◇改正建設法、◇改正計画法の交通・インフラ関連の法律3本を可決した。  このうち、改正民間航空法は11章107条で構成され、2026年7月1日に施行される。  注目すべき点とし...

国会、社会・経済関連の法律14本を可決 報道規制の強化など (6:22)

 国会は10日と11日、社会・経済分野に関する14本の法律を可決した。可決された法律は以下の通り。 ◇改正報道法 ◇疾病予防法 ◇改正大学教育法 ◇改正投資法 ◇改正預金保険法 ◇改正国家準備法 ◇破産再生

財政省、暗号資産取引市場の管理委員会を設立 (5:55)

 国家証券委員会(SSC)は10日、財政省が「暗号資産取引市場管理委員会」を設立したと発表した。同委員会は、暗号資産市場を専門的に監督する国内初の機関となる。SSCのブイ・ホアン・ハイ副委員長が、暗号資産取...

国会、ザービン国際空港プロジェクトの実施を承認 (5:39)

 国会は11日、北部紅河デルタ地方バクニン省で計画されているザービン国際空港建設プロジェクトの投資方針を承認する決議を採択した。投資総額は約196兆3780億VND(約1兆1600億円)となる見通しだ。  同空港は...

日越の環境省、企業の温室効果ガス排出量の透明性向上へ (4:13)

 日本の環境省は、ベトナム農業環境省とコ・イノベーションのための透明性パートナーシップ(PaSTI)を通じた活動内容に関するオンライン会議を行った。  民間企業の透明性向上に向けて、ベトナムの温室効果ガ...

FPTとSCSK、新会社を設立 レガシーシステムの課題解決に貢献 (4:00)

 ベトナムIT最大手FPT情報通信[FPT](FPT Corporation)は、日本法人のFPTジャパンホールディングス株式会社(東京都港区)を通じて、ビジネスに必要なすべてのITサービスをフルラインア

スプリックス、ハノイ工科大学傘下研究所と教育協力で覚書締結 (3:10)

 学習塾および教育関連事業を手掛ける株式会社スプリックス(東京都渋谷区)は4日、ハノイ工科大学(HUST)傘下のデジタル技術経済研究所(BK Fintech)との間で、ベトナムでの展開において協業関係にあるカオピーズ(K...

ホーチミン:新暦正月に市内4か所で打ち上げ花火 (2:36)

 ホーチミン市は、2026年の新暦正月を祝う打ち上げ花火の実施を計画している。打ち上げ花火は2026年1月1日(木)の午前0時から15分間にわたり実施する予定だ。  計画によると、◇サイゴン川トンネル入り口(アン...

©VIETJO ベトナムニュース 2002-2025 All Rights Reserved