ベトナムニュース総合情報サイトVIETJO [ベトジョー]
 ようこそ ゲスト様 

【第11回】幼稚園と子どもとコロナ

2020/06/25 10:35 JST配信

テトが明け、さあこれから3学期という時に「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)」の影響により、2月から学校の休園休校が始まりました。当初は2週間刻みだった政府からの通達に、その頃はまさかこんなに長引くとは思わず、幼稚園としても、その都度どう対処していいか随分と迷っていました。

今回のコロナ自粛で最初に感じたことは、 幼稚園としてのコロナ対策は、保育のねらいと真逆の対応をしないといけなかった ということです。子ども達が幼児期にどれだけたくさんの人と接して、そこから愛情を感じ成長の糧にしていくかということが保育の本質です。人との濃厚接触を避けること、ソーシャルディスタンシングを取ること、コロナ対策のこれらは、極端な話ですが、泣きながら登園する子どもにも近寄れない状況を生み出し、仲間意識を高めていく鬼ごっこもできず、遊びが制限されるいう心配が出ました。

3月には20名の卒園生を送り出しました。しかし、4月からの新入園児、転園児はベトナム入国ができず、未だ日本で待機の状態です。4月に入り、日本の新年度スタート時に幼稚園が始まらないということは、保育者にとっても最大のストレスでした。しかしこのまま何もせずに、ただ開園の通達を待つだけでは、子どもたちや保護者の皆様のストレスも溜まる一方になると考え、動画配信を計画しました。内容は絵本の読み聞かせ、教材を宅配して工作アート、ダンス、クッキング、そしてベトナム語講座も作成しました。ただし、小さな画面に向かって作る動画は、私たち保育者にとっては不本意なものでした。本来であれば、子どもたちと直接対面をして、まだ十分に自分の気持ちを言葉で表すことのできない 彼らの気持ちを察することや、寄り添うことが日常の保育の営み だからです。動画配信はそれができず、一方的な思いになってしまいます。また、小学生以上と比べると、オンライン授業など、ソーシャルディスタンシングを取った授業体制と幼稚園の保育体制は明らかに違うことを確信することができました。

5月、ようやく3ヶ月振りに幼稚園を再開することができました。休園中に私たち保育者が感じたこと、コロナ対策として幼稚園で実施することを、最初に保護者の皆様にお伝えいたしました。まずは、幼稚園教職員の健康管理、ご家庭での健康管理、手洗い、除菌の強化を徹底すること。その上で、通常保育を行うことをご理解いただきました。そして、園児たちの登園は年長組から段階的に始めました。3学期はほとんど登園をしていない状態だったので、この間に日本に帰国していたり、退園した仲間の報告もしないままになってしまっていました。子ども達の登園の様子がとても心配でした。そんな中での登園初日、子どもたちはやや緊張した面持ちでバスから降りてきました。ですが、保育者たちの心配をよそにすぐに元気な声が園舎に響き渡りました。「子どもたちが来てくれた!」「やっといつもの幼稚園になった!」と嬉しさがこみ上げ、”幼稚園”という存在の意義を感じました。

新しい時代になっていくと誰もが思い始めた中、 今後、保育のあり方も変わるだろう と考えます。京都大学の山際学長は、ゴリラの研究で有名な方です。人間の本質とは、(ある意味ゴリラ社会に学ぶこともあると言いつつ)生物としてそれぞれの違いを前提に集まって接触し、協働することができ、それによって生きる喜びや生きる意味を見つけていくことができることだと述べています。見知らぬ人ともすぐに手を組んで、共感することができるという人間の特質が、今禁止され奪われようとしている。それをどうやって復活させるか、色々とアイディアを出さないといけない時代を迎えると言っています。これまでのように他者に近づけない、触れることができない、これが日常となっていく中で育っていく子どもたちに我々大人が、子ども達に伝えていくことは何かを改めて考えています。

著者紹介
多々内三恵子
おおぞら日本人幼稚園理事長・園長。

タオディエン日本人幼稚園園長。

静岡大学教育学部附属幼稚園・青山学院幼稚園教諭を経てホーチミンで日系幼稚園を開園。

日本の保育を真摯に、かつユニークに展開中。

子どもの世界の面白さを語ったら止まらない。

>> おおぞら日本人幼稚園ウェブサイト

>> タオディエン日本人幼稚園フェイスブックページ
子育て奮闘中のパパママにエール!
その他の記事はこちら>
© Viet-jo.com 2002-2025 All Rights Reserved. 
※VIETJOベトナムニュースは上記の各ソースを参考に記事を編集・制作しています。 免責事項
新着ニュース一覧
FPT、AIエージェント教育プログラムを導入 インド企業と提携 (6:18)

 ベトナムを代表するIT最大手FPT情報通信[FPT](FPT Corporation)は1日、インドの情報技術(IT)教育組織ジェットキング(Jetking)との間で、人工知能(AI)エージェント教育プログラムの

AI関連の地場スタートアップ「AI Hay」、1000万USD調達 (6:02)

 人工知能(AI)を活用した検索プラットフォームを開発する地場スタートアップのAIハイ(AI Hay)はこのほど、東南アジアを中心にテクノロジー分野のスタートアップ企業に投資するアルゴー・キャピタル(Argor Capita...

6月のベトジョー記事アクセス数ランキング (5:53)

 VIETJOベトナムニュースが6月に配信した記事のアクセス数ランキングをご紹介します。 1位:個人事業主への電子請求書義務化、店舗が敬遠で現金決済に逆戻り

8人兄弟の学者一族「グエン・ラン家」、故クオン氏を偲ぶ【後編】 (6/29)

 ベトナムを代表する考古学者・人類学者で、音楽家としても知られるグエン・ラン・クオン(Nguyen Lan Cuong)氏が2025年5月6日、ハノイ市のベトナム国家大学ハノイ校(ハノイ国家大学)医科薬科大学附属病院で死去...

6月のベトジョー記事10選:省・市再編の決議採択、国会閉幕など (5:30)

 6月は、第15期(2021年~2026年任期)国会第9回会議が閉幕しました。今国会では、34本の法律を可決し、14本の決議を採択しました。  国会では、全国63省・市の行政区を大幅に削減して34省・市とする行政区再...

クアンガイ省:ズンクアット経済区で新都市区開発、投資方針承認 (4:55)

 チャン・ホン・ハー副首相はこのほど、南中部地方クアンガイ省ズンクアット経済区内でのズンクアット東南新都市区北側・南側の2件の開発案件の投資方針を承認する決定に署名した。  ズンクアット東南新都市...

ベトナム航空、ダナン~大阪線を約5年ぶり運航再開 (4:39)

 ベトナム航空[HVN](Vietnam Airlines)は3日、2020年以来約5年ぶりにダナン~大阪線(VN336/VN337)の運航を再開した。同路線は週4便の運航となる。  ベトナム航空は同

スペースシフト、地場ベガコスモスと衛星データビジネス推進で提携 (3:21)

 衛星データ解析システム開発や衛星データ解析業務などを手掛ける株式会社スペースシフト(東京都千代田区)は、地場テクノロジー企業のベガスター・テクノロジー(VegaStar Technology、ハノイ市)グループで地理空...

TCJグローバル、地場日本語教育機関と提携 法人向け人材紹介を.. (2:37)

 外国人留学生向け進学・就職日本語コースの運営などを手掛ける株式会社TCJグローバル(旧:東京中央日本語学院、東京都新宿区)は6月16日、ベトナム国内で日本語教育と留学・就労者紹介事業を行うニャットファッ...

ラム書記長とトランプ米大統領が電話会談、貿易協定の枠組み合意 (3日)

 トー・ラム書記長はベトナム時間2日夜、ドナルド・トランプ米大統領と電話会談を行い、両国関係と両国間の相互関税について話し合った。  両首脳は電話会談で、両国関係が良好かつ急速に発展していることに...

ベトナム初のグリーンB2B電子商取引所「EcoHub」誕生 (3日)

 アロビッド・テクノロジー(Arobid Technology)は1日、ベトナム初となるグリーンB2B(企業間取引)電子商取引(eコマース=EC)プラットフォーム「エコハブ(EcoHub)」を発表した。  エコハブは単なるオンライン...

PEPI指数を初発表、再編後の34省・市の経済的地位を数値化 (3日)

 ベトナムの経済データ関連スタートアップ企業のベトスタッツ(Vietstats)は1日、全国34省・市を対象とした初の包括的な経済評価指数「地方経済ポジション指数(PEPI)2025」を発表した。  PEPIは、これまでの...

ベトテル、ダナンでハイテク複合ビルを着工 27年完成 (3日)

 南中部地方ダナン市人民委員会と国防省傘下の携帯通信大手ベトナム軍隊工業通信グループ(ベトテル=Viettel)は1日、ハイテク複合施設「ベトテル・ダナン・ビルディング(Viettel Da Nang Building)」の着工式を...

モビフォン・ワンマウント・テクコム銀、デジタル決済会社を設立 (3日)

 携帯通信大手のモビフォン(Mobifone)、テクノロジー企業のワンマウントグループ(One Mount Group)、大手民間銀行のテクコムバンク[TCB](Techcombank)は、電子決済事業を手がける新

バイクの初回登録料、全国一律2%に (3日)

 政府は6月30日、車両登録料を規定する政令第10号/2022/ND-CPの一部を改正・補足する政令第175号/2025/ND-CPを公布した。新政令は7月1日に施行された。  新政令によると、7月1日から、バイクの初回登録料が...

©VIETJO ベトナムニュース 2002-2025 All Rights Reserved