ベトナムニュース総合情報サイトVIETJO [ベトジョー]
 ようこそ ゲスト様 

ベトナムの法律事情(1):改正住宅法/外国人向け住宅用不動産

2015/07/18 06:00 JST配信

 皆さん、初めまして。インドシナ・リーガル(IndochinaLegal)のロマーリョ(Lomaglio)と申します。弊社はベトナム現地の法律事務所です。20年間にわたり、ベトナムにおいて外国人投資家向けに法律上のアドバイスを提供してきました。

 ベトナムの法律は複雑で、情報もはっきりせず悩まれる方も多いのではないでしょうか。このコラムでは、少しでも皆さんのお役に立てるよう、外国人に関わる法律を取り上げて解説していきたいと思います。

改正住宅法が施行、外国人の不動産投資条件緩和

 改正住宅法が7月1日から施行されました。2014年11月に国会で可決された改正住宅法第65号/2014/QH-13では、外国人のベトナムにおける不動産投資の条件が大幅に緩和されました。ただし、手続きの詳細については、施行細則を待つ必要があります。

外国人の不動産購入、何に注意すべき?

 外国人がベトナムで不動産を購入するにあたり、注意すべきことは何でしょうか。不動産購入に関する外国人の制限や権利について見てみましょう。(次の事項は、ベトナム人または在外ベトナム人(越僑)と結婚した外国人には適用されません。ベトナム人と結婚した外国人には、現地のベトナム人と同等の権利が与えられます。)

様々な制限(ビザ、戸数、地域、支払い)

1.査証(ビザ)
 ビザを所有し、パスポートに入国スタンプが押印されていること。

2.外国人向け不動産物件の最大戸数
 海外投資向けに開放される不動産物件は、分譲マンションと戸建て住宅です。そして、外国人が購入できる戸数は分譲マンション1棟につき最大30%、戸建て住宅は1街区につき最大250戸と制限されています。

 しかし、政令の草案では、海外投資向けに開放される戸建て住宅の戸数制限について「不動産プロジェクト1案件につき最大10%」という追加の制限が盛り込まれています。ただし、改正住宅法ではこうした制限が定められていませんから、ベトナムビジネスフォーラム(Vietnam Business Forum=VBF)はこれを削除するよう求めています。

3.外国人向け不動産物件の地域
 改正住宅法によると、外国人は国防や安全保障に関わる地域に位置する物件に投資することが出来ませんが、政令草案ではその制限が更に厳しくなっています。政令草案では、「外国人は海外投資向けに開放されていない地域の物件に投資することが出来ない」とされています。この制限も最大戸数と同じく改正住宅法に矛盾しますから、VBFはこれを削除するよう求めています。

 いずれにしても、海外投資向けに開放されている建設プロジェクト、そして外国人が所有する分譲マンションと戸建て住宅の戸数は、建設省のウェブサイトに掲載されます。

4.支払い
 物件購入時の支払い方法は、銀行振り込みとなります。購入時の価格が外貨表示でも、取り引きはベトナムドンで行わなければなりません。ただし、売却時には、売却価格を元の通貨(外貨)に戻すことができます。

外国人の権利

 外国人に与えられる土地使用権の期限は土地使用権証明書の発行から50年間ですが、有効期限の3か月前までに手続きを行えば、権利の更新ができます。

 しかし、政令草案では、「外国人は一回しか更新出来ない」とされており、これも法律に矛盾しますので、VBFは削除を求めています。

 不動産の権利には、利用権、賃貸権、売却・贈与権の3つがあります。売却・贈与権により、所有者は土地使用権の期限満了前に不動産の売却・贈与を行うことが出来ます。買い手がベトナム人なら、権利の期限は永久になりますが、買い手が外国人の場合には、期限は元の所有者と同じで、残りの期間のみとなります。

資金調達(住宅ローン)

 外国人のための住宅ローンについて、香港上海銀行(HSBC)とベトナム国際銀行(VIB)、テクコムバンク(Techcombank)に問い合わせたところ、現時点でこうしたローンはまだ取り扱っていないとのことでしたが、将来的には取り扱いが開始される可能性があります。

 以上のように、ベトナムの不動産市場は現在、一定の制限のもとで外国人向けに開放されています。しかし、手続きの詳細については、施行細則を待つ必要があります。政令草案には様々な追加の制限が規定されていますが、これらは政府が目指す不動産業界の成長の障壁となることから、最終的に削除されることが望まれます。

著者紹介
Florence Lomaglio (フローレンス・ロマーリョ)

 現職Indochina Legal HCM事務所シニアアソシエイト弁護士。
スイス弁護士資格取得。
主にM&A、国際商取引契約、不動産関連の経験が豊富。
ベトナムヨーロッパ商工会議所グリーン成長委員会副会長、ベトナムスイス商工会の理事を務める。
3年間の日本駐在を経験しており、英語・フランス語に加え、日本語も話す。


【Indochina Legal事務所概要】
・ベトナム関連業務を20年実施後、2007年に事務所設立
・ホーチミン及びハノイに事務所
・主な実績:商業、税務、M&A、建設、仲裁、保険
・産業:インフラ関連、不動産、製造業、サービス、流通、保険など。

ベトナムの法律事情
その他の記事はこちら>
[2015年7月18日 ベトジョーコラム A].  © Viet-jo.com 2002-2024 All Rights Reserved. 
※VIETJOベトナムニュースは上記の各ソースを参考に記事を編集・制作しています。 免責事項
新着ニュース一覧
ハノイ、家屋識別番号を利用した火災警報アプリを試験導入へ (13:21)

 ハノイ市人民委員会は、家屋などの識別番号を利用した火災警報アプリを試験導入する計画を発表した。  アプリには、建物の建設許可に関連する情報、防火システムの審査・検収状況、消防活動を監視するため...

ヤオコー、ベトナム市場に参入 地場企業に出資・業務支援 (6:41)

 スーパーマーケット事業を手掛ける株式会社ヤオコー(埼玉県川越市)は、 今後の成長戦略の布石として地場企業に出資・業務支援を行い、ベトナム市場に参入する。  具体的には、食品スーパーマーケット事業を...

スタンチャート銀、ベトナムの24年GDP成長率予想+6%に下方修正 (6:38)

 英スタンダードチャータード銀行(Standard Chartered Bank)はこのほど発表したベトナムのマクロ経済に関する最新レポートの中で、2024年におけるベトナムの国内総生産(GDP)成長率予想を前回レポートの+6.7%か...

10代で結婚、30代で孫の世話…連鎖する児童婚 (21日)

 他に人のいない家の中で、タオ・バン・ポーさん(男性・36歳)が子供をあやして泣き止ませようとしている。一見、ポーさんが自分の子供をあやしているのかと思いきや、実はこの子供はポーさんの「孫」だ。  ...

ビンファスト、米国のディーラー12社と代理店契約締結 (5:58)

 地場系コングロマリット(複合企業)ビングループ[VIC](Vingroup)の子会社である電気自動車(EV)メーカーのビンファストオート(VinFast Auto)は23日、米国のディーラー12社との間で代

FPT、米エヌビディアとAIファクトリー開発などで協力 覚書締結 (5:55)

 ベトナムを代表する情報技術(IT)最大手FPT情報通信[FPT](FPT Corporation)はハノイ市で23日、米国のグラフィックスプロセッサ・半導体大手のエヌビディア・コーポレーション(NVIDIA

イエンバイ省:セメント工場の10人死傷事故、従業員1人を逮捕 (4:09)

 西北部地方イエンバイ省イエンビン郡(huyen Yen Binh)にあるイエンバイセメント鉱産[YBC](Yen Bai Cement And Minerals)のセメント工場で22日に発生した深刻な労働災害に関連し、イ

栃木県、ハノイに「とちぎベトナムサポートハブ」を開設 (4:03)

 栃木県は、ハノイ市に「とちぎベトナムサポートハブ(とちぎハブ)」を開設し、24日より活動を開始した。  とちぎハブは、県内事業者のベトナムにおける販路開拓、事業所設置、インバウンド誘客、高度外国人...

FPTジャパンと大末建設、建設業DX化推進でパートナーシップ契約 (3:58)

 ベトナムIT最大手FPT情報通信[FPT](FPT Corporation)グループの日本法人FPTジャパンホールディングス株式会社(東京都港区)の子会社であるFPTソフトウェアジャパン株式会社(FPTジャ

金属プレス加工の河政工業、バクニン省に子会社を設立 (2:20)

 金属プレス加工や部品組み立てなどを手掛ける河政工業株式会社(東京都葛飾区)は、北部紅河デルタ地方バクニン省に子会社を設立した。  子会社「河政工業ベトナム(KAWAMASA INDUSTRY VIETNAM)」は、ダイドン...

第15期第7回国会、5月20日開幕 法案の審議予定を調整 (24日)

 国会常務委員会は20日、第15期(2021年~2026年任期)国会の第7回会議の会期を5月20日から6月8日までと6月17日から6月28日までの2期に分けて開催することを決定した。  国会常務委員会は、2024年法律・法令作...

台湾の自転車製造大手ジャイアント、ビンズオン省に新工場建設 (24日)

 台湾の大手自転車製造メーカーのジャイアント(Giant)は22日、ベトナム事業拡大を目的に、1億2000万USD(約186億円)を追加投資し、新工場を建設する計画を発表した。  新工場は、東南部地方ビンズオン省の第3...

タカラレーベンとフジタ、ハイフォンの分譲マンションを竣工 (24日)

 MIRARTHホールディングス株式会社(東京都千代田区)のグループ会社である株式会社タカラレーベン(東京都千代田区)と株式会社フジタ(東京都渋谷区)は、北部紅河デルタ地方ハイフォン市において共同で開発中の分譲...

ダナン空港、スマートターミナル開発へ FPTソフトウェアと提携 (24日)

 南中部沿岸地方ダナン市ダナン国際空港の国際線ターミナルを運営するダナン国際ターミナル投資開発(Da Nang International Terminal Investment and Operation=AHT)は22日、ベトナムを代表するIT最大手

政府、違法漁業と闘う行動計画を公布 (24日)

 政府は22日、違法・無報告・無規制漁業(IUU漁業)と闘うための行動計画に関する決議第52号/NQ-CPを公布した。  この行動計画は、IUU漁業と闘うことの役割と重要性に対する認識に大きな変化をもたらし、それ...

©VIETJO ベトナムニュース 2002-2024 All Rights Reserved