ベトナムニュース総合情報サイトVIETJO [ベトジョー]
 ようこそ ゲスト様 

「日越の架け橋となる仕事を」カオ・ミン・ケンさん/食品メーカー【後編】

2016/04/25 09:20 JST配信

ベトナムで人材紹介を行う JellyfishHR がお届けするこのコラムでは、現地で実際に生活をしている日本人に、ベトナムでの生活、ベトナム人との仕事、日本との違いなどをインタビューしていますが、少し趣を変えて、日本生まれ日本育ちのベトナム人、カオ・ミン・ケンさんにインタビュー。今回はその最終章です!

前編 では日本での学生時代と日本での就職の話、 中編 ではシンガポール国立大学でMBAを取得した話に分けてお話しして頂きました。

そして今回の後編では、キャリア観や豆腐屋を始めるきっかけとなったお父様の話などボリューム満点。次なるステージへと向かうカオ・ミン・ケンさんに迫ります。

>> 前編はこちらから  
>> 中編はこちらから

キャリアに悩んでいる方へのメッセージ

− カオさん、とうとう最終章となりますが、ベトナムに来てからの話を是非お願いします。

カオ: はっきり言って、ベトナムのことはまだ分からないことも多いです。 基本的にうちの会社はローカルの人達においしい食文化を広めていきたい ので、そこにフォーカスを当てた経営をしたいと思っています。

理由は 父親も自分も日本とベトナム両方の文化を知っているから です。

こんにゃくやしらたきなども広めていくつもりですが、今のところしらたきは、ベトナム人はほとんど食べません。しかし、売れる素地はあると予感しています。

もし上手くいったら、ローカル層はボリュームゾーンなので、一大マーケットが生まれます。そうしたら、雇用もたくさん生まれますし、それが一番の社会貢献ですよね。だからこそ、規模を求めてローカルを狙っていきます。

−ローカル層を狙いたい思いがひしひしと伝わってきました。

カオ: 話が少し変わるけど、この記事を読んでいる方で自身のキャリアについて悩んでいる人もいると思います。今の会社でくすぶっていてキャリアを変えたい、でもどんな仕事がいいか分からない、みたいな。

私の経験から一つお伝えすると、 過去の自分を振り返ってみるのが大事です。

「自分が一番輝いていたのはどんな時だったかな」「どんな時ワクワクしていたかな」というのを突き詰めてみるのが良い と思います。

今の職場で全然評価されずに自信喪失している人も、そんなことはない。 どんな人でも過去にキラキラ輝いた経験があるはずです。 ワクワクしながら自分の力を発揮して、周囲に一目を置かれた経験があるはずです。

そのときを思い出して、自分はなぜ輝けたのかを突き詰めて、それを次の仕事にしていければ良いキャリア人生を送れると思います。

私の場合も同じで、サラリーマン時代はくすぶることも多かったです。その時、自分が一番輝いていた学生時代のベトナムボランティア経験を思い出していました。その結果、会社を辞め、MBA留学を決意し、今ここにいます。今は毎日楽しく仕事をしています。

今にして思う、MBAで学んだこと

−さて、実際にMBAで学んだことは仕事で活用されていますか?

カオ: 鋭い質問です。MBAで学ぶケーススタディーは、意思決定をするにあたっての最低限の情報が与えられているのが普通です。「自社の財務状況はこうで、競合はこうで、市場規模はこうこうです。以上から、どのようにして競合と戦いますか?」みたいな感じです。

でも、新興国での実際のビジネスは、そもそも前提となる情報がなかなか手に入らない。自社の財務諸表ですらあてにならない。情報が無さ過ぎます(笑)。

例えば、ベトナムの豆腐の競合シェアがそれぞれどれくらいで、各社売上がどのくらいなんてわからない。なんとなくスーパーで置かれている商品の量をみて、「うち今シェア2位くらいかな?」ってそんなレベルです。

そういった意味では学んだこととのギャップは多くて、手探りの中でやっています。 一歩ずつ一歩ずつ、将来の目標に向けてこれから頑張って前進しようと思っています。

ベトナムで起業した父について

−逆に新興国で会社を立ち上げる楽しさがあるのかもしれませんね! 順番が前後しますが、お父様はどうして豆腐屋を?

カオ: うちの会社は9年前にできたスタートアップで、父親が早期退職して立ち上げた会社です。

丁度ベトナム戦争時に東工大に留学して、電気機器メーカーで技術者として研究開発畑で働き、リニアモーターカーの研究などもしていました。全然食品関係無いですよね。(笑)

なのに突然「俺は豆腐屋する!」と言い出して、急にベトナムで豆腐工場を作り始めたんです。何で豆腐を始めたか、当初は家族も誰一人として、理解できませんでした。

専門がリニアモーターカーだったけど、父親も祖国ベトナムに貢献したいという気持ちはあったみたいです。でも、リニアモーターカーは規模が大きくて、ベトナムで一人ではできない。

こじんまりと貢献できることを考えていた時に、丁度ベトナムのニュースが流れてきました。 建設用の石灰で豆腐を固めていたこと がその当時問題となっており、 これはチャンスだと感じた そうです。 日本式の安全・安心の美味しい豆腐を作ったら売れる! と。

そこで、試しに自家製豆腐を家で作ってみたら、「想像以上に美味しかった!」というのが、日本式の豆腐をベトナムで作ろうと考えたきっかけのようです。

未経験からのスタートでしたが、 日本製の機械を導入し、日本人から技術指導も受けました。 そのおかげもあり、 うちの豆腐や納豆、こんにゃく、しらたきは本当にうまいですよ! パッケージがローカル向けなので、日本人は手に取るのを敬遠しがちなデザインですが、 味は完璧です。しかも安い。

その証拠として、今はロッテマートやAEONなど、ベトナムのほとんどの大手スーパーでうちの商品を取り扱ってもらっています。

リニアモーターカーも豆腐も、ものづくりという観点では同じです。よりよいものを作るためには「仮説→検証」を繰り返すことが重要で、それはどんなものを作るときでも一緒。リニアモーターカーの専門家である父が市場に受け入れられる美味しい豆腐を作れたのも、そういうところに理由があるのだと思います。

今まではその技術力のみで会社はここまで成長してこられました。これからは更なる成長に向けて今まで足りなかった部分、例えば営業強化や会計・財務の部分もしっかりと見ていく必要があります。それは営業畑を歩み、MBAで経営を学んだ自分の役割だと感じています。

そして従業員全員で力を合わせて、会社を次のステージに進めていきたいと考えています。

−次のステージとは?

カオ: 更なる拡販に向けて、 会社としての体制を整えることです! そのためには、営業強化、オペレーションの改善、財務状況の精査などなどやることは山ほどあります。

−今回は貴重なお話を有難うございました!!

前編と中編の内容が気になる方は以下をご覧ください。

>> 前編では、ベトナムローカルマーケットを狙うその背景を公開!→ こちら

>> 中編では、シンガポール国立大学でMBAを取得した話を公開!→  こちら

カオさんの会社はこちらです→ 「Vi Nguyen(ヴィ・グエン)」

著者紹介
JellyfishHR Co.,Ltd
2013年8月から日系人材紹介会社としてベトナムに進出。現在「ハノイ」「ハイフォン」「ホーチミン」の3拠点にて、日系、非日系問わず人材紹介サービスを提供しており、常に100件を超える日本人向けのベトナム勤務の求人・仕事を保有している。
◆ホームページURL : https://jellyfishhr.jp
ベトナム求人・転職・就職をお考えの方はこちら
Voice ~ベトナム最前線で働く人の声~
その他の記事はこちら>
© Viet-jo.com 2002-2025 All Rights Reserved. 
※VIETJOベトナムニュースは上記の各ソースを参考に記事を編集・制作しています。 免責事項
新着ニュース一覧
小型EVタクシー「レッツゴー」、開業1年で500万人輸送 (17:27)

 小型電気自動車(EV)タクシーに特化した「レッツゴー・タクシー(Let’s Go Taxi)」は、2024年5月にサービスを開始してから1年間で約500万人を輸送し、走行距離は1500万kmに達した。  レッツゴー・タク...

テトラパック、ホーチミンで食品用紙容器工場の第2期を落成 (16:58)

 食品用紙容器の開発・製造を手掛けるスウェーデンのテトラパック(Tetra Pak)は3日、ホーチミン市ビンタン街区(phuong Vinh Tan)の第2ベトナム・シンガポールA工業団地(VSIP2-A)工業団地にある食品用・飲料用紙...

サングループ、ホーチミンで社会・都市交通インフラ整備を提案 (16:40)

 観光不動産開発を手掛けるサングループ(Sun Group)はこのほど、ホーチミン市人民委員会に対して、社会インフラおよび都市交通インフラに関する複数の大型プロジェクトの投資を提案した。これらの案件は官民パー...

8人兄弟の学者一族「グエン・ラン家」、故クオン氏を偲ぶ【後編】 (6/29)

 ベトナムを代表する考古学者・人類学者で、音楽家としても知られるグエン・ラン・クオン(Nguyen Lan Cuong)氏が2025年5月6日、ハノイ市のベトナム国家大学ハノイ校(ハノイ国家大学)医科薬科大学附属病院で死去...

地場NCS、AI活用のサイバーセキュリティエコシステムを発表 (16:23)

 ベトナム国家サイバーセキュリティテクノロジー(Vietnam National Cyber Security Technology Corporation=NCS)は2日、企業や組織のセキュリティ対策を強化するための人工知能(AI)を活用したサイバーセキュリ...

クアンニン省:年末まで毎週末に打ち上げ花火を実施 (14:33)

 東北部地方クアンニン省人民委員会は、同省文化スポーツ観光局の提案を受け、2025年7月4日から2026年1月1日までの毎週末(金・土)に、打ち上げ花火を実施することを決定した。地元住民や観光客向けのイベントと...

FPT、AIエージェント教育プログラムを導入 インド企業と提携 (6:18)

 ベトナムを代表するIT最大手FPT情報通信[FPT](FPT Corporation)は1日、インドの情報技術(IT)教育組織ジェットキング(Jetking)との間で、人工知能(AI)エージェント教育プログラムの

AI関連の地場スタートアップ「AI Hay」、1000万USD調達 (6:02)

 人工知能(AI)を活用した検索プラットフォームを開発する地場スタートアップのAIハイ(AI Hay)はこのほど、東南アジアを中心にテクノロジー分野のスタートアップ企業に投資するアルゴー・キャピタル(Argor Capita...

6月のベトジョー記事アクセス数ランキング (5:53)

 VIETJOベトナムニュースが6月に配信した記事のアクセス数ランキングをご紹介します。 1位:個人事業主への電子請求書義務化、店舗が敬遠で現金決済に逆戻り

6月のベトジョー記事10選:省・市再編の決議採択、国会閉幕など (5:30)

 6月は、第15期(2021年~2026年任期)国会第9回会議が閉幕しました。今国会では、34本の法律を可決し、14本の決議を採択しました。  国会では、全国63省・市の行政区を大幅に削減して34省・市とする行政区再...

クアンガイ省:ズンクアット経済区で新都市区開発、投資方針承認 (4:55)

 チャン・ホン・ハー副首相はこのほど、南中部地方クアンガイ省ズンクアット経済区内でのズンクアット東南新都市区北側・南側の2件の開発案件の投資方針を承認する決定に署名した。  ズンクアット東南新都市...

ベトナム航空、ダナン~大阪線を約5年ぶり運航再開 (4:39)

 ベトナム航空[HVN](Vietnam Airlines)は3日、2020年以来約5年ぶりにダナン~大阪線(VN336/VN337)の運航を再開した。同路線は週4便の運航となる。  ベトナム航空は同

スペースシフト、地場ベガコスモスと衛星データビジネス推進で提携 (3:21)

 衛星データ解析システム開発や衛星データ解析業務などを手掛ける株式会社スペースシフト(東京都千代田区)は、地場テクノロジー企業のベガスター・テクノロジー(VegaStar Technology、ハノイ市)グループで地理空...

TCJグローバル、地場日本語教育機関と提携 法人向け人材紹介を.. (2:37)

 外国人留学生向け進学・就職日本語コースの運営などを手掛ける株式会社TCJグローバル(旧:東京中央日本語学院、東京都新宿区)は6月16日、ベトナム国内で日本語教育と留学・就労者紹介事業を行うニャットファッ...

ラム書記長とトランプ米大統領が電話会談、貿易協定の枠組み合意 (3日)

 トー・ラム書記長はベトナム時間2日夜、ドナルド・トランプ米大統領と電話会談を行い、両国関係と両国間の相互関税について話し合った。  両首脳は電話会談で、両国関係が良好かつ急速に発展していることに...

©VIETJO ベトナムニュース 2002-2025 All Rights Reserved