ベトナムニュース総合情報サイトVIETJO [ベトジョー]
 ようこそ ゲスト様 

【第54回】一人当たり平均月収から見るベトナムの地域格差について

2021/07/17 00:00 JST配信

VIETJOベトナムニュース でも記事の掲載がありましたが、先日ベトナムの統計総局(GSO)が2020年の世帯生活水準調査を実施しました。 ビンズオン省 が最高の平均月収額だったという結果に驚いた人も少なくないかと思います。細かく見ると色々ツッコミどころのあるデータではありますが、今回は、この統計総局のデータを元に ベトナムにおける都市別の生活水準 について見ていきたいと思います。

省・市ごとの月間平均所得

統計総局のデータを元に各省別のデータを地図上に落とし込んだものが以下の図になります。緑色の省は平均収入が高い省、赤色は平均収入が低い省になります。 月間平均所得が700万VND(約3万3650円)を超えるビンズオン省 や、650万VND(約3万1250円)程度のホーチミン市、その他、ハノイ市ドンナイ省ダナン市カントー市などの地域の平均収入が高いのが地図上から見て取れると思います。 平均月収が最も高かったビンズオン省と最も低かった ディエンビエン省 では平均月収に4倍の開き があります。各省別の数字もかなりバラつきがあり、こういった収入格差が地方から都市部への人の流れを産んでいます。

画像を拡大

地方ごとの月間平均所得

このデータを地方別に展開したものが下図となります。こうして見るとホーチミン市やビンズオン省、ドンナイ省などのある東南部地方とハノイ市、ハイフォン市のある北部紅河デルタ地方の二つの地方の平均月収が高いのが分かります。北部紅河デルタ地方(月間平均所得=500万VND(約2万4040円))と北部山岳地方(同=275万VND(約1万3220円))は 隣接しているものの平均月収で見るとほぼ倍の格差 があります。

画像を拡大

地方別の収入源は?

この統計データでは収入源に関するデータも掲載されているのですが、収入源を地方別で分析したのが以下のデータになります。この収入源は「給与・賃金」「農業・林業・漁業などからの収入」「その他製造収入」「その他」で構成されているのですが、例えばホーチミン市・ビンズオン省などのある東南部地方の65%が給与・賃金からの収入などに対して、中部高原地方では同数値が41%に留まる代わりに、「農業・林業・漁業」や「その他製造収入」の割合が高いことがわかります。一概には言えませんが、 地方別の収入源に大きな違いがあり、大都市では企業勤務者の割合が多い ことが窺い知れます。

画像を拡大

省・市ごとの人口と購買力

このような形で地域ごとの所得を見ると、例えばダナン市、カントー市などの地域も市場展開の観点から魅力的に映ります。一方で、市場の魅力を考える場合には、一人当たりの購買力だけでなく、 「購買できる人の数」=「人口」 を考慮する必要があります。そこで省別の人口を地図上に落とし込んだものが以下になります。900万人の人口を誇るホーチミン市と800万強のハノイ市の二都市の人口がずば抜けているのが地図上に落とし込むと非常に分かりやすいかと思います。例えば、平均月収ではダナン市などもある程度の水準を占めるのですが人口は100万程度ということでホーチミン市の1/9程度です。

画像を拡大

「一人当たりの購買力」x「人口」の二つを考慮すると、やはりホーチミン市・ハノイ市の2都市の市場性は他の地域を大きく上回っています。それ以外の都市も大きな投資が行われたり、高い成長を続けていますが、人口を考慮に入れるとなかなか効率的な攻め手が見当たらない企業も少なくないようです。人口9000万を超えるベトナムですが、ホーチミン市・ハノイ市の1700万人を先ずはターゲットに市場開拓を行うのが現実的であり、一方で他の東南アジア新興国と異なり攻めるべき場所が2箇所ある点がベトナム攻略を難しくしている一つの要素ではないかと思います。

著者紹介
株式会社Asia Plus代表取締役社長 黒川賢吾

株式会社Asia Plus ( www.asia-plus.net )代表取締役社長。
NTT、ソニー、ユニクロにて海外マーケティングを担当。
2014年にAsia Plusを設立しベトナムマーケットリサーチサービス
「Q&Me( www.qandme.net )」を展開中


統計から見るベトナム
その他の記事はこちら>
© Viet-jo.com 2002-2025 All Rights Reserved. 
※VIETJOベトナムニュースは上記の各ソースを参考に記事を編集・制作しています。 免責事項
新着ニュース一覧
ニンビン省:国内最大級の教会「ランバン教会」が落成 (13日)

 北部紅河デルタ地方ニンビン省ザーバン村にあるランバン(Lang Van)教区は8日、約10年の建設期間を経て新たな教会「ランバン教会」の落成式を行った。  ランバン教区は1885年に創設された歴史ある教区で、19...

世界の美味しい料理トップ100、ベトナム料理が16位 和食は6位 (13日)

 世界中の伝統料理などを紹介するグルメサイト「テイストアトラス(TasteAtlas)」はこのほど、2025年版「世界の美味しい料理トップ100(Best Cuisines in the World)」を発表した。ベトナム料理は16位にランクイン...

「25年冬の人気観光地」にホーチミンが選出、トリップアドバイザー (13日)

 世界最大の旅行プラットフォーム「トリップアドバイザー(TripAdvisor)」は、世界6か国(米国、英国、フランス、オーストラリア、インド、日本)の旅行者への意識調査とサイトの利用状況データをもとに、2025年冬...

車いすでピックルボールに打ち込む人々 (7日)

 グエン・バン・フアンさん(男性・40歳)は毎週、東北部地方クアンニン省からハノイ市まで100km以上の道のりを三輪バイクで走り、ピックルボールに打ち込んでいる。フアンさんにとって、ピックルボールは障がいへ...

ホーチミンに自由貿易区を設立、国会決議 (12日)

 国会は11日、ホーチミン市に自由貿易区を設立して投資を誘致し、地域経済の中心地とするための特別制度の試行に関する決議を賛成多数で採択した。同市の開発にかかる特別制度の試行に関する2023年の国会決議第9...

国会、司法関連の法律2本を可決 受刑者の権利と義務を規定 (12日)

 国会は10日、改正刑事判決執行法および拘留・勾留・居住地制限措置に関する法律を含む、司法に関連する法律2本を可決した。  このうち、改正刑事判決執行法は15章180条で構成され、2026年7月1日に施行され...

国会、国家管理関連の法律4本を可決 汚職防止規制強化 (12日)

 国会は10日、◇汚職防止法の一部を改正・補足する法律、◇改正国会・人民評議会監視活動法、◇国民対話法・苦情申し立て法・告発法の一部を改正・補足する法律、◇国際条約法の一部を改正・補足する法律を含む、国...

25年1~11月期の新規設立企業17.8万社、前年同期比+20.9%増 (12日)

 財政省傘下統計局(NSO)が発表したデータによると、2025年1~11月期に全国で新規設立された企業は前年同期比+20.9%増の17万7993社、登録資本金の合計は同+20.9%増の1753兆2190億VND(約10兆3000億円)だった。同...

フェニカーと韓国緑十字、健康診断施設をハノイに開業 (12日)

 韓国の製薬会社である緑十字ホールディングス(GC Holdings=GC)はこのほど、ハノイ市で健康診断施設「GC&フェニカー・ヘルスケアセンター(GC&Phenikaa Healthcare Center)」を開業した。  同施設は、地場...

25年11月新車販売台数統計、月間販売台数は年内最多 (12日)

 ベトナム自動車工業会(VAMA)の発表によると、2025年11月におけるVAMA加盟企業とVAMA非加盟企業を合わせた新車販売台数(TCモーターおよびビンファスト=VinFast含まず)は前月比+4%増、前年同月比では▲11%減の3...

国会、交通・インフラ関連の法律3本を可決 遅延・欠航の補償など (12日)

 国会は10日、◇改正民間航空法、◇改正建設法、◇改正計画法の交通・インフラ関連の法律3本を可決した。  このうち、改正民間航空法は11章107条で構成され、2026年7月1日に施行される。  注目すべき点とし...

国会、社会・経済関連の法律14本を可決 報道規制の強化など (12日)

 国会は10日と11日、社会・経済分野に関する14本の法律を可決した。可決された法律は以下の通り。 ◇改正報道法 ◇疾病予防法 ◇改正大学教育法 ◇改正投資法 ◇改正預金保険法 ◇改正国家準備法 ◇破産再生

財政省、暗号資産取引市場の管理委員会を設立 (12日)

 国家証券委員会(SSC)は10日、財政省が「暗号資産取引市場管理委員会」を設立したと発表した。同委員会は、暗号資産市場を専門的に監督する国内初の機関となる。SSCのブイ・ホアン・ハイ副委員長が、暗号資産取...

国会、ザービン国際空港プロジェクトの実施を承認 (12日)

 国会は11日、北部紅河デルタ地方バクニン省で計画されているザービン国際空港建設プロジェクトの投資方針を承認する決議を採択した。投資総額は約196兆3780億VND(約1兆1600億円)となる見通しだ。  同空港は...

日越の環境省、企業の温室効果ガス排出量の透明性向上へ (12日)

 日本の環境省は、ベトナム農業環境省とコ・イノベーションのための透明性パートナーシップ(PaSTI)を通じた活動内容に関するオンライン会議を行った。  民間企業の透明性向上に向けて、ベトナムの温室効果ガ...

©VIETJO ベトナムニュース 2002-2025 All Rights Reserved