ホーチミン市郊外に住むAは、いつも市場近くの駐輪場にバイクを預ける時にこう思っていた「なんだ、ここの駐輪場の管理はなってないなー。駐車券も全くチェックしてないし、誰がどのバイクを持ち出してもわからないよな、これは」。こんなことを何度も思っているうちに。Aはついに自分のバイクを自分で盗んでみるという奇行に走っていた。
あるとき、駐輪場が賑やかな時間帯を狙って、Aはバイクを預け駐車券を受取った。Aは市場に入る振りをしわざと時間をつぶし、再び駐輪場に戻り駐車券を渡さずにそのままバイクを持ち出したのだった。もちろん管理人はいつものようにいいかげんで、駐車券をチェックをすることもなかった。
Aは家に戻りバイクを安全なところに隠し、再び歩いて市場に向かった。そしてたった今市場から出てきた振りをして駐車場に入り、キョロキョロと不安げな表情で自分でバイクを探す振りをして、そしてこう叫ぶのであった。「あ~~~!俺の、俺のバイクがなくなった~!!」
Aはすぐさま駆けつけた駐車場の管理人に事を告げ、「どうしてくれるんだ責任を取って500万ドン(約3万5,000円)よこせ」と凄んでみた。しかしこの管理人は冷静に「よし、まずは警察に連絡だ。」と警察を呼ばれ、自作自演のバイク窃盗事件だけに、事情聴取でAはしどろもどろ。結局Aはあっけなく御用となった。
計画的にはバッチリだったが、自作自演のクライマックスである「叫びのシーン」があまりにもぎこちなかったのかもしれない。ここで、疑問が浮かぶ、なぜAは自分のバイクを盗む自作自演を演じようとしたのか?そんなに簡単に駐輪場からバイクを持ち出せるのなら、なにも自分のでなくとも、他人のバイクでもよかったはずなのだが・・・