ベトナムニュース総合情報サイトVIETJO [ベトジョー]
 ようこそ ゲスト様 

生き別れの親子、30年ぶりに再会 しかし・・・

2006/02/18 07:11 JST配信

 全てはベトナム戦争終結間近の1975年3月から始まる。戦争で荒れ果てた国道7号線を1台のトラックが、焼け付くような暑さの中を走っていた。トラックの荷台は大勢の人で込み合っており、1人の女性が、片手には3歳の息子を抱え、もう片方の手は車から落ちないよう、トラックの荷台を握り締めていた。突如、爆音が聞こえ、車は急停止、衝撃とともに子供は母親の手を離れ、滝の奥へと消えていった。

 同じ朝、ジャライ族のシウ・バーさんがいつものように、牛追いの仕事をしていると、茂みの中にだぶだぶの服を身に着けた男の子が倒れているのを発見した。彼女はすぐさまその子を抱え、一直線に村へと帰った。子供はフオンというキン族(ベトナムの主要民族、いわゆるベトナム人)名を持っていたが、彼女はあえてその子にシウ・フェというジャライ族名をつけ、村で最も貧しい家庭にもかかわらず、実の息子のように育てた。フェさんは徐々に村の人たちにも慣れ、ジャライ語を話すようになった。

 バーさんの養育の甲斐があり、フェさんは無事に成長、幼いころに両親を亡くした女性と結婚して幸せな家庭を築いていたが、幼いときと同じように、運命の悪戯に翻弄されたこともある。ある日、フェさんは飲み水を探しに出歩き、猛毒のスズメバチに刺されその場で失神、生命の危機に立たされたのだ。家に帰らぬフェさんをいぶかしみ、村総出で捜索が行われた結果、フェさんは土砂降りの雨の中発見された。村人たちはフェさんを20キロも離れた病院に搬送、ようやく一命を取り留めたという。フェさんは、「普通、人はただひとつの命しか持たないのに、私は2回も生命の危機を乗り越えたんです」と語る。

 依然貧乏とはいえ、国の援助などにより村の中では比較的豊かになったフェさんの家に、30年前生き別れになった実の両親と、生き別れになった後で生まれた弟が現れた。

 「この子です。本当に私の息子です。」とだけ言うと、母親はのどを詰まらせた。父親はまるで足に釘を刺されたかのように立ち尽くし、唇を震わせていた。家の庭先に所狭しと集まった村人たちも、30年ぶりの親子の再会に、心の中で必死に泣き声を抑えていた。

 一緒に暮らそうという父親の提案を、フェさんは、「僕はこの村でやることがあるからそれはできない。ここの人たちはいい人ばかりで、僕たち夫婦が本当に1文無しだった時、何も言わずに食料を分けてくれ、しかも家まで提供してくれたんだ。だから、僕はこれからこの村に恩返しをしていきたい。」と断った。彼の言葉に込められた信念と気力があれば、きっと彼は彼を育てたこの村に恩返しをすることができるだろう。

[2006年2月8日 Tien phong電子版].  © Viet-jo.com 2002-2024 All Rights Reserved. 
※VIETJOベトナムニュースは上記の各ソースを参考に記事を編集・制作しています。 免責事項
新着ニュース一覧
双日、地場SaaS企業のフィンベトに出資 (15:45)

 双日株式会社(東京都千代田区)は、ベトナムで主流となっている家族経営を中心とした小規模小売店の受発注管理やキャッシュレス決済用のスマートフォンアプリなどを手掛けるSaaS企業のフィンベトテクノロジー(Fi...

三菱重工、ベトナム現地法人を設立 駐在員事務所の機能を大幅強化 (15:42)

 三菱重工業株式会社(東京都千代田区)は、ベトナム現地法人「ベトナム三菱重工業(MITSUBISHI HEAVY INDUSTRIES VIETNAM)」を設立し、このほど本格活動を開始した。ハノイ市バーディン区に本社、ホーチミン市1区...

南北高速道路、カムラム~ビンハオ区間が開通 投資総額540億円 (14:34)

 南北高速道路の東側路線建設工事の一部である南中部沿岸地方カインホア省カムラム~南中部沿岸地方ビントゥアン省ビンハオ(Cam Lam~Vinh Hao)区間が26日午前に開通した。  同区間は全長78kmで、官民パート...

10代で結婚、30代で孫の世話…連鎖する児童婚 (21日)

 他に人のいない家の中で、タオ・バン・ポーさん(男性・36歳)が子供をあやして泣き止ませようとしている。一見、ポーさんが自分の子供をあやしているのかと思いきや、実はこの子供はポーさんの「孫」だ。  ...

国家ハラール認証センター設立、イスラム圏への輸出強化目指す (13:30)

 科学技術省品質測定基準総局傘下の適合認証センター(Vietnam Certification Centre=QUACERT)は24日、国家ハラール認証センター(HALCERT)の設立発表式典を開催した。  ハラール認証は、「イスラム法の定め...

大同工業、ベトナム子会社を増資 生産体制整備 (13:26)

 二輪車及び四輪車部品、産業機械部品などの製造・販売を手掛ける大同工業株式会社(石川県加賀市)は、同社が100%出資するベトナム子会社のD.I.Dベトナム(D.I.D Vietnam=DVN、北部紅河デルタ地方フンイエン省)...

半導体産業人材育成に1600億円投入へ、計画投資省報告 (6:22)

 ファム・ミン・チン首相は24日にハノイ市で開催された「半導体産業人材育成に関する会議」で、半導体人材育成制度を整備し、優遇的かつ具体的な仕組み・政策を策定することを指導し、教育施設や実験室、製作所...

中国人率いる違法高利貸しルートの元締めに有罪判決、年利2346% (6:01)

 南中部沿岸地方クアンナム省人民裁判所は25日、中国人率いる高利貸し・債権回収の取り立てルートの被告40人に有罪判決を下した。被告は、元締めの中国人3人と共犯のベトナム人37人。  ルー・ワン被告(37歳)...

ベトナムの「ロト6」で過去最高の当選額、賞金19億円 (5:20)

 財政省傘下のベトナムコンピュータ宝くじ社(ベトロト=Vietlott)はホーチミン市で23日、数字選択式宝くじ「パワー6/55(Power 6/55)」の抽選で特賞(Jackpot 1賞)に当選した幸運な男性2人に当選金を授与した。賞...

地場飲料大手会長親子の資産横領事件、元会長に禁固8年の判決 (5:02)

 地場大手飲料メーカーのタンヒエップファット商業サービス社(Tan Hiep Phat)のチャン・クイ・タイン元会長 兼 社長(男・71歳)とその娘2人の計3人が、企業経営者など複数の個人から不動産開発用地を不正取得した...

FPT、米国国際開発庁とクリーンエネ促進で提携 (4:29)

 FPT情報通信[FPT](FPT Corporation)はこのほど、米国国際開発庁(USAID)との間で、クリーンエネルギーの促進に向けた「ベトナム低排出エネルギープログラムII(V-LEEP II)」に関する

ウズベキスタン航空、タシケント~ニャチャン線を5月5日就航 (4:19)

 ウズベキスタンの国営航空会社であるウズベキスタン航空(Uzbekistan Airways)は5月5日、ウズベキスタンの首都タシケントと南中部沿岸地方カインホア省ニャチャン市(カムラン国際空港)を結ぶ直行便を就航する。 ...

システムエグゼベトナム、ダナンに新オフィスを開設 (3:02)

 システムインテグレーション事業などを手掛ける株式会社システムエグゼ(東京都中央区)のグループ会社であるシステムエグゼベトナム(SYSTEMEXE VIETNAM)は、ベトナムで4つ目となる新たなオフィスを南中部沿岸地...

ウェビナー「ベトナム国別ビジネス勉強会」、5月31日開催 (2:54)

 日本貿易振興機構(ジェトロ)横浜と神奈川産業振興センター(KIP)、神奈川県は、5月31日(金)の日本時間13時45分から16時15分まで、ウェビナー「ベトナム国別ビジネス勉強会」をオンラインで開催する。  ウェ...

2024年土地法の7月1日前倒し施行、国会に提案へ (25日)

 司法省は23日、2024年土地法(改正土地法)の第252条を改正・補足する国会決議草案を受領したと発表した。第252条は、土地法の施行日を2025年1月1日から2024年7月1日に変更することを規定している。  2024年...

©VIETJO ベトナムニュース 2002-2024 All Rights Reserved