ベトナムニュース総合情報サイトVIETJO [ベトジョー]
 ようこそ ゲスト様 

越僑博士、祖国への貢献は学生との小さな研究から

2010/11/07 08:30 JST配信
(C) VNExpress, Vu Le
(C) VNExpress, Vu Le 写真の拡大

 米国在住の越僑には、老後を祖国ベトナムで暮らしたいと考える人が多いが、グエン・ディン・ウエン博士は少し違う。ウエン博士は42歳にして、祖国の教育・研究に貢献しようと帰国を決意、2年前からホーチミン市国際大学で学生の指導と研究に打ち込んでいる。

 ウエン博士は1968年にベトナムで生まれ、13歳のときに家族と一緒に渡米した。1990年にカソリック・ユニバーシティ・オブ・アメリカの電子通信工学科を卒業し、その後同大学の修士・博士課程で研究を続けた。大学院卒業後は、1989年から1995年までアメリカ航空宇宙局(NASA)でエンジニアとして働き、1995年から2008年まで通信技術に関する米国国防省のコンサルタントを務めていた。そんな中、ウエン博士は仕事の傍ら、2006年からベトナム教育基金(VEF)の活動に参加するようになった。

 VEFのプログラムで、ウエン教授は年に2週間、ベトナムの大学で講義を行っていた。ある日の講義で、ウエン博士は学生たちに、一生懸命勉強して奨学金を得て、海外の大学で学び、そこで会得した研究成果や経験をベトナムへ持ち帰り、国の教育と技術に貢献すべきだと話した。すると1人の学生から、「先生はどうしてベトナムに帰国して国に貢献しないんですか?」と質問され、ウエン博士ははっとさせられたという。

 米国に戻っても学生の言葉が脳裏から離れず、ウエン博士はベトナムへの帰国を真剣に考えるようになった。帰国を決意したウエン博士は、妻と娘に相談したが猛反対されたという。しかし、ウエン博士は諦めることなく家族を説得し、遂に祖国ベトナムへの帰国に踏み切った。そして現在、ウエン博士はホーチミン市国際大学電子通信工学部で教鞭をとっている。

 給与は低くはないが、まだマイホームを買う余裕はなく、ウエン博士一家は親戚の家に同居させてもらっている。また、ウエン博士はベトナム人の暮らしに適応しようと、4区の家からキャンパスがあるトゥドゥック区まで毎日バス通勤をしている。帰国当初は英語しか話せなかった末娘も、今では流暢なベトナム語で家族や友達と話すようになったと語るウエン博士の顔がほころぶ。

 ウエン博士が大学で一番初めに教えたことは、お金がなければ研究できないという固定観念を捨てるということ。次に、学生たち自身で小さな共同研究から始めることを呼びかけた。また学生たちに奨学金の申請の仕方を指導し、自身のネットワークを活かして学生を海外の教授に推薦した。これまでにウエン博士が海外に送り込んだ学生は20人に上る。

 大学でのウエン博士と同僚、学生たちの研究テーマは、交通情報・水環境観察への通信システムの応用や、南中部の特産物であるドラゴンフルーツの栽培用ライトの開発など多岐にわたる。また大学外では、海外在住ベトナム人グループと協力して、貧困層の多い遠隔地の橋梁に太陽エネルギーを利用した外灯を設置した。

 ウエン博士は、暮らしに密着した小さな研究開発の積み重ねにより学生の科学への志を育てることをモットーに、今日も学生たちと研究に励んでいる。

[Vũ Lê, Vnexpress (GMT+7) - Thứ Tư, 19/10/2010].  © Viet-jo.com 2002-2025 All Rights Reserved. 
※VIETJOベトナムニュースは上記の各ソースを参考に記事を編集・制作しています。 免責事項
新着ニュース一覧
「アジアのベストレストラン」、ベトナムから1店舗が97位に選出 (3日)

 イタリアのサンペレグリノ(Sanpellegrino)とアクアパンナ(Acqua Panna)が冠スポンサーを務める「アジアのベスト50レストラン(Asia’s 50 Best Restaurants)」の2025年版と併せて発表された51~100位のレストラン...

訪日ベトナム人の犯罪検挙状況、検挙件数・人員ともに国籍別最多 (3日)

 日本の警察庁組織犯罪対策部はこのほど、令和6年(2024年)における組織犯罪の情勢(確定値版)を発表した。訪日外国人犯罪情勢に関するデータによると、2024年の国籍等別の総検挙件数・人員ともにベトナムと中国の...

クアンチ省:故レ・ズアン書記長の記念館が完成 (2日)

 北中部地方クアンチ省チエウフォン郡チエウタイン村で4月28日、南部解放・南北統一50周年(1975年4月30日~2025年4月30日)を記念して、故レ・ズアン書記長記念館の竣工式が開催された。  同省の重要革命史跡...

1975年4月30日、統一会堂でベトコンの旗を振った兵士の記憶 (4/27)

 1975年4月30日、特殊部隊の兵士だったファム・ズイ・ドー上尉(男性・75歳)は、南ベトナム大統領官邸(現在のホーチミン市の「統一会堂」)の2階に駆け上がり、南ベトナム解放民族戦線(ベトコン)の旗を何度も振っ...

ホーチミン:空港新ターミナル行き電気バス路線を運行開始 (2日)

 ホーチミン市交通公共事業局傘下の公共交通管理センターは4月28日、ホーチミン市1区サイゴンバスターミナル(ben xe buyt Sai Gon)とタンソンニャット国際空港を結ぶ「109番」の路線バスについて、このほど開業...

ベトジェットエア、5月5日限定で運賃55%割引キャンペーン (2日)

 格安航空会社(LCC)最大手ベトジェットエア[VJC](Vietjet Air)は、5月5日(月)の午前0時から23時までの1日限定で、ベトナム国内線と国際線のエコクラス運賃が55%割引(税など含まず)

4月のベトジョー記事10選:トランプ関税、石破首相訪越など (1日)

 4月は、ドナルド・トランプ米大統領が、世界各国からの輸入品に対し「相互関税」を課すと発表しました。180以上の国・地域に一律10%の関税を課した上で、国・地域ごとに異なる税率を上乗せし、ベトナムに対し...

4月のベトジョー記事アクセス数ランキング (1日)

 VIETJOベトナムニュースが4月に配信した記事のアクセス数ランキングをご紹介します。 1位:200年の歴史を有する毒ヘビ養殖村、高収入も危険と隣り合わせ

4月30日の南部解放記念日と5月1日のメーデーに読みたい記事8選 (4/30)

 今から50年前の1975年4月30日、サイゴンの南ベトナム大統領官邸(現在のホーチミン市の「統一会堂」)の正門に2台の戦車が突入し、サイゴンが陥落しました。これにより、長く続いたベトナム戦争が終結しました。 ...

ベトナム軍事歴史博物館、南部解放記念日に伴う5連休は入館無料 (4/30)

 ハノイ市ナムトゥーリエム区にあるベトナム軍事歴史博物館は、4月30日(南部解放記念日)と5月1日(メーデー)に伴う4月30日(水)から5月4日(日)までの5連休中の入館料を無料とすることを決めた。  今回の決定は...

世銀、ベトナムの25年GDP成長率予想を+5.8%に下方修正 (4/29)

 世界銀行(WB)は先般発表した最新レポートの中で、ベトナムの2025年における国内総生産(GDP)成長率予想を前回レポートの+6.8%から+5.8%へと▲1.0%pt下方修正した。理由として、世界的な貿易政策の不確実性や経...

ハイテク・GX・半導体分野の高付加価値化で日越協力フォーラム開催 (4/29)

 石破茂内閣総理大臣は28日午後、ファム・ミン・チン首相とともに、日越企業が会するハイテク・グリーントランスフォーメーション(GX)・半導体分野における高付加価値産業創出に向けた日越協力フォーラムに参加...

ラムドン省:国会民族評議会議長が党委書記に転任 (4/29)

 ベトナム共産党政治局は、国会民族評議会議長のイー・タイン・ハー・ニエ・クダム氏を、南中部高原地方ラムドン省共産党委員会書記(2020~2025年任期)に任命した。  同省で28日に開催された任命式には、政...

ホーチミン:ビンタン区にブックストリートが新たにオープン (4/29)

 「第4回ベトナム書籍・読書文化の日」開幕に合わせて25日、ホーチミン市ビンタン区にブックストリートが新たにオープンした。  ビンタン区ビンチドンB街区の高技術医療区内に設置され、広さ約2000m2に12の...

石破首相、クオン国家主席とマン国会議長と会談 (4/29)

 ベトナムを訪問している石破茂内閣総理大臣とルオン・クオン国家主席は現地時間28日午前11時20分から約45分間にわたり、国家主席府で会談を行った。その後、現地時間同日午後2時20分から約40分間にわたり、国会...

©VIETJO ベトナムニュース 2002-2025 All Rights Reserved