ベトナムニュース総合情報サイトVIETJO [ベトジョー]
 ようこそ ゲスト様 

ロンタイン空港建設、地図から消えた村と人々の新生活

2022/05/08 10:17 JST配信
(C) zingnews、新しい家屋の建設が進む再定住区
(C) zingnews、新しい家屋の建設が進む再定住区 写真の拡大
(C) zingnews、間もなく取り壊される家々
(C) zingnews、間もなく取り壊される家々 写真の拡大

 農家が建てた「庭付き一戸建て」

 「うちは、あと10日くらいかかるかしら」
 「なんだ、もう終わったと思ってた。テトには引っ越してたよね?」
 「知り合いの大工に頼んでるから、ちょっと遅いの。でも、まぁ、もうすぐよ」

 ヒエンさん(45歳)が、ロックアン・ビンソン再定住区の新居でクーさんと笑う。彼女は家の掃除をしながら私たちを出迎えつつ、気を抜かないで仕事をするよう大工に注意する。

 スオイチャウ村で暮らして20年あまりのヒエンさんは、夫とのあいだに2人の娘がいる。かつては土地を借りてキャッサバやカシューナッツを植えていたが、期待したような儲けは出なかった。

 「頑張っても、頑張っても、食べていくだけで精一杯。節約して、節約して何とか子供たちの学費を捻出して。家なんて間に合わせの葉葺だったし」と、ヒエンさんはスオイチャウ村で生活していた頃を思い出す。

 そんなある日飛び込んできた、ここに空港が建設されるらしいというニュース。彼女にはそれが、喜ぶべきものなのか、心配するべきものなのかわからなかったが、じきに自治体がやってきて土地の測量が行われ、立ち退き補償計画が知らされた。農地4000m2で受け取ることができた補償金は20億VND(約1140万円)近く。これに再定住区の1区画分の抽選券が付くということだったから、家族は喜んだ。

 抽選で引き当てたのは125m2の区画、農地を宅地に切り替えるための税金を少し払い、2021年なかばから家の建設をはじめ、2022年のテトが迫った頃、家はまだ60%の仕上がりだったが、一家は新居に引っ越した。

 「建設費は20億VNDちょっと。頑張ったのよ。大工は親戚に頼んでできるだけ費用を抑えて。補償金は家の建設に全部使っちゃったけど、なかなかいいでしょ。気に入ってるわ」とヒエンさんは言う。

 実はヒエンさんも夫もこの先の収入の当てがないのだが、娘が2人ともちょうど大学を卒業したところで、負担はずいぶん軽くなったという。「貯金もないので何か仕事を探しますよ。しばらく家にいて、勤めに出るといろいろ大変だとも聞くから、心の準備はしておきます」とヒエンさん。

 ヒエンさんより好条件だったのはチュンさん(62歳)である。彼は約2万m2の農地の補償金として100億VND(約5700万円)あまりを受け取ることができ、さらに再定住区の区画300m2を引き当てた。彼が20億VNDあまりをかけて建設した家は2021年末に完成した。

 立派な新居に暮らし、相当の貯金もでき、これが現実なのか信じられないことも多いという。「空港建設がなければ、この周辺の土地も今みたいに高くはないでしょうし、私たちは今も貧しい農家のままだったでしょう」と話すチュンさん夫妻は毎朝、コメや野菜を軒先に並べて行き交う人々に販売している。また何の経験もなかったが、コーヒーメーカーを購入し、飲み物販売などにも精を出している。

前へ   1   2   次へ
[Zing 20/03/2022, F].  © Viet-jo.com 2002-2025 All Rights Reserved. 
※VIETJOベトナムニュースは上記の各ソースを参考に記事を編集・制作しています。 免責事項
新着ニュース一覧
電子送金の報告義務、国内5億VND・国際1000USD以上が対象 (15:16)

 ベトナム国家銀行(中央銀行)は、マネーロンダリング防止法の一部条項を具体化する通達第27号/2025/TT-NHNNを発出した。同通達は11月1日に施行される。  通達によると、金融機関や関連する非金融業種の事業...

ホーチミン:学校の休み時間、携帯電話使用を制限 (14:59)

 ホーチミン市教育訓練局はこのほど開いたセミナーで、市内の普通教育機関での休み時間中に携帯電話や電子機器の使用を制限する計画案を明らかにした。  2段階で実施し、第1段階は、2025年10月から2025~202...

ベトナム航空、総額100億USDで大型機30機を追加導入へ (14:26)

 ベトナム航空[HVN](Vietnam Airlines)は、長距離国際線の拡大を視野に、100億USD(約1兆4800億円)を投じて最大30機の大型機を導入する計画を明らかにした。  機材の

「我が家」を夢見る18歳の少女 (21日)

 南部メコンデルタ地方ドンタップ省に住むファン・ゴ・ジエム・フオンさん(女性・18歳)には「我が家」がない。フオンさん一家は「自宅」を持ったことがなく、フオンさんはこの18年間、母方の祖父母や叔母の家な...

FPTとハノイ医大、街区・村の診療所にAED設置 国内初の取り組み (13:15)

 公共の場に自動体外式除細動器(AED)を設置するベトナム初の取り組みが始まった。心停止後の初動対応力を高め、救命率を向上させることが目的だ。ベトナムIT最大手FPT情報通信[FPT](

ベトナムのインターネット通信速度、初の世界トップ10入り (6:50)

 インターネット接続の性能を評価するウェブサイト「スピードテスト(Speedtest)」を運営する米国のオークラ(Ookla)社の2025年8月報告によると、ベトナムの固定回線インターネットの平均速度は261.8Mbpsとなり、...

ベトジェットエア、初のボーイング機を受領 (6:25)

 格安航空会社(LCC)最大手ベトジェットエア[VJC](Vietjet Air)は、米ボーイング社(Boeing)との間で締結した総額320億USD(約4兆7000億円)規模の200機の発注の一環として、初号機とな

電子マネー「MoMo」、チャブ・ライフと提携で健康保険事業参入 (5:38)

 ベトナムの決済アプリ大手「モモ(MoMo)」は、世界的保険グループであるチャブグループ(Chubb Group)傘下のチャブ・ライフ・ベトナム(Chubb Life Vietnam)との提携を発表し、健康保険商品「モモケア(MoMoCare)」...

ホーチミン:マイチート通りに市内初の自転車専用レーン設置へ (5:03)

 ホーチミン市当局は10月、ビンチュン街区(旧トゥードゥック市)のマイチート(Mai Chi Tho)通りに全長約5.8kmの自転車専用レーンの建設を開始する予定だ。投資総額は140億VND(約7800万円)余りとなっている。 ...

KDDI、VNPTとデジタルサービス推進で協業 (4:53)

 KDDI株式会社(東京都港区)は11日、ベトナム郵便通信グループ(Vietnam Posts and Telecommunications Group=VNPT)との間で、ベトナムにおけるデジタルサービスの推進を目的とした戦略的パートナーシップを締結...

多摩川電子ベトナム、フンイエン省の新工場が間もなく完成 (4:12)

 株式会社多摩川ホールディングス(東京都港区)の孫会社である多摩川電子ベトナム(TAMAGAWA ELECTRONICS VIETNAM)は、移転用地として取得した用地で新工場の建設工事を進めており、9月末に新工場が完成し、10月29...

中尾製作所、ハノイにベトナム現地法人を設立 (3:36)

 家具・建築用金物製造販売を手掛ける株式会社中尾製作所(三重県津市)は4日、東南アジア地域における販売体制の強化を目的として、ベトナム現地法人をハノイ市に設立した。  ベトナム現地法人「中尾ベトナム...

ベトナム家具・建設展示会、ホーチミンで10月1日から開催 (2:56)

 ホーチミン市タンミー街区(旧7区)のサイゴンエキシビション&コンベンションセンター(SECC:799 Nguyen Van Linh, phuong Tan My, TP. Ho Chi Minh)で、10月1日(水)から4日(土)まで、「第2回ベトナム家具・建設...

ベトナム主要指導者、政治局決定で「四柱」から「五柱」に (22日)

 ベトナム共産党政治局は、政治システムにおける職位・職務区分を改定する決定第368号-QD/TWを公布した。同決定は9月8日から発効した。  同決定によると、中央から基層レベルまでの職位・職務区分は以下の4...

ビンF、26年に電動バイク150万台販売へ 市場シェア50%目指す (22日)

 地場系コングロマリット(複合企業)ビングループ[VIC](Vingroup)傘下の電気自動車(EV)メーカーであるビンファスト(VinFast)は、2026年における電動バイクの販売目標を150万台に設定

©VIETJO ベトナムニュース 2002-2025 All Rights Reserved