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クオン氏は80歳を過ぎてもバイクで仕事に出かけ、子供や孫が「危ないから」と送迎を申し出ても、故ホー・チ・ミン主席の名言を真似て「独立と自由ほど尊いものはない。自ら動くことほど楽しいものはない」と冗談交じりに話していたそうだ。
クオン氏は、考古学者・人類学者として1093体もの人骨を研究した功績から、ベトナム版ギネスブックのベトナム・ブック・オブ・レコード(ベトキングス=Vietkings)から、「ベトナムで最多の1093体の古代人の骨を研究した人物」として認定されたこともある。
クオン氏は、類まれなる情熱で全国各地の遺跡や洞窟に足を運び、古代人の痕跡を収集・復元・保存するために奔走した。そして、古代人の骨を扱うクオン氏の手は「黄金の手」とも呼ばれた。
「考古学研究所の多くの研究者や職員が、兄は古代人の骨の研究の分野で傑出した人物だったと認めています。兄はまた、ハノイ市のダウ寺の2体の像のような即身仏を調査し、『像葬』という形式を発見しました。研究者チームを率いてこの即身仏の修復も手がけました。最近では、彼の著書『人骨は私たちに何を語るのか?(Bo xuong nguoi noi voi chung ta dieu gi?)』が、2024年の第7回国家図書賞でB賞を受賞しました」と、チュン氏はクオン氏の研究への情熱と貢献について語る。
クオン氏は、末期がんと判明する数か月前までハノイ市ホアイドゥック郡キムチュン村のブオンチュオイ(Vuon Chuoi)遺跡で数百体の人骨を発掘していた。この古代の墓地には、青銅器時代にあたる約4000年前の先ドンソン文化(フングエン文化後期~ドンダウ文化初期)と、約2000年前のドンソン文化に属する墓が集中しており、クオン氏はこれらの研究を通じて、現在のハノイ市の地域に先史時代から人類が存在したことを証明し、その歴史を解き明かすことを目指していた。
人生の大半を研究に捧げたクオン氏だが、その一方で、過酷な発掘現場や研究室での徹夜作業の合間には、音楽にも情熱を注いでいた。