ベトナムニュース総合情報サイトVIETJO [ベトジョー]
 ようこそ ゲスト様 

【第5回】サパの民族刺繍は中国産!?

2017/10/25 08:45 JST配信

皆様、こんにちは。

Threads 代表の東山です。

ついに5回目です!

月一回掲載のコラムも 初回 からあっという間に半年が経ちました。

この話を頂いた当初は、途中で降板させられるのではないかと心配しておりましたが、いつも読んでくださっている皆様、そしてベトジョーライフ編集部の皆様のお蔭で本日まで掲載することができました。

改めて御礼を申し上げます。

「民族」、「文化」

これは夢と希望に満ちた言葉ではありますが、時には滑稽な幻影の代名詞でもあります。

日常生活でなんとなく口にする言葉ですが、その定義をちゃんと考えて話す人は果たしてどのくらいいるのでしょう。

もしかして本当は考えるのを恐れているかもしれません。

作り上げた仮想の現実に真剣に立ち向かうと自分のアイデンティティすら分からなくなるからです。

私がサパにいる時に、よく頭に浮かんだ二つの疑問です。

「自分の文化とサパの文化、果たして本当に違うのか」

「民族の枠によって創られた文化というアイデンティティは果たして本当に存在するのか」

確立された文化を持つ自分でも、もし同じ環境に直面したら少数民族と同じ行動をとるかもしれないと思います。

個性、独自性などが強調されている現代社会において、実は私たちは、世界そして自然界で同様性を見出す優しい心を必要とされているのかもしれません。

今回は、皆さんが サパ に行かれる際には必ず出会える少数民族の モン族とザオ族 についてご紹介させて頂きます。

2つの民族は衣装等でははっきりとその違いが見られますが、それぞれの民族トーテム(totem=部族・氏族などと特別の関係にあると信じられる動植物・自然物。また、それを造形化した記号)を見ると、実は彼らにも多くの同様性が見られます。

※裏情報も加えつつ、モン族とザオ族について紹介させて頂きますが、色々教えるとなるとサパの皆さんから苦情が来る恐れがあります!詳しく知りたい方は弊団体のフェイスブックページから個人的に問合せて頂ければと思います!「この刺繍は本物なの?」など、可能な限りお応えしたいと思います。

Threadsのフェイスブックはこちら >> https://www.facebook.com/threads.jp/

モン族の女性たち

サパに到着すると笑顔で迎えてくれる黒の衣装を身につけるモン族の女性たち。

山岳地域でも平地に近いところに住むモン族は昔から他族との付き合いも多く、性格も関西人みたいに陽気でとても親切 です。

商売上手なところもあり、めっちゃゴリ押しの一面もあります。

そして、こちらが「Yes」と言うまで押し通すというのが彼女たちの流儀。

もちろん騙してくることはないので、心配は要りません。

ザオ族の女性

弊団体支援対象者のティムさん

ザオ族はモン族と対象的で割とシャイなところが多い です。

サパに行ったことのある人の中でも、ゴリ押しのモン族にトレッキングツアーに連れて行かれ、そもそもザオ族と出会えませんでしたという方もいるでしょう。

ザオ族の彼女たちを見つける方法ですが、目印は赤のスカーフを頭につけ、どこかの片隅で静かにお客さんを覗き込むような目つきで商売をしています。

それらが大体ザオ族です。

普段は 山岳地域の中でも高いところに住んでいるため、人との接触も少なく、割と内気なところがあるのがザオ族の特徴 と言えます。

真逆の2族のデザインから見る同様性

左:ザオ族の衣装   右:モン族の青染め  

よく民族系の商品のデザインにあるのはこういった幾何的な模様です。

どちらも星をイメージにしていますが、星というのは遠くでキラキラと輝く未知なものといったイメージから、パワーや運命を象徴しています。

代々受け継がれてきた模様で、昔は自然に対する崇拝やリスペクトから生み出したものだそうです。

星以外にもそのような模様を衣服のデザインに取り入れることで、 山岳地域の人々の生命に対する願いを垣間見ることができます

モン族とザオ族の方から話を伺っていると、このようなトーテムは実はとても素朴で生活に密接しているものばかりです。

ですが、自分の部族を表すものはほとんど見当たらないのが事実です。

例えば上の画像のHouse(上段右から2つ目)の模様を見て頂きたい。

弊団体が作っているものにも出てきています。

羊革の上に直接刺繍を施したハンドバッグ

よく見るとHouse(家)の模様に壁があって、その隣に田んぼがある。

なるほど、この ザオ族の刺繍には田園の村の景色が描かれている のですね。

同じモチーフをしたものが白モン族にもあります。

そもそもどうやって工芸品を作るの?

材料、そしてテクニックの違いなど色々ありますが、 ザオ族は生地の裏を見て刺繍しているのが特徴 です。

そのため、ザオ族の刺繍は独自性が保たれており、学ぶには大変な労力がかかるものです。

私もかつて挑戦を試みたのですが、マス目が細かすぎて、慣れてない人には目にものすごい負担がかかる作業です。

その上、裏地から刺繍をするため、全体像が見えない中で「右です、左です」と言われるまま針を動かしたのですが、ひっくり返して見た時に悲惨なものになっておりました…。

ナイショ話~その1~

ザオ族は自分たちで布や糸を一から作ったりはしないので、市販のものを買って刺繍しております。

「えーーー、オーガニックではないの?」

と皆さんびっくりするのであろう…。

残念ながら、すべてオーガニックで作ると結構な値段しちゃいますので、そこは我慢するしかないですね。

ちなみに50cm x 50cmの刺繍ものですと、原材料費は20万VND(約1000円)で、それにプラス1~2か月の労働ですので、まあ50万VND(約2500円)くらいは要求してくるでしょう。

逆にそのくらいの大きさで50万VNDよりも安い値段のものは要注意です。

中国産かもしれません…。

一方、 モン族は自分たちで布から作ります

ヘンプ(hemp=アサ科の大麻草)を収穫し、洗ってから乾燥、そして色々な過程を踏んでから下のような布ができています。

ザオ族と違ってモン族は色鮮やかなものが好きです。

しかし、このように色彩豊かにするためには市販の糸を買う必要があります。

残念ながらここでも 完全オーガニックは不可能です

ナイショ話~その2~

上記の通りモン族のものは色鮮やかで種類も多いですが、気をつけなければいいけないのはハンドメイド品と機械製品のものです。

さて、突然ですが質問です。

この4つの中で本物のハンドメイド品はどれでしょう?

いきなりレベルの高い問題で申し訳ございません!

答えは、実は右上の布が本物となります。

唯一のハンドメイド品

写真からだと分かりにくいのですが、 クロススティッチの緩さがハンドメイドの特徴 です。

また、全体的に大きいものが多く、このくらいのサイズの刺繍ものは機械製品の可能性が低いです。

機械ものの特徴として、以下のことが挙げられます。

1、布のマス目1つ1つがすごく綺麗で均一してるもの

2、左上のもののように、縫い目も均一なもの

3、全体の形が一切ゆがんでなく、しっかりしたもの

4、ハンドメイドのものの値段の半分

このように、ハンドメイドと比べて機械は大変正確で、均一かつ安いものを作り出しています。

人間の知恵が集約した素晴らしい機械ものも良ければ買ってあげてください!

結局いくらの値段が妥当?

あんまりここで大声で言うとサパの皆さんに申し訳ないので一例だけを挙げます。

実際のお値段は、左のものが15万VND(約750円) 右のものが7万VND(約350円)です。

もちろん、一般の観光客にはその倍くらいの値段で言ってくるかもしれませんが。

イメージで言いますと、値段の相場は安いものから、

機械製品 < モン族クロススティッチもの < ザオ族の刺繍 という感じになってますが、具体的な判断はやはりケースバイケースとなります。

繰り返しになりますが、工芸品について詳しく知りたい方は弊団体のフェイスブックページから個人的に問合せて頂ければと思います!

Threadsのフェイスブックはこちら >> https://www.facebook.com/threads.jp/

今回は、複数の観点からサパの手芸品を紹介しました。

いかがしたか?サパの民族刺繍に少しでも興味を持って頂けると嬉しいです。

著者紹介
Threads 代表 東山

貧困層女性の自立支援を行っております非営利型社団法人代表の東山です。少数民族の伝統工芸をこよなく愛し、常に「村めぐり」をしております。村民達とさし飲みをしてます。

今回の連載は弊団体の活動とともに、観光だけでは見られない村人の「素」な一面を読者の皆さまにお見せできれば幸いです。


伝統工芸職人の光と闇
その他の記事はこちら>
© Viet-jo.com 2002-2025 All Rights Reserved. 
※VIETJOベトナムニュースは上記の各ソースを参考に記事を編集・制作しています。 免責事項
新着ニュース一覧
国会、26年国家予算案を採択 財政赤字対GDP比4.2% (6:50)

 国会は13日、2026年の国家予算案に関する決議を賛成多数で採択した。2026年の国家予算の主な指標は以下の通り。 ◇歳入:2529兆4670億VND(約14兆7922億円)     中央政府の歳入:1225兆3560億VND(約7兆16...

ホンダ、ベトナムでの二輪車通年販売台数が20万台減少の見通し (6:47)

 ホンダはこのほど、2026年3月期第2四半期(中間期)の決算関連資料を発表した。2026年3月期第2四半期累計(2025年4〜9月)の連結業績は、売上収益が前年同期比▲1.5%減の10兆6326億円、営業利益は同▲41.0%減の...

ホーチミン:チョーライ病院がUV除菌ロボット導入、公立病院初 (5:27)

 ホーチミン市チョーライ病院は17日、紫外線(UV)照射除菌ロボット2台を導入したと発表した。公立病院としては、国内初の導入となる。手術室や臓器移植室、薬剤室などに設置され、手術前の無菌環境を確保する。 ...

ハノイ郊外の2つのトンネル、軍幹部をかくまった地下要塞 (16日)

 フランス軍との9年間におよぶ抗戦中、ハノイ市の旧ドンアイン郡ナムホン村(現在のフックティン村)と旧タインオアイ郡タムフン村(現在のタムフン村)の住民たちは、戦火から村を守り、また軍幹部をかくまいながら...

ハノイ:11月末から公共電動自転車を導入、レンタル料1時間200円 (5:14)

 ハノイ市は11月末から、公共電動自転車500台を導入し、既存のシェアサイクル網と併せて運用を開始する。  シェアサイクル事業を手掛けるチーナムグループ(Tri Nam Group)のドー・バー・クアン会長によると...

アルキア航空、イスラエル~ベトナム間を結ぶ初の直行便を就航へ (4:29)

 アルキア・イスラエル航空(Arkia Israeli Airlines)は、2026年1月にイスラエル最大都市のテルアビブとベトナムの首都ハノイ市とを結ぶ初の直行便を就航する計画だ。これにより、両国間の観光、貿易、投資促進に...

パナソニック、ベトナム拠点で洗濯機の累計出荷台数500万台達成 (4:18)

 パナソニック株式会社くらしアプライアンス社(東京都品川区)は、パナソニックAPベトナム(Panasonic Appliances Vietnam=PAPVN、ハノイ市)で洗濯機の生産を開始してから、2025年9月末で累計出荷台数500万台を達...

JBIC、BIDVと覚書締結 ベトナムの脱炭素分野で協業促進 (3:42)

 国際協力銀行(JBIC、東京都千代田区)は14日、ベトナム投資開発銀行[BID](BIDV)との間で、ベトナムにおける脱炭素化の支援に関する覚書を締結した。  ベトナム政府

カマウ省:第2回カニ祭り、11月22日まで開催 (2:35)

 南部メコンデルタ地方カマウ省アンスエン街区の省中央広場で11月16日(日)から22日(土)まで、「第2回カマウ省カニ祭り」が開催されている。第1回目は2022年の年末に開催された。  今年は「カマウカニ-森の香...

カインホア省:土砂崩れがバスを直撃、6人が死亡 19人が負傷 (17日)

 南中部地方カインホア省のカインレ峠(国道27C号線)で16日夜、大雨による土砂崩れが発生し、大手長距離バスのフタバスラインズ(Futa Bus Lines、Phuong Trang=フオンチャン)が運行するバスが土砂にのまれた。こ...

フランス海軍の艦船、ダナンに寄港 6日間の表敬訪問 (17日)

 フランス海軍のフロレアル級フリゲート「プレリアル(Prairial)」が14日、南中部地方ダナン市のティエンサ港に寄港し、19日まで6日間の表敬訪問を開始した。  歓迎式典には、ダナン市外務局や第5軍区司令部...

台湾ICT大手ライトン、ベトナム事業拡大で2億USD追加投資 (17日)

 台湾のICT業界大手であるライトン・テクノロジー(LITE-ON Technology)は、ベトナム事業の拡大に向けて、2億USD(約310億円)を追加投資する計画だ。  10月末の投資家との会合で取締役会が決議したもので、増...

ウィンコマース、AI活用で店舗最適化 今後5年で1万店舗体制へ (17日)

 畜産、食品・飲料、小売、鉱山採掘を手掛ける持ち株会社マサングループ[MSN](Masan Group)の傘下で小売事業を展開するウィンコマース貿易サービス(Wincommerce=WCM)は、2025年9月

クアンガイ省:都市区でミミズ大量死、専門家「土壌汚染の恐れ」 (17日)

 南中部地方クアンガイ省カムタイン街区(phuong Cam Thanh)にあるフーミー都市区内で14日午前、数千匹のミミズが地中から路上に這い出し、歩道一面に広がって死んでいるのが確認された。この異常な現象は13日夜...

ラオカイ省、アイン党委副書記が人民委主席を兼任 (17日)

 14日に開かれた西北部地方ラオカイ省人民評議会の会議での決定を受け、同省共産党委員会のグエン・トゥアン・アイン副書記が、同省人民委員会主席(2021~2026年任期)を兼任することが決まった。  アイン氏...

©VIETJO ベトナムニュース 2002-2025 All Rights Reserved