ベトナムニュース総合情報サイトVIETJO [ベトジョー]
 ようこそ ゲスト様 

【第55回】タケノコの如く店舗数を増やすBach Hoa Xanhの成功の秘訣とは

2021/08/27 00:00 JST配信

ベトナムではCovid-19の影響で、食料品などの生活必需品の確保が注目を集めていますが、食料品小売の中でここ数年注目を集めているのが Bach Hoa Xanh です。まだ開業から6年に満たない食料チェーン店舗なのですが、ベトナム人の生鮮食品確保の場として大きくビジネスを伸ばしています。今回はこのBach Hoa Xanhの成功の背景について解説したいと思います。

Bach Hoa Xanhは、携帯チェーンのThe gioi di dong や、家電チェーンの Dien May Xanh などを手がけるMobile World Investment Corporation が2015年からスタートさせた小型サイズのスーパーです。毎年順調に店舗を拡張させ、2021年7月段階では既に店舗数は1900店舗を超えるまでに成長しています。ベトナムのコンビニエンスストアの店舗数がベトナム全土で1000店舗に満たず、その店舗数がここ数年ほぼ横ばいであることを考えてもその成長の速さは一際目を引きます。

現在、Bach Hoa Xanhの店舗は南部に集中しています。ベトナムで現在最も多くの店舗を展開しているミニスーパーは Vinmart+ で2000店舗強の店舗数なのですが、南部だけで2000店舗弱の店舗を展開しているBach Hoa Xanは地域を南部だけに限ると最も店舗数の多い食品スーパーを言うことができます。ちょっとした南部の地方都市にいってもBach Hoa Xanhは大通りに店舗を展開しています。

それではBach Hoa Xanhの強さの秘訣はどの様な点にあるのでしょうか?

一つは店舗出店能力です。Bach Hoa Xanhを展開するMobile World Investment Corporationはベトナム随一の携帯電話チェーンや家電チェーンを展開しており、出店に関する経験が豊富で他社よりも効率的に出店展開を行うだけの知識・リソースを備えています。また、出店に関してはベトナムの主婦層が生鮮食品を日常的に購入するウェットマーケット近隣に積極的に出店することでユーザの獲得を目指す姿勢が明確です。

また、そのスピードも特筆すべき点として挙げられます。例えば大型店舗を実験的に展開してみたり、家電ショップの一部をスーパーに置き換えたりと、変化のスピードが非常に早く、実験的に小規模にサービスを展開しうまくいく様であればすかさず横展開するというオペレーションの流れが非常に明確です。このスピードもThe gioi di dongやDien May Xanhなどの経営から培われたものと考えられます。

最後に、デジタルへの適応の高さについても彼らの強みの一つとして挙げられます。Bach Hoa Xanhのウェブサイトは月間で400万アクセス以上を誇る国内Top 10のECサイトとなっています。食品のEC化は例えばITや化粧品などと比較すると遅れている分野なのですが、そんな中Bach Hoa Xanhは早くからデジタルに力を入れており、ソーシャルディスタンス下にある現在、デジタルの売上は前年比4倍と著しい成長を見せています。

こういった様々な活動によって、Bach Hoa Xanhの一店舗当たりの売上や収益性は他ミニスーパーと比較しても非常に高いものとなっています。例えば同じ様に大量出店を続けるVinmart+と比較しても店舗当たりの売上の高さは顕著で、また店舗数を増やしながらも高い店舗あたりの売上を確保しています。直近の2021年7月においては、ソーシャルディスタンスの影響により一店舗当たりの売上は最高額を記録しています。

今後のBach Hoa Xanhですが、順調に店舗展開を進めるとともに中期的には現在店舗展開がなされていない北部への進出などを進めていくと予想されます。また、彼らが得意とするデジタルを利用したサービスを展開を強化していくのではないでしょうか。現在はまだ、一般小売店舗やウェットマーケットでの生鮮食品の購入が一般的ですが、Bach Hoa Xanhのような事業者がベトナム人の買い物習慣に変化を与えていくのではないでしょうか。

著者紹介
株式会社Asia Plus代表取締役社長 黒川賢吾

株式会社Asia Plus ( www.asia-plus.net )代表取締役社長。
NTT、ソニー、ユニクロにて海外マーケティングを担当。
2014年にAsia Plusを設立しベトナムマーケットリサーチサービス
「Q&Me( www.qandme.net )」を展開中


統計から見るベトナム
その他の記事はこちら>
© Viet-jo.com 2002-2025 All Rights Reserved. 
※VIETJOベトナムニュースは上記の各ソースを参考に記事を編集・制作しています。 免責事項
新着ニュース一覧
ベトナム人ラッパーがNFTで音楽アルバムを発売、国内初 (5日)

 ベトナム人ラッパーのPjpoは6月3日、NFT(非代替性トークン)マーケットプレイスの「ダゴラ(Dagora)」と協力し、NFT形式で音楽アルバム「131km」をリリースした。  NFTでの音楽アルバム発売はベトナムで初め...

ダナン:ヘリコプター遊覧ツアーを3年ぶり再開 (5日)

 南中部地方ダナン市で2日、ヘリコプター遊覧ツアーが正式に再開された。  国防省ベトナムヘリコプター総公社(VNH)傘下の北部ヘリコプター(VNH North)が運航するもので、景観鑑賞と最新の航空技術体験を融合...

北部最大のテーマパーク「ビンワンダーズ・ブーイエン」が開業 (5日)

 地場系コングロマリット(複合企業)ビングループ[VIC](Vingroup)は1日、北部紅河デルタ地方ハイフォン市ブーイエン島(dao Vu Yen)に北部最大規模となるテーマパーク「ビンワンダーズ

8人兄弟の学者一族「グエン・ラン家」、故クオン氏を偲ぶ【後編】 (6/29)

 ベトナムを代表する考古学者・人類学者で、音楽家としても知られるグエン・ラン・クオン(Nguyen Lan Cuong)氏が2025年5月6日、ハノイ市のベトナム国家大学ハノイ校(ハノイ国家大学)医科薬科大学附属病院で死去...

小型EVタクシー「レッツゴー」、開業1年で500万人輸送 (4日)

 小型電気自動車(EV)タクシーに特化した「レッツゴー・タクシー(Let’s Go Taxi)」は、2024年5月にサービスを開始してから1年間で約500万人を輸送し、走行距離は1500万kmに達した。  レッツゴー・タク...

テトラパック、ホーチミンで食品用紙容器工場の第2期を落成 (4日)

 食品用紙容器の開発・製造を手掛けるスウェーデンのテトラパック(Tetra Pak)は3日、ホーチミン市ビンタン街区(phuong Vinh Tan)の第2ベトナム・シンガポールA工業団地(VSIP2-A)工業団地にある食品用・飲料用紙...

サングループ、ホーチミンで社会・都市交通インフラ整備を提案 (4日)

 観光不動産開発を手掛けるサングループ(Sun Group)はこのほど、ホーチミン市人民委員会に対して、社会インフラおよび都市交通インフラに関する複数の大型プロジェクトの投資を提案した。これらの案件は官民パー...

地場NCS、AI活用のサイバーセキュリティエコシステムを発表 (4日)

 ベトナム国家サイバーセキュリティテクノロジー(Vietnam National Cyber Security Technology Corporation=NCS)は2日、企業や組織のセキュリティ対策を強化するための人工知能(AI)を活用したサイバーセキュリ...

クアンニン省:年末まで毎週末に打ち上げ花火を実施 (4日)

 東北部地方クアンニン省人民委員会は、同省文化スポーツ観光局の提案を受け、2025年7月4日から2026年1月1日までの毎週末(金・土)に、打ち上げ花火を実施することを決定した。地元住民や観光客向けのイベントと...

FPT、AIエージェント教育プログラムを導入 インド企業と提携 (4日)

 ベトナムを代表するIT最大手FPT情報通信[FPT](FPT Corporation)は1日、インドの情報技術(IT)教育組織ジェットキング(Jetking)との間で、人工知能(AI)エージェント教育プログラムの

AI関連の地場スタートアップ「AI Hay」、1000万USD調達 (4日)

 人工知能(AI)を活用した検索プラットフォームを開発する地場スタートアップのAIハイ(AI Hay)はこのほど、東南アジアを中心にテクノロジー分野のスタートアップ企業に投資するアルゴー・キャピタル(Argor Capita...

6月のベトジョー記事アクセス数ランキング (4日)

 VIETJOベトナムニュースが6月に配信した記事のアクセス数ランキングをご紹介します。 1位:個人事業主への電子請求書義務化、店舗が敬遠で現金決済に逆戻り

6月のベトジョー記事10選:省・市再編の決議採択、国会閉幕など (4日)

 6月は、第15期(2021年~2026年任期)国会第9回会議が閉幕しました。今国会では、34本の法律を可決し、14本の決議を採択しました。  国会では、全国63省・市の行政区を大幅に削減して34省・市とする行政区再...

クアンガイ省:ズンクアット経済区で新都市区開発、投資方針承認 (4日)

 チャン・ホン・ハー副首相はこのほど、南中部地方クアンガイ省ズンクアット経済区内でのズンクアット東南新都市区北側・南側の2件の開発案件の投資方針を承認する決定に署名した。  ズンクアット東南新都市...

ベトナム航空、ダナン~大阪線を約5年ぶり運航再開 (4日)

 ベトナム航空[HVN](Vietnam Airlines)は3日、2020年以来約5年ぶりにダナン~大阪線(VN336/VN337)の運航を再開した。同路線は週4便の運航となる。  ベトナム航空は同

©VIETJO ベトナムニュース 2002-2025 All Rights Reserved