信じ難いことだが、タイビン省の中心街では麻薬が大っぴらに売られており、一見の客であろうと常連客であろうといとも簡単に買うことができるのだ。昼間、交通警察のすぐそばの植え込みのエリアで麻薬が自由に取引されている。500mの長さのファン・バー・ヴァイン通りは住民たちから"麻薬通り"と呼ばれ、およそ10か所で麻薬を買うことが可能だ。
また、早朝から真夜中まで始終麻薬中毒者がうろついている。午後10時以降は数十人の中毒者と売春婦がタイビン総合百貨店のすぐ前にある店に集まって朝までをそこで過ごす。この店の麻薬はいかにも悪人面をした50歳近いトゥイという女が取り仕切っており、トゥイは中毒者を売人として使っている。売人の取り分は売り上げの2割相当のヘロインである。
売人の中には警察が巡回中でも植え込みの陰に隠れて商売を続ける者もいる。ファン・バー・ヴァイン通りは、ここ何年にも渡って世論を騒がせてきた悪名高い麻薬の売人たちの馴染みの場所である。既に捕まって服役している者もいるが、法の網の目をかいくぐって現在も犯罪行為を続けている者もいる。また、親子や兄弟が揃って麻薬犯罪に手を染めているケースもあとを絶たない。前述のトゥイの家族もそうであり、いつでも家族のうち誰かしらが牢屋に入っているのだという。