ベトナムニュース総合情報サイトVIETJO [ベトジョー]
 ようこそ ゲスト様 

大事故を乗り越え幸せをつかんだ客室乗務員

2007/03/18 08:21 JST配信

 今から6年ほど前、ベトナム航空の客室乗務員が巻き込まれた大きな交通事故があった。中でもホアン・ティ・トゥー・ハンは体中に骨折や打撲を負い、誰も彼女が生き延びるとは思えないほどの重傷だった。しかし若くて体力があったのと、家族や友人の支えがあって、彼女は次第に回復していった。その時彼女はまだ、もっと恐ろしいことが待ち受けていることを知らなかった。事故の6カ月前に結婚したばかりの夫が、重傷を負った彼女から逃げるように去ってしまったのだ。

 2006年8月、筆者は「ハン−死のふちから生還した客室乗務員」という記事を書いた。その時彼女に今後の夢を尋ねると、当時34歳の彼女は「健康な体と温かい家庭です」と答えた。他の人にとっては何でもないようなことだが、彼女にとっては決してそうではなかったのだ。

 しかし今回のインタビューに同席していたのは、なんともうすぐ結婚するという男性だった。彼の名前はグエン・キム・ティエン。軍の幹部で、男らしくまっすぐな印象の男性だった。「私たちがお互いを思う気持ちは全く平等です。私一人が勇気ある人間などと思われたくはないのです。ハンは決して、昔話にあるような迎えに来てくれる男性を待つかわいそうな女性ではないのだから」

 彼女について書かれた記事を読んだグエンは、彼女こそは自分が何年も前からひそかに思っていた人だと直感した。「10年ほど前、私たちはホーチミン外国語大学の同級生でした。ハンはとても美人で、私たちはただ一緒に登校するだけの仲。私はとうとう最後まで彼女に思いを告げることはありませんでした。テレビでニュースを見たときは本当に驚きました。もう何年も会っていないけれど、彼女は幸せに暮らしていると思っていました。私も家族も皆テレビを見て泣きました。そして翌朝、私は彼女の職場に電話をしたのです」 ハンはもう何年も会っていないというのに彼のことがすぐに分かったという。「キム・ティエン」という女性のような名前が印象に残っていたからだ。たくさんの励ましの電話の中で、それはまさに運命の巡り合わせのようなものだった。

 愛が芽生えるようになったのはいつかと尋ねると、ティエンはこう答えた。「テレビで彼女を見たときからです。そして傷ついた彼女のそばにいたいと思ったのです。たとえ彼女が自分のことを愛していなくても、他の人と結婚していたとしても」 それに対してハンはこう言っている。「彼の気持ちを知った時、うれしさとともに不安も隠せませんでした。自分には彼の愛を受ける資格はないと思ったし、きっと冗談を言っているのだろうと思いました。でも次第に彼が本気だと分かってきたのです」

 家族も同僚も応援してくれているとのことで、結婚式には皆駆けつけると言ってくれた。結婚通知だけで結婚式は挙げないつもりだったが、皆がするようにいったのだという。ハネムーン先も遠くではなく2人の故郷で、その後は軍の官舎に住む予定だという。「まずは彼女のリハビリの部屋を準備しなくては」とティエンは言い、「彼と一緒になってから、やっとリハビリに取り組むようになったのだけど、怒られてばかりで・・・」とハンが言う。

 結婚式はこじんまりとしていながら温かい式で、同僚や友人がたくさん出席した。歌声が響き、花嫁はピンクのウエディングドレスに身を包んで幸せそうだった。ハンの父親は「この7年間で今日は最も幸せな日だ」と繰り返した。「ティエンは客室乗務員にとって英雄でしょう?」「いいえ、それは夫としての健闘を見てからよ」 そんなやりとりに、ティエンは力強く「皆さん、僕は一生かけてハンへの愛を証明してみせます!」と答えた。

 最後にハンの主治医が2人を祝福して言った。「私はあなたたちを病から救うことはできるが、結婚の危機から救うことはできないから、ここで人生の指針となる言葉をあげよう。意見が食い違うことがあっても、さまざまな困難を2人で乗り越えていきなさい。どんなことがあっても愛があれば運命を変えることができ、相手の痛みを和らげることができるのだから」

[2007年2月19日 Tien Phong紙 電子版].  © Viet-jo.com 2002-2025 All Rights Reserved. 
※VIETJOベトナムニュースは上記の各ソースを参考に記事を編集・制作しています。 免責事項
新着ニュース一覧
ベトナム人ラッパーがNFTで音楽アルバムを発売、国内初 (5日)

 ベトナム人ラッパーのPjpoは6月3日、NFT(非代替性トークン)マーケットプレイスの「ダゴラ(Dagora)」と協力し、NFT形式で音楽アルバム「131km」をリリースした。  NFTでの音楽アルバム発売はベトナムで初め...

ダナン:ヘリコプター遊覧ツアーを3年ぶり再開 (5日)

 南中部地方ダナン市で2日、ヘリコプター遊覧ツアーが正式に再開された。  国防省ベトナムヘリコプター総公社(VNH)傘下の北部ヘリコプター(VNH North)が運航するもので、景観鑑賞と最新の航空技術体験を融合...

北部最大のテーマパーク「ビンワンダーズ・ブーイエン」が開業 (5日)

 地場系コングロマリット(複合企業)ビングループ[VIC](Vingroup)は1日、北部紅河デルタ地方ハイフォン市ブーイエン島(dao Vu Yen)に北部最大規模となるテーマパーク「ビンワンダーズ

8人兄弟の学者一族「グエン・ラン家」、故クオン氏を偲ぶ【後編】 (6/29)

 ベトナムを代表する考古学者・人類学者で、音楽家としても知られるグエン・ラン・クオン(Nguyen Lan Cuong)氏が2025年5月6日、ハノイ市のベトナム国家大学ハノイ校(ハノイ国家大学)医科薬科大学附属病院で死去...

小型EVタクシー「レッツゴー」、開業1年で500万人輸送 (4日)

 小型電気自動車(EV)タクシーに特化した「レッツゴー・タクシー(Let’s Go Taxi)」は、2024年5月にサービスを開始してから1年間で約500万人を輸送し、走行距離は1500万kmに達した。  レッツゴー・タク...

テトラパック、ホーチミンで食品用紙容器工場の第2期を落成 (4日)

 食品用紙容器の開発・製造を手掛けるスウェーデンのテトラパック(Tetra Pak)は3日、ホーチミン市ビンタン街区(phuong Vinh Tan)の第2ベトナム・シンガポールA工業団地(VSIP2-A)工業団地にある食品用・飲料用紙...

サングループ、ホーチミンで社会・都市交通インフラ整備を提案 (4日)

 観光不動産開発を手掛けるサングループ(Sun Group)はこのほど、ホーチミン市人民委員会に対して、社会インフラおよび都市交通インフラに関する複数の大型プロジェクトの投資を提案した。これらの案件は官民パー...

地場NCS、AI活用のサイバーセキュリティエコシステムを発表 (4日)

 ベトナム国家サイバーセキュリティテクノロジー(Vietnam National Cyber Security Technology Corporation=NCS)は2日、企業や組織のセキュリティ対策を強化するための人工知能(AI)を活用したサイバーセキュリ...

クアンニン省:年末まで毎週末に打ち上げ花火を実施 (4日)

 東北部地方クアンニン省人民委員会は、同省文化スポーツ観光局の提案を受け、2025年7月4日から2026年1月1日までの毎週末(金・土)に、打ち上げ花火を実施することを決定した。地元住民や観光客向けのイベントと...

FPT、AIエージェント教育プログラムを導入 インド企業と提携 (4日)

 ベトナムを代表するIT最大手FPT情報通信[FPT](FPT Corporation)は1日、インドの情報技術(IT)教育組織ジェットキング(Jetking)との間で、人工知能(AI)エージェント教育プログラムの

AI関連の地場スタートアップ「AI Hay」、1000万USD調達 (4日)

 人工知能(AI)を活用した検索プラットフォームを開発する地場スタートアップのAIハイ(AI Hay)はこのほど、東南アジアを中心にテクノロジー分野のスタートアップ企業に投資するアルゴー・キャピタル(Argor Capita...

6月のベトジョー記事アクセス数ランキング (4日)

 VIETJOベトナムニュースが6月に配信した記事のアクセス数ランキングをご紹介します。 1位:個人事業主への電子請求書義務化、店舗が敬遠で現金決済に逆戻り

6月のベトジョー記事10選:省・市再編の決議採択、国会閉幕など (4日)

 6月は、第15期(2021年~2026年任期)国会第9回会議が閉幕しました。今国会では、34本の法律を可決し、14本の決議を採択しました。  国会では、全国63省・市の行政区を大幅に削減して34省・市とする行政区再...

クアンガイ省:ズンクアット経済区で新都市区開発、投資方針承認 (4日)

 チャン・ホン・ハー副首相はこのほど、南中部地方クアンガイ省ズンクアット経済区内でのズンクアット東南新都市区北側・南側の2件の開発案件の投資方針を承認する決定に署名した。  ズンクアット東南新都市...

ベトナム航空、ダナン~大阪線を約5年ぶり運航再開 (4日)

 ベトナム航空[HVN](Vietnam Airlines)は3日、2020年以来約5年ぶりにダナン~大阪線(VN336/VN337)の運航を再開した。同路線は週4便の運航となる。  ベトナム航空は同

©VIETJO ベトナムニュース 2002-2025 All Rights Reserved