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「ベトちゃんドクちゃん」分離手術の知られざる裏側【前編】

2016/01/31 05:50 JST配信

 ベトナム戦争時に米軍が散布した枯葉剤の影響で結合双生児として生まれた「ベトちゃんドクちゃん」。2人の分離手術は1988年10月4日、日本赤十字社の医師の立ち会いの下、ホーチミン市ツーズー産婦人科病院で行われた。しかし、2人の子供を分離させるというベトナムでは前例のなかった手術の準備期間には、会議で激しい議論が起こり、外科チームではマネキン人形を用いたシミュレーションが行われた。

「ベトちゃんドクちゃん」の誕生と生命のリスク

 1981年2月25日、南中部高原地方コントゥム省サタイ郡で、奇形の双生児が誕生した。「ベトちゃんドクちゃん」こと、兄グエン・ベト(Nguyen Viet)さんと弟グエン・ドゥック(Nguyen Duc)さん(以下ドクさん)の2人だ。兄弟は、腹部と生殖器、肛門部分がつながっており、2本の脚と1本の短い脚しかついていなかった。2人はハノイ市のベトドク病院で治療を受けた後、1982年12月初めまでにホーチミン市のツーズー産婦人科病院へ移された。

 1986年半ば、ベトさんが急性脳症のため痙攣の発作を起こすようになり、やがて昏迷状態に陥って植物状態となってしまった。しかし、ベトさんとつながっているドクさんの意識は依然としてはっきりしていた。

 2人は日本赤十字社の支援により東京で治療を受けて、3か月後の同年10月29日に再びベトナムに戻った。ベトさんは回復したものの、治療で大脳皮質を損傷し、外の世界を感じるための知覚を失い、食べ物が喉につまったり、無呼吸状態に陥ったりして、何度となく夜中に緊急事態に見舞われた。ベトさんが突然死するかもしれないというリスクは、常にドクさんの生命をも脅かしていた。

 2人の命は「天秤」にかけられた。移動が制限されていた微妙な背景下のベトナムで、手術を行うか否か、行うならどの国で行うのか、そして医療レベルの問題だけでなく、時代的な素因も含めて難しい状況だった。

 当時ホーチミン市の医学界で「腕利きのキャプテン」と言われていた故ズオン・クアン・チュン医師の果敢な決断のもと、分離手術は初めてベトナムで行われることとなった。全ての医薬品、設備機器は日本が支援した。日本赤十字社の日本人医師らもツーズー産婦人科病院での歴史的手術に立ち会い、サポートを行った。

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