ベトナムニュース総合情報サイトVIETJO [ベトジョー]
 ようこそ ゲスト様 

「ベトちゃんドクちゃん」分離手術の知られざる裏側【前編】

2016/01/31 05:50 JST配信

前例のない手術に向けた準備

 当時ホーチミン市第2小児病院外科部長だったチャン・ドン・アー医師は、外科チーム長という重責を任され、手術の計画案と必要設備機器一覧を作成した。コンサルタント委員会、外科、麻酔、臨床、内科、心血管、器材、リハビリテーションなど、あらゆる分野から手術チームのメンバーが選出された。

 「私は1か月かけて手術チームのメンバーを選出しました。誰も双子の分離手術など経験したことがないにもかかわらず、皆が皆、参加を快諾してくれたのでとても驚きました」とアー医師は振り返った。手術チームのメンバーには、バン・タン氏、チャン・タイン・チャイ氏、ボー・バン・タイン氏、レ・キン氏、ブー・タム・ティン氏、グエン・バン・ヒエップ氏など、一流の医師が選出された。

 手術の計画案と双子の状態を説明する初回会議は、1988年6月14日に開かれた。それから2人が手術台に上がる日まで、最良の方法を模索して激しい議論のもと会議が重ねられた。総合力という言葉にするのは簡単だが、優れた集団が力になることも、協力して成果を出すことも簡単なことではなかった。

どちらかを助けるか、両方助けるか?手術方法を模索

 海外で行われた手術の類例6件の資料を参考にし、多くの疑問が呈された。ベトさんの脳性麻痺は呼吸、心血管、体温調節、ホルモン分泌と神経反射などの機能は維持していたが、状態は安定しておらず、常に危険な状態と隣り合わせだった。そのため、ドクさんを安全に助けるためベトさんを犠牲にするか、2人とも死亡してしまうかもしれないが2人とも助けるか、もしくはドクさんの生存を優先してベトさんにはできる限り手を尽くすことにするか、という多くの激しい議論が行われた。

 日本から持ち帰った2人の検査結果によると、腎臓が1つしか記されていなかったため、様々な事態を視野に入れなければならなかった。ツーズー産婦人科病院のレントゲン結果でも腎臓は1つしかなく、かなり下方に位置していた。2人が1つの腎臓を共有していた場合、2人とも助けることは冒険に近い。

次ページ → マネキン人形で手術のシミュレーション

【関連記事】

「ベトちゃんドクちゃん」分離手術に携わった医師、88歳で死去 (2025/06/03)
映画「ドクちゃん−フジとサクラにつなぐ愛−」、ベトナムで公開 (2025/02/22)
映画「ドクちゃん−フジとサクラにつなぐ愛−」、サントラ配信開始 (2024/06/25)
映画「ドクちゃん−フジとサクラにつなぐ愛−」日本初上映、ドクさんが舞台挨拶に登壇 (2024/04/12)
ドキュメンタリー映画「ドクちゃん−フジとサクラにつなぐ愛−」、5月3日公開 (2024/03/13)
「ドクちゃん」の人生をドキュメンタリー映画に、24年公開 (2023/10/16)
「ベトちゃんドクちゃん」分離手術チームのバン・タン教授、92歳で死去 (2023/09/06)
「ベトちゃんドクちゃん」のドクさん、日越交流と平和教育に意欲 コロナ禍とウクライナの戦火に思いも (2022/04/10)

前へ   1   2   3   次へ
[Le Phuong, VNExpress, 21/1/2016 | 12:03 GMT+7, A].  © Viet-jo.com 2002-2025 All Rights Reserved. 
※VIETJOベトナムニュースは上記の各ソースを参考に記事を編集・制作しています。 免責事項
新着ニュース一覧
11月施行の新規定、電子送金の報告義務など (6:38)

 11月に施行される新規定4本をまとめて紹介する。 1. 金融機関・外国銀行支店の格付け  金融機関・外国銀行支店の格付けに関するベトナム国家銀行(中央銀行)の通達第21号/2025/TT-NHNN(11月1日施行)によ...

サングループ傘下の航空会社、商業運航を開始 (6:27)

 観光不動産開発を手掛けるサングループ(Sun Group)傘下のサン・フーコック・エアウェイズ(Sun PhuQuoc Airways=SPA)は1日、商業運航を開始した。  乗客220人を乗せた初便の9G1203便は、午前7時15分にハノ...

ビンスピード、ハノイ~クアンニン間高速鉄道の建設提案 (5:57)

 地場系コングロマリット(複合企業)ビングループ[VIC](Vingroup)のファム・ニャット・ブオン会長が設立したインフラ投資会社であるビンスピード(VinSpeed)は、ハノイ市と東北部地方

IT学ぶ身長110cmの「小さな孤児」、大学卒業までの道のり (2日)

 混み合う大学の中庭で、身長110cmのグエン・ティ・フオンさん(女性・23歳)は、まるで小学生が足早に歩く大学生たちの中に迷い込んだかのように見える。  フオンさんは北部紅河デルタ地方ニンビン省旧キムソ...

有名女優を逮捕、社長務めた不動産会社で資産横領の疑い (5:14)

 ホーチミン市警察は10月31日、ベトナムの有名な女優でありプロデューサーでもあるチュオン・ゴック・アイン容疑者(女・49歳)を「信頼を悪用し資産を横領した容疑」で逮捕した。  被害を届け出たのはダット...

ベトジェットエア、ホーチミン~マニラ線を11月22日就航 (4:38)

 格安航空会社(LCC)最大手ベトジェットエア[VJC](Vietjet Air)は11月22日、ホーチミン市とフィリピンのマニラを結ぶ直行便を就航する。  ベトジェットエアがフィリピ

住友商事、子会社バンフォン・パワーの出資持分50%を2社に譲渡 (3:06)

 住友商事株式会社(東京都千代田区)は、同社100%子会社のバンフォン・パワー(Van Phong Power)の出資持分50%を第三者企業に譲渡することについて、すべての契約を締結し、ベトナム政府への申請を開始した。こ...

医療・介護用品レンタルの柴橋商会、ベトナム法人をハノイに設立 (2:59)

 医療関連のリース・レンタル・販売や介護用品の販売・レンタルなどを手掛ける株式会社柴橋商会(神奈川県横浜市)グループは、ベトナム法人「柴橋リエゾン・ベトナム(SHIBAHASHI LIAISON VIETNAM)」をハノイ市に...

ベトナムと米国、ベトナム戦争の被害克服に向けた協力強化で覚書 (3日)

 ベトナム国防省は10月31日、米国の戦争省(国防総省)および国務省との間で、ベトナム戦争の被害克服に向けた協力強化に関する覚書を締結した。これにより、5つの分野で協力を強化する。  協力を強化するのは...

新たな台風(カルマエギ)発生、ベトナム方面へ (3日)

 日本の気象庁が発表したデータによると、ベトナム現地時間1日19時にフィリピンの東で台風(アジア名:カルマエギ、日本では台風25号)が発生した。間もなくベトナムで台風13号になる見通しだ。  カルマエギは...

25年1~9月期のQRコード決済、前年同期比2.5倍に (3日)

 ベトナムでは2025年1~9月期にキャッシュレス決済の利用が大幅に拡大し、QRコード決済が急増した一方、現金自動預け払い機(ATM)での取引は引き続き減少した。デジタル決済への移行が一段と進んでいる。  ベ...

ベトナム航空、ホーチミン~新千歳間のチャーター便を26年3月運航 (3日)

 ベトナム航空[HVN](Vietnam Airlines)は、2026年3月5日(木)と3月8日(日)の2日間、ベトナムのホーチミン市タンソンニャット国際空港と北海道の新千歳空港を結ぶ直行チャーター便を運

グラブ、電動バイクのダットバイクと提携 ドライバーのEV転換支援 (3日)

 シンガポール系グラブ(Grab)の現地法人グラブベトナム(Grab Vietnam)と電動バイクの生産・販売を手掛ける地場スタートアップのダットバイク(Dat Bike)はこのほど、ドライバーの電動バイクへの転換支援に関する...

ビンファスト、若年層向けの新型電動バイク2車種を発売へ (3日)

 地場系コングロマリット(複合企業)ビングループ[VIC](Vingroup)傘下の電気自動車(EV)メーカーであるビンファスト(VinFast)は、都市部での短距離移動を想定した新型電動バイク「ZGoo

ビナフォン、1~6月期のベトナム5G速度で首位 米オークラ調査 (3日)

 インターネット接続の性能評価ウェブサイト「スピードテスト(Speedtest)」を運営する米オークラ(Ookla)はこのほど、2025年1~6月期のベトナム通信接続レポートを発表した。  レポートによると、ベトナム郵...

©VIETJO ベトナムニュース 2002-2025 All Rights Reserved